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November 4, 2018
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カテゴリ: 教授の読書日記
ペネロペ・ラシアノフという人が書いた『「なりたい自分」になれる本』(原題:When Am I Going to Be Happy, 1988)という本を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。

 ちなみにこの本、訳者は斉藤茂太さんなんですが、何故、著者を「P・ラシアノフ」にしたんですかね? 「ペネロペ」でいいし、その方が著者が女性であることが分かっていいと思うのですが。

 ま、それはともかく、本書は1980年代に数多く出た女性心理学者による「対人関係改善系」の自己啓発本でございます。

 で、本書冒頭、著者ラシアノフの若かりし頃のエピソードが出てくる。それによるとラシアノフは、14歳の時点で身長188センチ、体重45キロという、かなり特徴的な体型・・・つまりガリガリのノッポだったそうで、隠しようのないこの体型にものすごいコンプレックスを感じていたと。

 で、それが影響してずっと引っ込み思案の少女期を過ごすのですが、大学で心理学を学び、カウンセラーとなった後までもその影響は尾を引いていた。で、ある時、メンターの医者に、「君はヘッドライトを後ろ向きにつけたクルマで闇夜を走っているみたいだ。自分のことばかり気にしていないで、ヘッドライトを前に向けて走りなさい」とアドバイスされ、これを機に、コンプレックスから解放される。もちろん、コンプレックスが完全に無くなるわけではないけれど、それはそれとして、並外れて背の高い自分の容姿を受け入れる気構えが出来たというんですな。

 ま、そういう自分自身の体験があるからか、ラシアノフは、何らかのコンプレックスによってネガティヴになっている人に、その呪縛から逃れる方策を授けることに長けた心理学者になったと。

 で、その際のラシアノフの中心的な概念というのは、「ネガティヴさというのは、DNAに刷り込まれた何かではなく、単なる習慣であって、習慣である限りは必ず矯正できる」という信念でございます。こういう明確な信念ってのは、アメリカっぽいねえ。迷いがないよ。

 というわけで、本書はネガティヴ人間を救うための様々なノウハウ・・・それは文字通りのノウハウであって、難しい理屈ではなく、「こういう風にしなさい」という具体的な方策・・・を教えてくれる本なのでありまーす。

 例えば、誰かをテニスに誘ったけど、相手から色よい返事が返ってこなかったとする。

 こういう場合、ネガティヴな人はすぐに相手の行動をネガティヴに解釈する。「自分が相手を好きなほど、相手は私のことを好きではないから、色よい返事をくれないんだ」とかね。

 こういうネガティヴ思考に取り付かれている人に対し、ラシアノフは「一つの行動について、3つの解釈を考えて見なさい」というアドバイスをする。

 先ほどの例で言えば、確かにこの人がパッと解釈した通り、「自分が相手を好きなほど、相手は自分のことが好きではない」という可能性はある。

 だけど、その他にも解釈はあり得るわけですよ。「たまたまこの日、相手の体調が悪かった」というのもその一つ。さらに「別な用事が急に入った」というのだってあり得る。

 さらに、相手には相手の都合があって、自分の誘いを断る権利がある、ということも踏まえれば、一度誘いを断られたからって、それをすべて悪く(あるいは自分を責める方向で)解釈する必要などないことが分かるだろうと。

 ま、そんな感じ。

 怒りっぽい人に対するラシアノフのアドバイスは、怒り出す前に「自分は何を望んでいるのか」を考えろ、というもの。

 例えばオフィスで配置換えがあった時、今までの部屋より狭い部屋があてがわれた、なんて場合に、怒りっぽい人はすぐに怒り出す。「冗談じゃない、私はこの会社で十分成果を出しているのに、なんで格下げにならなきゃいけないんだ! 上司に断乎抗議してやる!」みたいな。

 だけどこういう人にラシアノフは、「・・・それであなたは、そういう行動をとることによって何を望んでいるんですか?」と問うわけ。

 するとその怒りっぽい人は「私は、他人から馬鹿にされたくないんです」と答えたと。

 それに対してラシアノフは「それは『何を望んでいるか』の答えになってない。『馬鹿にされたくない』というのは、『何を望んでないか』の答えでしかない。そうじゃなくて、あなたの望みはなんですか?」と重ねて問う、というのですな。

 で、相手が「出世です」と答えたのを聞いてラシアノフはこうアドバイスする。「上司に対して、ものすごい剣幕で、『冗談じゃない!』と猛抗議することが、『出世』というあなたの望みを叶える最良の道だと思いますか?」と。

 で、そうやって諭した上で、ラシアノフはわき起こる怒りへの対処法を伝授する。曰く、怒りがわき起こって来たら、深呼吸せよ。あるいは10を数えよ。あるいは、自分のクルマの中だけで怒りを思い切り爆発させ、すっきりしてから相手に向かえ、等々。

 あるいは、対人関係でつい相手を攻撃しがちな人に対しては、「You」を主語にした文で相手を攻めるのをやめて、「自分の立場ではどう思うか」ということを穏やかに相手に伝えろ、とアドバイスする。

 まあ、一般論として「You」を主語にした攻撃文ってのはキツいわけですよ。「あなたは、なんて自分勝手なの!」とかね。だけどそれを攻撃的に言ってしまったら、相手だって防御的に反撃してくるのであって、後は無意味な言い合いで終わってしまう。そんなことをするくらいだったら、まず「あなたは・・・」という言い方を止めようと。

 その代わり、「私の立場からすると」という言い方をする。「私の立場からすると、あなたにこうしてもらえると助かるんだけどなあ・・・」とか、「私がこういう行動を取ると、あなたの立場からするととても不都合かも知れない。だけど、私の立場からすると、どうしてもそうしたい理由があるのよ」とかね。そういう風に言えば、その先に話し合いの余地が出てくると。

 またいつも他人の言いなりになってしまう人へのアドバイスとしては、しっかりと自分を保持し、相手の言いなりにはならないということを、毅然とした態度や言葉できっちり表現することが重要だ、とか。

 ま、そんな感じで、こういう場合にはこう、こういうタイプの人だったらこう、という風に、ケース・バイ・ケース、あるいは性格別に、「こういう風にしなさい」というのを明確に教えてくれるわけ。

 で、私が思うに、ラシアノフが本書の中で提案している様々な対処法は、それぞれに有効だろうなと思います。実行可能な、良い提案だと思う。

 そういう意味では、先日、このブログで紹介した「ホ・オポノポノ」のように、ある特定の言葉を繰り返し唱えるだけで問題はすべて解決、みたいなのを信用できない人には、こちらのタイプの自己啓発本の方が合っているかなと。

 逆に、私のようにネガティヴさが欠片もない人にとっては、この本に書かれているアドバイスは、ほとんど使う必要がないものばかり、ということにもなる。まあ、そういう人は、そもそもこの本を買わないだろうけどね。

 いや、そうでもないか。私はネガティヴではないけれども、怒りっぽいところはあるからな。ラシアノフのアドバイスに従って、「いまここで怒りを爆発させて、それでお前の望むことが実現するのか?」と自分自身に問うことは必要かも。そして深呼吸して、10数えますか。

 というわけで、少なくとも何らかのコンプレックスやら、幼少期のトラウマとかがあって、ネガティヴなものを抱え込んでいる人にとっては、この本はかなりのお役立ち本でございます。その意味では教授のおすすめ!

 ただし、本書でいう「なりたい自分」というのは、「お金持ちになりたい」とか、「スターになりたい」とか、そういう意味での「なりたい自分」じゃないからね。そういう意味での「引き寄せ系自己啓発本」をこの本に期待しちゃダメよ。



【中古】「なりたい自分」になれる本 (知的生きかた文庫——わたしの時間シリーズ) P・ラシアノフ; 斎藤 茂太


 ところで、この本、最初に述べたように、訳者は精神科医の斉藤茂太(しげた)さん、つまり歌人の斉藤茂吉の息子であり、作家の北杜夫の兄貴ですけど、この本、本当にモタさんの訳かねえ・・・。そんな偉い人が、こういう本を自ら訳すのかなあ。勝手な想像だけど、誰か名も無い下っ端が下訳をして、そんなに出来が悪くなければ、そのままモタさんの訳ということにして世に出しているんじゃないの?

 というわけで、本当は誰の訳か分かりませんが、一つだけ、クルマ好きとして指摘したいのは、本書の96ページ、「オンボロクルマの六九年型カーマン・ガイアは、もうほとんど廃棄処分ものだ」という一節。「カーマン・ガイア」なんてクルマはありません。これはね、「カルマン・ギア」というの。少なくともドイツではそう呼ぶし、日本でも昔からそう呼びならわされている。モノの名称って,訳においては重要よ。モタさんだか誰だか、猛省しなさい。





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Last updated  November 4, 2018 03:00:10 PM
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