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釈迦楽

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May 19, 2018
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カテゴリ: わけ分からん
はーい、学会(初日)に参加して参りました〜。久々に大きな学会に参加したなあ、って感じ。このところ義母が亡くなったり(一昨年秋)、父の具合が悪かったり(昨年春)、会期中にアメリカに出張していたりして(昨年秋)、全国規模の学会に参加できなかったもので。

 ところで、今回、会場校となったのは東京女子大だったのですが、つまり普段は入れない女の園に潜入することになったわけね。で、普段は男性があまり居ないキャンパスなので、当然、男子トイレの数も少ないと。しかし全国規模の学会となると、そうも言っていられないので、女性用トイレのいくつかを男性用に割り当てる、というようなことをするんですな。だから会場でトイレを利用すると、男性用小便器がなくて、全部個室になる。

 というわけで、女性用トイレで用を足すという稀有な経験をしてきたわけですけれども、一つ感銘を受けたのは、今時の女子大ってどこもそうなのかも知れないけれども、トイレ、「音姫」付きなのね。

 ちょっと感動。

 ま、それはさておき、今日は「文学における贋作」のシンポジウムと、エマソン関係の研究発表を聴講してきたのですが、なかなか面白かったです。ただ、エマソンの研究発表は、ちょっと生硬な感じはしたかな。発表するなら、もっと面白くやらなきゃ。


 さて、ここでガラッっと話題を変えていい?

 久しぶりに学会での研究発表を聞いたせいで、頭の中がちょいアカデミックになっているもので、その方面のことでちょっと疑問に思っていることを一つ。

 今、勤務先大学の英語専攻の授業でヘミングウェイの短編を読んでおりまして、「インディアン・キャンプ」と「医師とその妻」を読み終わったところなんです。両方とも超有名な短編なんですが。

 で、専門の授業なので、作品を読むだけでなく、その作品についての研究論文なんかも読ませて、文学を研究するってこんな感じ〜、というのを示そう、なんて思っていたわけですよ。

 で、作品を二つ読み終わったものだから、そろそろ研究論文でも読ませたろうと思って、この二つの作品に関する日本人研究者の論文を探したのですが、これがね、意外にない。

 いや、ヘミングウェイの研究者ってのは日本には数多い(日本ヘミングウェイ協会という組織まである)はずなんですが、やはり最近の文学研究の趨勢というのか、個々の作品一つを選んで、それだけを論じるというような論じ方をする人がほとんどいないわけ。ある視点から複数の作品を論じる、みたいなのが多いので。

 一方、中には個々の作品を個別に論じて紀要なんかに書く研究者もいるのですが、そういうのを見ると、これがまた笑っちゃうくらいレベルが低い。もう、粗筋書いて、それにちょっと感想めいたものをくっつけて、それでおしまいというのばっかり。こんなの学生に読ませて、「なるほど、これが文学研究ですか」なんて思われたら困る、というようなシロモノばっかりなんですわ。

 で、これは困ったなと思いながら、「インディアン・キャンプ」についてのある論文(これは他のと比べるとまだマシな方)を読んでいて、ちょっとビックリしたことがありまして。

 その前に、そもそも「インディアン・キャンプ」ってどういう小説かと言いますと、インディアンの村で、ある女性が逆子による難産に苦しんでいて、これはどうしても帝王切開が必要ということになり、医師(白人)とその息子ニック、そして医師の弟(ニックからみるとおじさん)の3人がこの村にやってきて、手術をする。手術は無事成功するのですが、その手術の最中、妊婦の夫が自殺するんですな。だから、ニック少年は出産(生)と自殺(死)の両方を目の前で見ることになる。まあ、そういうドラマチックな小説なわけ。

 で、私が読んだその論文は、この小説の中では脇役に過ぎない「おじさん」に焦点を当てた論文だったのですが、その中にこう書いてあったんです。すなわち、「この小説で、生まれて来るインディアンの赤ん坊の本当の父親は医師の弟なのではないか、という説が Gerry Brenner という研究者によって唱えられ、何人かの研究者がそれを支持したが、後に Jeffrey Meyers という研究者が,この説には根拠がない、と主張し、筆者もその意見を支持する。しかし、それにしても何人かの研究者が「ニックのおじさん=インディアン女の愛人」説を支持した、ということは注目に値する、云々・・・」。

 ええ”ーーーーーーーーーーーーー!!!

 マジかよ・・・。ヘミングウェイ研究者たちの世界って、そんな風になっているの?? ビックリするわ。

 だってさ、ジェリー・ブレナーという研究者の言っていることが正しいに決まっているじゃん? それに対して「根拠がない」とケチをつけたジェフリー・マイヤーズが馬鹿なんじゃないの? 

 っていうか、私、ヘミングウェイ研究の動向にはまったく無知ですけれども、作品を読めばそうとしか読めないので、学生に対してもそういう説明しちゃったよ。ニックのおじさんがインディアン女の愛人なんだよ、って。

 根拠がないっていうけど、じゃあ、貧しいインディアンたちが白人であるニックの親父さんに手術を依頼できた理由はなんだよ。ニックの親父さんは、インディアンに頼まれたのではなく、弟に頼まれたに決まっているじゃん。ニックのおじさんはダメな奴で、インディアンの女に子ども産ませちゃったりするもんだから、アニキがその始末をしたに決まっているじゃんか。作中の兄と弟の会話だって、すべてそれを裏付けているし。それに、そうじゃなきゃ、そもそもインディアン女の夫が自殺する理由がない。

 その他、作中のありとあらゆる描写がそれをほのめかしているのに、「根拠がない」ってどういうことだよ!

 こんな明々白々なことを、ヘミングウェイ研究者は二手に分かれて議論しているの? しかも、正しい方の解釈が否定されているの??

 だったら、ヘミングウェイ研究者ってほとんど馬鹿なの? それとも、私が突出して天才なのか?

 わけわからん。 


 じゃあさ、じゃあさ。「医師とその妻」はどうなの?

 「医師とその妻」ってのはどういう話かと申しますと、湖畔にコテージを持っている医師(先の「インディアン・キャンプ」に出て来た医師と同一人物)が、湖岸に流れ着いた流木(実はある製材所の所有物なんだけど、どうせ誰も引き取らないだろうから、薪にして使っていいと医師は勝手に解釈している)を薪にするのに3人のインディアン、ディックとその息子のエディ、それにビリーを雇うわけ。

 だけど、ディックが医師に向かって「こりゃまた随分いい丸太を製材所から盗んだもんだね」などと嫌なことを言うもんだから、医師が怒って「この丸太が盗んだものだって言うのなら,お前ら、帰れ!」とか言い出してしまい、結局、インディアン3人は丸太を薪にする作業をしないまま、自分たちの村に帰ってしまう。

 で、怒りの収まらない医師がコテージに戻ると、奥さんから色々聞かれるんですな、「何かあったの?」って。そこで医師は「ディックの奴、俺が奴の奥さんの肺炎を治してやって、その治療費は丸太を薪にする労働で払うことになっていたのに、それをするのが嫌なもんだから、俺に喧嘩をふっかけて来た」と説明する。

 すると、医師の奥さんはその答えに納得せずに、そんな理由で喧嘩を吹っかける人なんているはずないでしょ、と夫の説明を論破するんですな。それでもう奥さんと話すのが嫌になった医師は、散歩に出かけてしまう。まあ、そんな話。  

 で、私が問題にしたいのは、この医師の説明は事実なのか否か、ということ。

 端的に言いますとね、私の解釈は「半分正しくて、半分ウソ」というもの。

 具体的に言うと、医師の説明にあった「妻の治療費を労働で払うことになっていた、云々」という部分は正しい。ただ、それはディックの話ではなく、ビリーの話であって,その点は医師が意図的に話を変えた、というのが私の解釈。だから医師の奥さんが夫の説明にウソを嗅ぎ付けるのは鋭いわけよ。

 医師と関わった3人のインディアンのうち、ディックとエディは医師に対してなんの引け目もないけれども、ビリーだけはある。その証拠に、ディックと医師が喧嘩を始めた時、ビリーだけが汗をかくんですわ。また医師のコテージを辞する際、ディックとエディはコテージの庭と森を仕切る柵を開けっ放しにして帰るのに、ビリーだけが後で戻って来てその柵を閉めるシーンがある。つまり、明らかにビリーには医師の機嫌を損ねたくない、何らかの理由があるんです。

 それは何か? もちろん、奥さんが肺炎になって、医師に助けてもらったばかりだからですよ! そんなの当たり前じゃん。

 だから、医師はビリーの話を、とっさにディックに置き換えて自分の奥さんに説明をし、そのウソを見抜かれたと。そういうことでしょ。

 で、私はそんなの当たり前と思っているのですが、ひょっとしてヘミングウェイ研究者の間ではそうなってなかったりするのかしら?

 「奥さんが肺炎になって医師に治してもらった、というのは、ディックの話ではなくビリーの話だ」という説を唱えた奴が居るが,根拠がないとして今は否定されている」とか、そんな風だったりして。

 まさか、そんなことはないだろうと思うのですが、「ニックのおじさん=愛人説」が否定されるようだと、こちらも怪しいな・・・。

 どうなの,その辺? もしヘミングウェイ研究者がこれを読んでいたら、返事して!


 ま、とにかく、研究者と言っても、色々なレベルがあるなと。久々の学会に参加しながら、そんなことを考えていた私なのであります。





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Last updated  May 19, 2018 10:59:34 PM
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