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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、辻堂ゆめさんの 『 いなくなった私へ 』いなくなった私へ (宝島社文庫) [ 辻堂ゆめ ]です。こちらの作品は、『 このミステリーがすごい! 』大賞の優秀賞を受賞しています。こちらの物語は、主人公の超有名歌手の上条梨乃は、ある時、目が覚めるとゴミ捨て場に寝ていて、それまでの記憶がない。待ちゆく人は自分が上条梨乃だという事を認識できず、困惑していると、自分が自殺したというニュースを目にする。というものです。まず、自分が自殺したらしいのにここにいる自分は誰なのか?自分は死んでいて幽霊なのか?生きているけど周りの人たちが気付かないのか?自殺したとしたらその理由は?と、謎が沢山詰め込まれています。その中で自分の事を認識してくれる人物が現れるので、生きていくことが出来るようになります。芸能事務所と大学生のバンドサークルの活動が主な生活空間なので、青春恋愛ものとしても読めます。この本では、作中作である別の物語も途中に挟まれるように収録されていて、その作中作と本編がどのように絡むのかも気になります。私はバンド経験があるので、ステージでの演奏シーンでは、情景が凄く良く分かりました。491ページもあり、文庫本で、凄い厚みのある本ですが、読み始めると先が気になり読み進める手が止まらなくなります。文体は読みやすく、登場人物は少なく、キャラクターも分かりやすいので誰のセリフ?というような迷子にならずに読めました。
July 18, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、小林泰三さんの 『 殺人鬼にまつわる備忘録 』殺人鬼にまつわる備忘録 (幻冬舎文庫) [ 小林泰三 ]です。こちらの物語は、主人公が目覚めると、枕元にノートが置いてあるのに気付き読んでみる。すると、そこには、『 自分は記憶が保てない。現在、殺人鬼と戦っている 』と書かれてあった。というものです。記憶障害になる直前の記憶までしか記憶が無いので、自分の状況が分からない。ノートに書いてある字は自分の筆跡であることからノートに書いてあることを信じるしかない。『 殺人鬼と戦っている 』ということを信じるなら殺人鬼に殺されないようにするために自分に記憶障害があるという症状を悟られてはいけない。そして、主人公と殺人鬼は出会うのであった。さらに、殺人鬼には『 人の記憶を改竄できる 』という特殊能力が備わっているというオマケつき。面倒くさくなったら殺す、というゲスな殺人鬼に記憶を保てない主人公がどうやって立ち向かうのか、先が気になって仕方がありません。記憶を失うたびに今の状況を把握しなければいけない主人公なので、小説にする時に同じことを繰り返してしまうのでは?という懸念も上手く書かれているので読めば解消されます。途中では、「 あ、そういうことね 」と納得させられる部分もあり、作者の上手さを味わえます。『 デスノート 』のようなスリリングな頭脳戦を楽しめるサスペンスミステリーになっています。
July 11, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、春畑行成さんの 『 僕が殺された未来 』僕が殺された未来 (宝島社文庫 このミス大賞) [ 春畑行成 ]です。こちらの本は、『 このミステリーがすごい! 』大賞 超隠し玉として刊行されました。こちらの物語は、思いを寄せる女性が失踪した。すると、60年後から来たという少女が現れる。その少女が言うには、「 あなたは殺される。誘拐された思い人も殺される 」自分が殺されるのを回避し、思い人を助けようとする主人公。というものです。60年後から来たという少女が登場し、タイムリープもののミステリーという私の大好きな物語だと思って購入しました。自分が殺されるのを防ぐ、というのが目的で未来の資料で、いつどこで殺されるのか分かっているので大人しくしていれば殺されずに済みます。しかし主人公は、思い人を救うため、奮闘します。タイムリープものなので、物語の完結部分でタイムパラドックスが生じそうですが、その辺はきちんと説明してくれていたので安心しました。この少女が誰なのか?犯人は誰なのか?物語はどこに着地するのか?と謎が多く、飽きずに読み進めることが出来ます。素人が調査をすると、こうなるのかなと思うほど、調査は思うように進まず、やきもきします。移動手段も自転車で、やきもきします。殺人が起こる前の話なので、主人公以外切羽詰まってはいませんが、恋愛模様も絡んで楽しめる物語です。
July 4, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、鴨崎暖炉さんの 『 密室黄金時代の殺人 』密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) [ 鴨崎 暖炉 ]です。こちらの本は、第二十回『 このミステリーがすごい! 』大賞 文庫グランプリを受賞しています。こちらの物語は、有名なミステリー作家が残した館で殺人事件が起こる。館に通じる唯一の橋が落とされ、クローズドサークルの中で殺人は続く。しかも、全て密室殺人だった。というものです。『 密室の不解証明 』は『 現場の不在証明 』と同じ意味がある。という特殊な世界での物語になります。密室の謎が見破られなければ、容疑者が絞られていても犯人として捕まえることが出来ないのです。なので、この世界の住人は「 人を殺したければ密室で殺せばいい 」と思っています。密室殺人が沢山出てきててんこ盛りです。謎解き部分では、図解付きで詳しく状況を説明してくれて密室を作る方法が分かりやすいです。最初、誰が探偵役なのか分からなく、そちらも考えながら進められたので謎が多く、飽きることなく読めました。密室の謎も2重、3重の密室だったり、ドミノを使った密室など良く考えついたな、と思わせられます。私は、クローズドサークルもののミステリーが大好きなので、この本は楽しめました。
June 27, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、森川智喜さんの 『 死者と言葉を交わすなかれ 』死者と言葉を交わすなかれ (講談社タイガ) [ 森川 智喜 ]です。こちらの本は、浮気調査中に対象者が死亡。車に仕掛けた盗聴器に録音されていた音声を聞いてみると、対象者は死者と話していた時に死亡したように思えてならない。真相究明に乗り出す探偵と助手。最後に明かされる謎とは?というものです。この本の紹介文や本の帯には、『 京大生がみんな騙された 』というようなどんでん返しが予想されることが書かれています。ミステリー好きの方は、読んでいる最中に何となく違和感を覚えて真相に気付いてしまうかもしれません。ただ、こういう内容のミステリーも読んでみて損はないと思います。私は、この手のトリックのミステリーを呼んだことがあり、新鮮味はあまりありませんでした。でも、トリック関係なく、物語のミステリーは続きますので、そちらも楽しめるのではないでしょうか。
June 20, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、なみあとさんの 『 占い師オリハシの嘘 』占い師オリハシの嘘 (講談社タイガ) [ なみあと ]です。こちらの物語は、人気占い師『 オリハシ 』が失踪。代役を任されたのは占いの力を持たない妹。相談者の悩みを占いで解決できない妹は、推理で解決することにする。というものです。主人公の姉である本物の『 オリハシ 』の大学時代の友人でオカルト雑誌の記者であるイケメン青年と一緒に姉不在の間を誤魔化し繋ぐ。イケメン青年の事が好きな妹の一途でちょっと迷惑な「好き好きアピール」がラブコメ感を出しています。占い師『 オリハシ 』のところに舞い込む依頼はオカルトチックなものが多く、一見、どのような現象なのか?と謎は深まりますが、そこは推理で謎を解く妹の力が発揮されます。依頼者ごとに謎が変わり、解決すれば次の依頼者へ、という流れなので、連作短編集のような形で読みやすいです。文体も読みやすいのでサッと読めてしまいます。私は大丈夫なのですが、ラノベのような感じなので苦手な方には辛いかもしれません。
May 23, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、阿津川辰海さんの 『 紅蓮館の殺人 』紅蓮館の殺人 (講談社タイガ) [ 阿津川 辰海 ]です。こちらの作品は、「2020本格ミステリ・ベスト10」国内ランキング 第3位「ミステリが読みたい! 2020年度版」国内篇 第5位「このミステリーがすごい! 2020年度版」国内編 第6位を獲得しています。こちらの物語は、山奥に引きこもっている文豪に会うために合宿を抜け出した男子高校生2人。その途中、山火事に遭遇し麓に引き返せなくなり仕方なく山を登り始める。ようやく着いた館でお世話になっていたが、翌朝、そこで仲良くなった娘が死んでいるのが発見された。というものです。山火事で退路を塞がれ、反対側の山の斜面は断崖絶壁。隔離された館の中で起こった娘の死は事故なのか殺人なのか?殺人ならば犯人は?山火事からの脱出は?というような私の好きなクローズドサークルものです。館を舞台にした『 館もの 』でもあります。推理の出来る探偵役が2人も出てきて、推理合戦を行うのも見所です。文庫本で448ページもあり、手に取るとかなりの厚さがあります。読み切ることを想定すると読む前に心が折れてしまいそうですが、読み始めてしまえば、続きが気になり長さが気になりません。『 館には仕掛けがあります 』との提示があり、どんな仕掛けがあるのか?というのも想像しながら読み進められます。色々な謎が出てきて最後に解明されていきますが、一つだけ気になったのが、『 偶然が行き過ぎていて現実味が薄い 』という点が、最後まで引っかかってしまいました。ただ、文体は読みやすく、謎が多く、引き込まれる作品でした。
May 2, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、皆藤黒助さんの 『 ことのはロジック 』ことのはロジック (講談社タイガ) [ 皆藤 黒助 ]です。こちらの物語は、元天才書道家の主人公は過去、言葉について調べ、心を動かされる言葉を見つけると書にしたためていた。ある時、限界を悟った主人公は書道から手を引き普通の高校生として生活していた。そんな時、金髪碧眼の転校生が現れた。一目惚れした主人公は彼女に告白したいが、彼女の理想の告白、夏目漱石が言った、I Love Youの日本語訳『 月が綺麗ですね 』を超える告白を受けたい、という願いを叶えるため苦悩する。というものです。言葉に纏わる謎を主人公と仲間たちが協力して解いていく学園ものの日常系ミステリーですが、登場人物は少なく、キャラも強いので登場人物迷子にはなりませんでした。主人公は挫折をしていますが、気分を悪くするような腐り方ではなく、友達たちとの絡みも青春物のような感じです。ヒロインの金髪碧眼少女のキャラも魅力的で、自分が告白するならどんな言葉を使うかを考えながら読み進めました。四編からなる連作短編集なので、一話が短く読みやすいです。文体も柔らかく、ラノベほど崩れていないです。最大の問題点、『 月が綺麗ですね 』を超える告白の解答にも納得できましたし、読後感もよく、とても面白かったです。
April 25, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、にかいどう青さんの 『 七日目は夏への扉 』七日目は夏への扉【電子書籍】[ にかいどう青 ]です。こちらの物語は、元彼が死んだ。妙にリアルな夢だなと思っていた主人公。それをきっかけに主人公の一週間が狂いだす。火曜日の次の日が月曜日。その次が水曜日。この状況を利用して元彼の死の真相を探ろうとする主人公の奮闘劇。です。一週間内でタイムリープするという設定は、私が大好きなSF小説高畑京一郎さんの『 タイム・リープ 』があります。『 タイム・リープ 』紹介した記事はこちらミステリー要素があること、一週間内で完結するということ、女性主人公がタイムリープすること、などが類似点ですかね。でも、内容は全然違うので大丈夫です。さらには、小説タイトルの『 夏への扉 』からロバート・A・ハインラインの『 夏への扉 』も連想されます。こちらについてはタイムリープということだけの影響のようです。主人公は快活で皮肉な言動が目立ちますが、元彼との会話ではニヤリとしてしまいました。主人公だけがタイムリープしているので、周りの登場人物との対比も楽しめます。( この人は知らない情報を主人公は知っているなど )ミステリーとタイムリープの融合は私の中では大好物の組み合わせでカツカレーのようなものです。主人公は魅力的で、文体も読みやすく、謎の真相に辿り着く道筋が気になり、あっという間に読んでしまいました。
April 18, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、岡崎琢磨さんの『 さよなら僕らのスツールハウス 』さよなら僕らのスツールハウス (角川文庫) [ 岡崎 琢磨 ]です。こちらの物語は、スツールハウスというシェアハウスの住人達に関わる謎や恋愛、人間模様を描くものです。年を経過し、住人が入れ替わったりしますが、各話に繋がりがあって、最後に伏線の回収が見られる連作短編集になっています。読みやすい文体と密室という謎解きもあり、全体を通して深い世界観を味わえます。
April 4, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、神宮寺いずみさんの 『 校舎五階の天才たち 』校舎五階の天才たち【電子書籍】[ 神宮司いずみ ]です。こちらの物語は、高校内にいる3人の天才の内の1人が電車に飛び込み自殺した。主人公はどこにでもいる普通の文学少女。次の日、自殺した天才から自分あてに手紙が届いていたのを発見。内容は、自分を殺した犯人を捜してくれ。というもので、さらに3人の天才の1人、人の心が読める女子と協力してくれ。ということも書かれており、天才と凡人のコンビで真相を探る。というものです。過去に読んだ他の本にも登場する天才。この天才の描写をどのようにするのか?というのが最初に抱いた期待でした。この本では3人の天才が登場し、どのような使い分けなのかも興味がありました。・その天才の内の1人が自殺する理由とは?・殺されたというのは本当か?・犯人は誰か?と謎は多く、読み進める手は止まりません。学園もののミステリーだと登場人物が多くなり、誰が誰なのか把握するのが大変なのが難点なのですが、こちらの本では、最初の登場人物紹介で紹介される9人(先生含む)だけで、物語は、ほぼ進んでいくので人物迷子にはなりませんでした。謎解き要素は少なく、青春友情物語のような面の方が強く感じましたが、物語自体は面白く読めました。
March 21, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、貴戸湊太さんの『 認知心理検察官の捜査ファイル 』認知心理検察官の捜査ファイル 検事執務室には噓発見器が住んでいる (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) [ 貴戸 湊太 ]です。こちらの物語は、新人検察事務官の朝比奈こころは、検察室に住んでいるという変わり者検察官大神祐介のもとに配属された。大神は心理学を駆使し容疑者の嘘を見破り、周りからは『 噓発見器 』と呼ばれている。そんな大神と容疑者の心理戦が始まる。というものです。変人 X 新人 という王道の組み合わせですが、検事が容疑者の嘘を見破ることに特化しているという点で、他とは区別されています。変人と言われていますが、他のミステリーに登場する変人探偵などに比べると意外に受け入れられる変人に入るかと思います。この本には4つの短編が収録されている連作短編集のような作りになっていますので、1話が短く、とても読みやすいです。新人検察事務官の目線で物語が進むので、変人検事の手腕に驚かされ、楽しませてもらえます。こちらの作品は実写ドラマ化も出来そうな内容なので、ドラマ化されたら観てみたいと思います。
March 14, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、森博嗣さんの 『 そして、二人だけになった 』そして二人だけになった Until Death Do Us Part (講談社文庫) [ 森 博嗣 ]です。こちらの物語は、巨大な橋脚の中にあるシェルターへ入ることになった6人。その中では一人ずつ殺されていき、最後には2人きりになる。相手が殺人犯なのか。真相は?というものです。本のタイトルからアガサ・クリスティーの『 そして誰もいなくなった 』を連想させられ、興味を惹かれ購読しました。巨大な橋の中のシェルターというクローズドサークル内での殺人事件なので、『 この中に犯人がいる 』という目線で読み進めていけます。ただ、最後に2人だけになると最終的な着地点はどうなるのか?という新たな謎に引っ張られ、最後まで読み進める手が止まりません。色々なレビューを読むと、結末に賛否両論あるようですが、読者自身が判断すればよいかと思います。私は、この『最後に二人きりになる』という設定に惹かれ、読んで面白く感じました。
February 28, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、本田壱成さんの 『 水曜日が消えた 』水曜日が消えた (講談社タイガ) [ 本田 壱成 ]です。こちらの物語は、1人の身体に7人の人格が共存していて、夜寝ると入れ替わるので、各人格が各曜日を担当することになる。主人公は火曜日を担当する、何の趣味もない、綺麗好きだけが特徴の冴えない男である。火曜日は、休みのお店が多く、図書館も休み。一度は入ってみたいと他の曜日を羨ましがる火曜日だったが、ある日、目覚めると、火曜日だと思っていたのが水曜日だった。というものです。SFチックな話ですが、現実問題として起こりえる設定で、非常に面白いことを考えついた作者さんだと感銘を受けました。殺人のような大事件が起こるわけではないのですが、火曜日が水曜日に生活できることの謎や主人公の過去に関する謎、主人公以外の登場人物たちが抱えているものなど物語に惹きつけられ、続きが気になり、あっという間に読んでしまいました。こちらの作品は実写映画化されています。私はこちらの映画をまだ観ていませんが、キャストは知っていたので、その人物像を想像しながら読めました。なので、物語に入り込むのが速く、楽しく読めました。実写映画も観てみたくなりました。
February 21, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、降田天さんの 『 朝と夕の犯罪 』朝と夕の犯罪 [ 降田 天 ]です。こちらの物語は、十年ぶりに再会したアサヒとユウヒの兄弟が、狂言誘拐を実行する。八年後、マンションの一室で、母親による置き去り衰弱死事件が発生。この母親が過去に誘拐事件の被害にあっていたことが分かる。というものです。この本は二部構成になっており、前半は、狂言誘拐を軸に兄弟の過去の生活模様を描き、後半は、置き去り衰弱死事件から 過去の狂言誘拐の真相解明が描かれます。こちらの作者さんの作品は何冊か読んだことがあるのですが、何かしらの仕掛けがあり、驚かされた経験が呼び起されます。そして、こちらの作品にも仕掛けがあります。本の帯に『 隠し通す。 この秘密だけは。 』と書かれているのですが、この秘密が何なのか?この謎を引っ張りながら物語は進みます。他にも謎は何個か出てきてすぐには明かされず、同時進行で進んでいき、終盤に、一気に伏線を回収していくスタイルです。こちらのミステリーは犯人が最初から分かっている倒叙ミステリーと呼ばれるものです。犯人視点で進む箇所は、追い詰められる感覚を味わえ、ドキドキしながら読み進められます。生活困難者や児童虐待、児童養護施設でのいじめなど重いテーマで書かれていて、特に、いじめの内容で気分が悪くなる表現もあり、読後感はあまりよくないです。ただ、情景描写が良く、自分がその場にいるような感覚を味わえ、物語の世界に没頭できました。
February 14, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、桐山徹也さんの 『 ループ・ループ・ループ 』ループ・ループ・ループ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) [ 桐山 徹也 ]です。こちらの物語は、同じ日を繰り返していると気付いた男子高校生は、ループものの主人公になっていると思い、原因を探るが見当たらず。主人公は別にいて、自分は巻き込まれたモブキャラだと確信する。その内、同じようにループに気付く仲間が増え、真相を究明していく。というものです。私はループものの物語が好きで、本の背表紙のあらすじを読んで、すぐに面白そうと思い購入。実際、面白く、続きが気になり、読み進む手が止まらくなりました。高校生が主人公なので高校生活が主体になりますが、登場人物は多くなく、読んでいる途中で、『 この人誰だっけ? 』ということは、ありませんでした。ループものだと、最初の一週目が物語の伏線を張るために説明が長くなりがちですが、この本は、最初が短く、すぐにループに入るので非常にテンポよくサクサク読めました。ループする条件は主人公の行動に左右されないので、いきなりループします。なので、主人公もループして驚いていますが、読者も急にループさせられるので驚かされます。この本で印象に残っているのは英語の教師で、文字だけのイメージだけですが、私は、俳優の小手伸也さんだと思って読んでいました。実写ドラマ化できそうな内容なので、実写化する際は、ぜひ、小手伸也さんでキャスティングしていただきたいと思います。ループするだけでなく、殺人事件も起きていますが、ミステリーとしての謎解き要素は無いのでSFミステリーを期待すると肩透かしをくってしまうかもしれません。ただ、起こる事件の犯人やループを引き起こしているのは誰か?という謎解きはありますので楽しめると思います。
February 7, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、講談社タイガミステリアンソロジーの 『 非日常の謎 』非日常の謎 ミステリアンソロジー (講談社タイガ) [ 芦沢 央 ]です。こちらの本は、日常の中に突如現れた非日常な謎に焦点を当てた6編からなる短編集になっています。・芦沢央さん・阿津川辰海さん・木元哉多さん・城平京さん・辻堂ゆめさん・凪良ゆうさんという有名作家さん6名の短編が読めます。どの作品も良かったのですが、私の好みは、城平京さんの『 これは運命ではない 』です。同じ相手と運命的な出会いを繰り返す相談者が、洞察力のある人物に相談するという設定です。少女漫画や昔の恋愛ドラマのような『 曲がり角で偶然ぶつかる 』とか『 本屋で同時に同じ本に手を伸ばす 』などこれは本当に偶然なのか?と疑うような出来事を推理します。本の表紙絵が秀逸で、『 パンをくわえながら走っている女子高生が 曲がり角で運命の人とぶつかる 』という場面が何度も繰り返されているという『 非日常 』を端的に表していて、興味を惹かれます。ただ、注意していただきたいのは、このような状況の話があるわけではありません。『 非日常 』を表現しているだけです。短編集なので、1話が短く、あっという間に読めてしまいます。各話の作者も違うので、毎回、新鮮な気持ちで読み進められます。
January 31, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、紙城鏡介さんの 『 僕が答える君の謎解き 』僕が答える君の謎解き 明神凛音は間違えない (星海社FICTIONS) [ 紙城 境介 ]です。こちらの本は、無意識の内に真相に辿り着く明神は、自分がした推理の過程を説明できない。弁護士を目指す伊呂波は、生徒相談室に引きこもる明神を教室に復帰させるために明神の推理を推理する。というものです。犯人はすぐに分かるのですが、どうしてその人物が犯人なのかの根拠は分かりません。読者は伊呂波と共に事件の真相へ至る過程を推理していきます。ラブコメとミステリーの融合というジャンルで、魅力的な登場キャラクターが多く、物語に引き込まれます。ライトノベルのような文体なので読みやすいです。事件が分かれているので、短編集のようにスラスラと読めます。
January 24, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、天沢夏月さんの 『 21グラムのタイムトラベラー 』21グラムのタイムトラベラー [ 天沢 夏月 ]です。こちらの物語は、小学四年生の主人公は登校前に女の幽霊に出会う。その女性は未来から来たと言いアイハラコトナと名乗り、「 今日転校してくる相原琴奈と仲良くしないで 」と言う。飼育係で一緒になった二人は次第に仲良くなる。中学、高校、大学と成長を続けるうちに二人の関係は変わっていく。というものです。この幽霊が相原琴奈本人なのか?なぜ幽霊なのか?どうして主人公に忠告しに来たのか?と、謎の多さで引き付けられます。それが無ければ、普通の青春恋愛小説として読むことが出来ます。『 君の名は。』や『 君の膵臓をたべたい 』が好きな人にはハマると思います。私はどちらも好きでこちらの作品も好きです。私は読みながら、自分だったらどんな結末にするかな?と想像しながら読み進めていくのですが、こちらの作品には裏切られました。いい意味で。読みやすい文体で、小学、中学、高校、大学と各章に分かれていて分かりやすいので、あっという間に読めてしまいました。
January 17, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、このミステリーがすごい!編集部 編の 『 5分でドキッとする意外な恋の物語 』5分でドキッとする! 意外な恋の物語 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) [ 『このミステリーがすごい!』編集部 ]です。こちらの本は、5分ほどで読める短編集で、恋愛ジャンルに絞って集められたものです。有名作家さんの短編が25編も収録されています。単純な恋愛短編ではなくて、タイトルにもある通り、ドキッとするストーリーになっています。中にはホラー的なものもありますので、純粋に恋愛短編集を求めている方には向いていないかもしれません。5分ほどで読めると謳っているので、各物語は非常に短く、すぐに読めてしまいます。25編もあるので、色々な作品がありますが、私は、喜多南さんの『一年後の夏』が一番好きでした。この話を読めただけでもこの本を買ってよかったと思いました。
January 10, 2023
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、木元哉多さんの 『 閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室 』閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室 (講談社タイガ) [ 木元 哉多 ]です。こちらの物語は、閻魔大王が不在時、死者を天国か地獄、どちらに送るか、娘の沙羅が代行する。閻魔堂と呼ばれる場所に連れてこられた人物は自分が殺されたことを知り、生き返りを願う。沙羅は暇つぶしの一環で、「真相を推理出来たら生き返らせてあげる」と約束する。というものです。こちらの本は、以前紹介した『 閻魔堂沙羅の推理奇譚 』の続編です。その時の記事はこちら前作も面白かったのですが、今回も面白かったです。事件ごとの短編集になっています。3つの事件が収録されています。この作品は全編を通じて、最初に状況を説明し、殺人が起こったところで場面は切り替わり、閻魔堂で殺された者が目を覚まします。そこにいる主人公の沙羅が魅力的で、小悪魔ぶりに引き込まれます。そこから生き返りを賭けて謎解きに挑戦します。10分で推理することと失敗すれば地獄行きという条件の中、論理的に謎解きは進みます。この設定と文体の読みやすさで、時間を忘れるくらい、あっという間に読めてしまいます。続編もたくさん出ているので、読破したくなる本です。
December 20, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、平居紀一さんの 『 甘美なる誘拐 』甘美なる誘拐 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) [ 平居 紀一 ]です。こちらの本は、「第19回このミステリーがすごい!大賞」の文庫グランプリを受賞しています。こちらの物語は、ヤクザの下っ端の2人組、真二と悠人は人使いの荒い上司にこき使われていた。ある日、他殺体を発見する。自動車部品を作る町工場を経営する父と娘は、立ち退きを迫るヤクザに嫌がらせを受け、非常に厳しい状況に追い込まれる。そんな中、宗教団体の教祖の孫娘が誘拐される。3つの物語がどのように結びつくのか?というものです。本のタイトルに『 誘拐 』と出ているので、誘拐の話が軸になってその周りの出来事を描いていくのかと思っていましたが、読み始まっても、なかなか誘拐が始まりません。ですが、なぜか物語には引き込まれ、飽きずに読み進めていけます。この本の紹介文には、『 衝撃の結末 』なんて書いてあるのでハードルが上がってしまいますが、それでもなぜか、読後感は良かったです。キャラクターがはっきりしていて、読んでいて、人物が動いている様子が想像できるような感じがしました。文体も読みやすく、おすすめです。
December 13, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、滝沢秀一さんの 『 かごめかごめ 』かごめかごめ (双葉文庫) [ 滝沢秀一 ]です。先週に引き続き、おすすめしないミステリーを紹介します。( 私の勝手な見解なので気にしないでください )こちらの作者の滝沢秀一さんとは、お笑いコンビ『 マシンガンズ 』の滝沢さんです。マシンガンズは2人組の漫才コンビですが、ネタは、世の中の不満に対し、厳しい口調で2人でツッコむ、という芸風です。私はこの芸風が好きでネタも楽しく拝見させていただきました。そんな滝沢さんの小説ということで楽しみに読んだのですが案外でした。こちらの物語は、ストーカーの男が、もう一人のストーカーに気付いた。ストーカーという、自分は安全な所から相手を支配する者が、逆に相手から知られていたと気付いた時、支配関係が逆転する恐怖を描く。というものです。作者のインタビューでも言っていましたが、こちらの作品はグロ要素が強いです。それはもう読むのが嫌になるほどです。それでも作者は「手加減した」そうです。出だしはホラー寄りのサスペンス色が強く、引き込まれて行ったのですが、途中に仕掛けがあり、その先からは展開がぶっ飛んでいて読み進めるのに我慢が必要になりました。折角、買った以上、最後まで読み切りたいと思い、頑張って読み切りましたが、なぜ、この物語が本として売り物になっているのか?出版前に誰かが止めなかったのか?と、疑問が湧いてきました。お金と時間に余裕のある方で怖いもの見たさのある、我慢強い、心の広い方が楽しめる本かと思います。
November 29, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、前田司郎さんの 『 異常探偵 』異常探偵 苺さん殺人事件【電子書籍】[ 前田司郎 ]です。普段はおすすめミステリーを紹介していますが、今回は、気分転換としてブログタイトルにある通り、おすすめしないミステリーを紹介します。( 私の勝手な見解のため、気にしないでください )こちらの物語は、異常な趣味を持った女性の死体が発見された。この女性と同じ趣味を持った女性は殺されたのだと信じ、探偵に調査を依頼した。調査に当たる探偵団には変わり者が揃っており、頭の中は子供の美青年や、宇宙人の存在を信じて疑わない主婦、社会に存在していない物として生活する名前もないAとB。容疑者は音もなく人の家に侵入できる通称『 空気ゴキブリ 』。果たして真相は?というものです。非常にぶっ飛んだ設定の物語ですが、最近は、こういう世界の中でも本格推理が成立するミステリーもたくさんあり、この本もそういった類のミステリーかと思って購入し読了しましたが、全然違いました。途中までは、ふざけて物語を進めるが、最後にはアッと驚かせる結末が待っているのでは?と期待してしまった分、え、これで終わり?という裏切られた感は絶大でした。なので、本格推理を望んでいる方にはおすすめできません。頭が子供の美青年が参加する会話では、話が嚙み合わず、イラっとします。こちらの作者の方は他の作品でたくさんの賞を受賞されていますが、この作品だけハズレだったのでしょうか?それとも他の作品も同じような作風で分かる人にはとても面白く感じるものなのでしょうか?私の感覚がズレているのか不安になります。お金と時間が有り余っている方にだけ楽しめる作品かも知れません。
November 22, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、玄武聡一郎さんの 『 天才月澪彩葉の精神病質学研究ノート 』天才月澪彩葉の精神病質学研究ノート (アルファポリス文庫) [ 玄武聡一郎 ]です。こちらの物語は、『 自分が理解できないサイコパスに会いたい 』と願うサイコパスの研究をしている女性大学生。サイコパスによる犯罪の捜査協力をしているが、通常のサイコパスによる殺人事件では飽き足らない。新入生の中にサイコパス研究にとって非常に興味が湧く学生がいることを知り協力を依頼する。その学生はサイコパスを見分けることが出来る共感覚を持っている。というものです。最近話題になっているサイコパス。1%から数%存在すると言われていて、日本人では150万人くらいはいるそうです。ただ、サイコパスというと・感情が欠如していて、・犯罪行為に罪悪感を覚えないとか、・恐怖感が無いとか、・猟奇殺人事件を起こすと言われていますが、実際には問題なく社会生活を送り、家族もいて会社でもよい役職に就いていたりするそうです。こちらの本では、サイコパスについての話もあり、サイコパスについて全く知らなくても大丈夫です。実写ドラマ化も出来そうな内容で、表紙のイラストを見ると元乃木坂46の白石麻衣さんをイメージしちゃいます。途中、セクシーな場面が出てくるのですが、そこは実写化出来ないだろうな、と勝手に残念に思います。タイトルで『 天才~ 』と謳っているのですが、その天才ぶりがちょっと弱かったような気がします。この本には続編があるようなので、そちらに期待でしょうか。文体も読みやすく、続きの気になる展開で非常に楽しめました。
November 15, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、阿部暁子さんの『 どこよりも遠い場所にいる君に 』どこよりも遠い場所にいる君へ (集英社オレンジ文庫) [ 阿部 暁子 ]です。こちらの物語は、ある秘密を抱えた主人公は、離島の高校に入学した。寮生活では3人のルームメイトと仲良く楽しい学園生活を送っていた。ある日、神隠しの入り江と呼ばれる場所に行くと水辺に少女が倒れていた。というものです。この少女の正体は?という謎を引っ張りながら、主人公の学校での人間関係や島の住人達との関わり合い、主人公の秘密について徐々に分かっていきます。本当は青春恋愛小説という括りになりそうですが、少女の秘密と後半の伏線の回収がミステリー要素があり、おすすめミステリーとして紹介します。本の帯で感動を呼ぶ!のようなハードルを上げる宣伝文句がありますが、読んでみての感想は感動しました。登場人物が少なく、人間関係を覚えるのも楽で、特に、登場人物の一人の島の住人がよいキャラクターでこういう人と知り合いになりたいなと純粋に思ってしまいました。
November 8, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、酒井田寛太郎さんの 『 放課後の嘘つきたち 』放課後の嘘つきたち (ハヤカワ文庫JA) [ 酒井田 寛太郎 ]です。こちらの本は、ボクシング部のエースの主人公が怪我で部活を休んでいる間、幼馴染の女子高生に誘われ、部活同士のトラブルを解決する部活連絡会を手伝うことになる。・演劇部のカンニング疑惑・陸上部の幽霊騒ぎ・映画研究会の作品改ざんなどの謎に挑む。というものです。私はこの本のタイトルから高校生たちが嘘を巧みに操り騙し合う、というようなコンゲームを想像していたのですが、全然違いました。高校生の日常の謎がメインで、3人の主人公たちにも秘密があるという裏の謎があり、各話の謎と並行して楽しめます。連作短編集のような感じなので読みやすく、登場人物も少なく、キャラもはっきりしているのでスラスラ読めます。
November 1, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、片里鴎さんの 『 異世界の名探偵2 』異世界の名探偵 2 帰らずの地下迷宮 (レジェンドノベルス) [ 片里 鴎 ]です。こちらの本は、以前紹介した『 異世界の名探偵 』の続編になります。その時の記事はこちら異世界に転生してしまった主人公が探偵として事件を解決します。今回は、ダンジョン内での殺人事件です。モンスターや魔法などファンタジーに欠かせない要素がある中での本格推理で、他にはあまりない設定です。こちらの物語は、『そのダンジョンに挑んだものは帰ってくることが出来ない』と言われている難解な場所に、大富豪がオーディションで集めた精鋭パーティーが挑む。順調に進んでいたかと思っていた矢先、殺人事件が起こる。犯人は誰だ?というものです。ダンジョンに挑むパーティーの話なので、登場人物も少なく、キャラクターも分かりやすく、読むのに苦労はしません。前作では魔法が多々出てきましたが、今作ではそれほど出てきません。モンスターも少なく、殺人事件の推理に集中できます。解答編の前には『読者への挑戦状』まであります。前作でこの作品を好きになり、続編を読みましたが、こちらの作品も前作に負けず劣らずの良作になっています。現在、出ていませんがさらに続編が出ることを望みます。
October 25, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、九頭竜正志さんの 『 さとり世代探偵のゆるやかな日常 』さとり世代探偵のゆるやかな日常(新潮文庫nex)【電子書籍】[ 九頭竜正志 ]です。こちらの本は、大学に進学したやりたいことのない主人公が自称イケメン探偵の幼馴染が作った探偵同好会に入り、身の回りで起こる日常の謎を解いたり解かなかったりする物語です。私はタイトルから人の死なない日常系のミステリーを想像して購入しました。最初は大学構内で起こる日常のゆるーいミステリーで良かったのですが、後半から絶海の孤島の殺人事件に発展し、複雑に絡み合う一族の利権争いなど意外とゆるくない展開になりました。ちょいちょい、あっと言わせる仕掛けがあり、良く言えば、遊び心のあるミステリーです。
October 18, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は宮ヶ瀬水さんの 『 推理小説のようにはいかない ミュージック・クルーズの殺人 』推理小説のようにはいかない ミュージック・クルーズの殺人 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) [ 宮ヶ瀬 水 ]です。こちらの物語は、大学生の音楽サークルに所属するピアノ担当の主人公とヴァイオリン担当の友達がボランティアで参加した音楽会への帰りの船の中で殺人事件が起こる。というものです。船の中の密室殺人ということで、二重の密室となります。しかも、海の上を移動中なのでクローズドサークルにもなっています。ピアノとヴァイオリン奏者が出てくるので、クラシックやオーケストラについての話が沢山出てくるのかと思っていたのですがそれ程でもなく、蘊蓄に辟易してしまうことはありません。事件を推理しようとする女子大生たちのキャラクターもよく、ちょっとした青春ものとしても楽しめます。登場人物も少なく、読みやすい文体なのであっという間に読めてしまいました。
October 11, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、旺季志ずかさんの 『 モテ薬 』モテ薬 [ 旺季 志ずか ]です。こちらの本は、美人研究者が発見した新物質『 メタル・シンデレラ 』。この物質を投与されたオスのマウスをメスがたくさん入っているケージに入れると、メスたちがこのオスを奪い合い、血塗れの戦いが始まったという。通称『 モテ薬 』と言われたこの新物質の論文には不正が見つかり、論文通りの方法で再現を試みた他の研究者からは「再現できない」と言われている。そんな中、美人研究者の後継人をしていた権威ある研究者が死亡するという事件が発生する。自殺か他殺か?本当に『 モテ薬 』はあるのか?というものです。過去に『 STAP細胞問題 』という事件がありました。割烹着姿の小保方さんという研究者らしからぬ風貌の女性研究者チームが発見したという『 STAP細胞 』。万能細胞という画期的な発見だったが論文には不正が見つかり、再現性もないという事態に。さらには、後見人の副センター長の自殺。こちらの本は上記事件を題材に『 STAP細胞 』を 『 メタル・シンデレラ 』、『 小保方さん 』 を 『 水澤鞠華 』に当てはめているように感じます。しかし、こちらはフィクションで、実際の事件とは違う進み方をします。この本はほとんどが、記者が取材した取材ノートのような体で、関係者がインタビューを受けている会話文になっています。色々な関係者からの証言で徐々に事実が分かってきますが、後半のどんでん返しには驚かされます。事実もこうだったら良かったのに、と思ってしまいました。こちらの本は、表紙の女性が非常に魅力的で、この本に登場する美人研究者の印象そのままです。読みやすく、内容も続きが気になって一気読み出来てしまいそうなくらい引き込まれました。
October 4, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、女性作家6名の 『 あなたの不幸は蜜の味 』あなたの不幸は蜜の味 イヤミス傑作選 (PHP文芸文庫) [ 宮部 みゆき ]です。こちらの本は、・宮部みゆき さん・辻村深月 さん・小池真理子 さん・沼田まほかる さん・乃南アサ さん・新津きよみ さんの6名によるイヤミス限定の短編集になっています。※イヤミスとは、『 読後、嫌な気分になる小説 』です。タイトルの『 あなたの不幸は蜜の味 』からも分かるように人の不幸を楽しむ本です。ただし、登場人物に感情移入してしまうと自分が不幸な思いをすることになってしまいます。一遍一遍が秀逸で、短編という短い中で嫌な思いを植え付けられる結末に驚かされます。各々の作家さんの過去の作品からこの本のために集められた短編なので、呼んだことのある作品が収録されている可能性があります。購入前には目次を読み、既読の作品かのチェックをした方が良さそうです。私は収録全作品未読でしたので、すごく楽しめました。
September 27, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は深木章子さんの 『 極上の罠をあなたに 』極上の罠をあなたに [ 深木 章子 ]です。こちらの物語は、ある地方都市に蔓延る悪人たちが人を騙し、自分だけが良い思いをしようと企みます。そこには、便利屋と呼ばれる人物が暗躍します。悪人たちに送られてきたダイレクトメールには、「 人には頼めないようなこと、引き受けます 」と、悪事に手を貸すような文言があり、便利屋を利用する悪人たちの運命は……。というものです。同じ町の中での出来事を別々の人物視点で描かれます。なので、連作短編集になっています。悪人たちが騙し合うという設定が気に入り読み始めましたが、そこに登場する『 便利屋 』と呼ばれる人物がよいキャラクターになっています。優秀で仕事を的確にこなす便利屋。その便利屋を利用する悪人たち。登場人物の人間関係が複雑に絡み合っているので、相関図を用意しながら読むと物語に入りやすいかと思われます。短編集なので各話が短く完結し、読みやすかったです。
September 20, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は石持浅海さんの 『 賛美せよ、と成功は言った 』賛美せよ、と成功は言った (祥伝社文庫) [ 石持浅海 ]です。こちらの物語は、女子高時代の親友の小春と優佳は予備校時代の同級生が受賞したお祝いパーティーで15年振りの再会をした。そのパーティーの最中、同級生の一人が恩師をワインボトルで撲殺。優佳はその殺人事件には裏で操る黒幕の存在があることを疑う。真相を突き止めたい優佳と黒幕の心理戦が始まる。というものです。ミステリーというと犯人捜しと思われますが、こちらの本は探偵役が犯人ではなく、黒幕という犯行の実証が難しい相手に挑みます。しかも、周りに何も知らないメンバーがいる中での心理戦です。語り部の主人公だけ探偵と黒幕のやり取りが分かっています。読者はこの語り部目線で読み進めていくので展開が気になり先が気になって仕方がありません。こちらの作品は、碓氷優佳シリーズの5作品目になります。過去の作品での出来事を話したりしますが、この本から読んでも問題ありません。私は石持浅海さんの作品が好きなので、過去の作品を知ったうえで読んだので、より深く物語に入って行けました。文庫本で246ページとそれ程長くない作品なので、サッと読めてしまいます。犯人探しではないミステリーですが、おすすめです。
September 13, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、ひずき優さんの 『 小説 不能犯 堕ちる女 』です。こちらの本は、漫画『 不能犯 』の小説版スピンオフ作品です。『 不能犯 』とは、犯行を画策しても実現不可能ならば罪に問われない。そんな犯罪を犯す者に対して呼ばれる。この犯罪者は、思い込みや幻覚を利用して人を死に追いやっている。こちらの物語は、デリヘルに勤めている夏美は、OLと偽り参加した婚活パーティーで知り合ったエリートサラリーマンと婚約した。しかし、婚約者の後輩がデリヘル時代の夏美の事を知っていて強請ってくるようになった。そこで夏美は自分を苦しめる存在の排除を電話ボックスの殺し屋に依頼する。というものです。この作品は、スピンオフ第二弾で私は第一弾を読んで面白く感じ、こちらの本も読んでみました。その時の記事はこちら実は、私は『 不能犯 』の漫画を読んだことがありません。それでも物語に入って行けますし、とても面白く読めました。原作を知っている人にはさらに面白く感じられるでしょうし、原作を知らない人にも読みやすい本です。
August 30, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、紺野天龍さんの 『 シンデレラ城の殺人 』シンデレラ城の殺人 [ 紺野 天龍 ]です。こちらの物語は、皆さんご存じの『 シンデレラ 』がモチーフになっています。継母と2人の姉にイジメられているシンデレラ。突如現れた魔法使いによってお城で開かれる舞踏会に参加できるようになる。魔法で着飾ったシンデレラは王子様に見初められ、王子様の私室に招かれる。しばらく待っていても戻ってこない王子様が気になり、私室の中に探しに行くと、そこには死体が転がっていた。その時、警備の兵が踏み込んできてシンデレラは現行犯逮捕されることに……。シンデレラは裁判にかけられ、自分の無実を証明するために真犯人を推理する。凶器がガラスの靴だったり、魔法が解ける12時までに真犯人を見つけなくてはいけないなど『 シンデレラ 』の要素を盛り込んだミステリーになっています。シンデレラは、王子殺害の特別裁判で審議にかけられる被告人なので、物語の大半は裁判でのものです。逆転裁判のような感じです。シンデレラが屁理屈の達人という設定なので、中々の言い逃れをしますが、こういうキャラクターも面白かったです。飄々としたキャラクターなので、死刑になる直前でも緊張感が無いです。文体はライトノベルのような感じなので、読みやすいです。私はシンデレラの物語が好きなので、先が気になり、あっという間に読めてしまいました。
August 23, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、萩原麻里さんの 『 呪殺島の殺人 』呪殺島の殺人 (新潮文庫nex(ネックス)) [ 萩原 麻里 ]です。こちらの物語は、秋津真白は目の前に叔母の死体がある密室内で目を覚ました。手にナイフを持っているが記憶がない。秋津真白は自分が殺したのか分からない。というものです。舞台は嵐の孤島。孤島内には、住民の住む地区と人間嫌いの女主人の住む屋敷がある地区が一本の橋で分けられていた。私の大好きなクローズドサークルものです。『 この中に犯人がいる! 』というやつです。登場人物も売れっ子女性作家が殺され、編集者、フリーライター、顧問弁護士、遠縁の三姉弟、民俗学オタク、記憶喪失の大学生。と、一癖ありそうな人物たちです。題名から横溝正史さんのようなおどろおどろしい文体を想像していたのですが、読んでみるとライトノベルのような軽いタッチで書かれています。殺人事件の容疑者になっている人物が記憶喪失とはいえ、あまりに呑気だったりします。キャラクターが豊富で飽きさせませんでした。文体も読みやすかったです。ただ、本格推理を期待している方にはお勧めできないかもしれません。
August 16, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、佐藤青南さんの 『 お電話かわりました名探偵です 』お電話かわりました名探偵です (角川文庫) [ 佐藤 青南 ]です。こちらの物語は、警察への通報が最初に届く、通信指令室の電話受付係での話です。「家が盗まれた」というような不思議な通報が来ると脇から通話を奪う女性通信士。千里眼より凄い、通称『 万里眼 』が電話での会話から謎を解いてしまう。というものです。こちらは連作短編集になっています。事件の現場に赴いて捜査をするわけではなく、電話で会話しながら謎を解くという安楽椅子探偵ものです。ドラマの『 ボイス 』に似ています。ドラマの『 ボイス 』のホームページはこちらドラマの『 ボイス 』も、通信指令室の通信士の話なのですが、ドラマの方は、通信士の耳が凄く良く、電話越しの微かな音を聞き分け、捜査に役立てる、というものでした。ドラマは非常にシリアスで行きもつかせぬスリリングな展開で楽しませていただきましたが、こちらの本は、主人公が少しポンコツだったり、恋愛模様が絡んだりと事件が起こっている警察の話なのですが、どこか、のんびりとしています。文体も読みやすく、短編集なので1話が短く、スラスラと読めてしまいます。
August 9, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、瀬川コウさんの 『 今夜、君に殺されたとしても 』今夜、君に殺されたとしても (講談社タイガ) [ 瀬川 コウ ]です。こちらの物語は、4人目の被害者が出た連続殺人事件の容疑者が自分の双子の妹かもしれない。というものです。連続殺人の他にも猟奇的事件が勃発し、本当に妹が殺人犯なのか?それとも真犯人がいるのか?謎が解けていくにつれ、驚かされる展開が待っています。学園ものですが、登場人物が少なく非常に分かりやすい物語でした。妹の存在が何とも言えず、謎を引っ張られ続けます。文章は読みやすく、事件がいくつか分かれているので短編集のようにスラスラと読めました。
August 2, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、星火燎原さんの 『 死にたがりな少女の自殺を邪魔して、 遊びにつれていく話。 』死にたがりな少女の自殺を邪魔して、遊びにつれていく話。 (宝島社文庫) [ 星火 燎原 ]です。こちらの本は、『 第8回ネット小説大賞 』を受賞しています。こちらの物語は、死神と取引して、寿命を3年にする代わりに、24時間巻き戻せる時計を手に入れた自殺願望のある主人公。自分と同じところで自殺した少女のニュースを見て、この少女の自殺を食い止めようと奔走する。というものです。自殺を扱っている作品ですが、重苦しい雰囲気はありません。時間を戻せるというタイムリープものです。恋愛小説というジャンルですが、死神の登場と少女の自殺は止まるのか、最終的にどこに着地するのか、という謎があり、おすすめミステリーとして紹介します。私はタイムリープものが大好きなので、こちらの本は非常に楽しめました。文体も柔らかく、先も気になり、読みやすかったです。すぐに読み終わってしまいました。
July 26, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、古宮九時さんの 『 死を見る僕と明日死ぬ君の事件録 』死を見る僕と、明日死ぬ君の事件録(1) (メディアワークス文庫) [ 古宮 九時 ]です。こちらの物語は、平凡な主人公の神長君は人の死の予兆が視える。そんな神長君が死の予兆がある女子大生の死を回避しようと近付いた。普通ならおかしなことを言っていると相手にされないのにその女子大生の鈴さんは真剣に話を聞いてくれて、さらには、他の人の死の予兆を回避しよう!と言って行動を共にするようになる。というものです。こういう特殊設定物にはルールがあって、こちらの物語のルールは、・死ぬ運命の人は、死の瞬間の行動を何度も繰り返している。・幻影が濃くなるほど死の瞬間は近い。・死の運命からは逃れられない。です。表紙の装丁が綺麗で、タイトルがミステリーっぽいので衝動買いした本でしたが、文体は読みやすく、先が気になって読み進める手が止まりませんでした。
July 19, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、鳥飼否宇さんの 『 逆説的-十三人の申し分なき重罪人 』です。こちらの物語は、色々な犯罪が起こる綾鹿市で、捜査に当たる五龍神田刑事とホームレスのじっとくが事件を解決していく。というものです。13篇からなる連作短編集なので、1冊で13もの短編を楽しめます。殺人事件などの犯罪が出てきますが、主人公の五龍神田刑事がどこか抜けていて、シリアスな印象は受けず、むしろ、ゆるい感じのミステリーに感じました。短編集なので1話が短く、文体も読みやすいです。
July 12, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、晋籐歌六さんの 『 どこか奇妙な恋物語 』どこか奇妙な恋物語 (宝島社文庫) [ 晋藤 歌六 ]です。こちらの本は、『 読書メーター 読みたい本ランキング文庫部門月間第一位 2020/1/18~2/17 』を獲得しています。こちらの物語は、8編からなる連作短編集です。「 私のどこが好き 」のような恋愛においてよく聞くセリフから始まる恋物語です。しかし、本のタイトルにもある通り『 どこか奇妙 』です。この本は、謎解きがあるわけではありませんが、どのように話が進むのか分からず、読み進めていくとそういうことだったのか!と謎が解けるような感覚を味わえるのでおすすめミステリーとして紹介させていただきます。短編集なので、1話が短く、読みやすいです。文体も柔らかく、スラスラと読み進めることが出来ます。
July 5, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、湊かなえさんの 『 サファイア 』サファイア [ 湊かなえ ]です。こちらの本は、7編からなる短編集です。物語は繋がっていませんが、宝石に纏わる物語になっています。放火や殺人事件、特殊詐欺など犯罪が絡んできます。しかし、なぜか読後感が良いものが多いです。中にはゾッとするような話もあり、色々な短編を楽しむことができます。表紙に女性の裸がプリントされているので通勤通学の電車の中などではカバーが無ければ読みにくいかもしれません。私は仕事の休憩時間に一人で読んでいたので誰の目も気にすることなく読むことが出来ました。湊さんの文体は読みやすく、物語にもすぐに入って行けるのであっというまに読めてしまいました。
June 28, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は石持浅海さんの 『 扇動者 』です。こちらの物語は、人を殺さず、なるべく傷つけず、それでいて、テロ組織の存在を匂わせず、日本国民に現政府への不信感を募らせ、ゆくゆくは新政府を立ち上げ、理想の国家を築くことを目的としたテロ組織の話です。そのテロ組織の兵器製造部門の活動中に仲間の一人が殺された。というものです。今回の舞台となるテロ組織の施設はセキュリティーがしっかりしていて、メンバーしか入ることができない。ということは、犯人はこの中にいる。というクローズドサークルものです。実際はその施設から外出しても構わないのだが、テロ兵器の製造の期限が迫るため閉じ込められる、ちょっと変わったクローズドサークルです。警察が調べれば、すぐに犯人特定できそうな簡単な事件でも、テロ組織ということで殺人事件が起きても警察に通報できない。自分たちで犯人を捜すしかないという特殊設定です。テロ組織の話ですが、普段は一般市民として安定した生活を送っている普通の人が、週末限定でテロ活動をしている、というユーモアもあります。政府転覆を狙うテロ兵器もこんなもので?というような物を真剣に製造しています。最初に事件が起こるまで少し時間が掛かりますが、テロ組織について理解が進むので動機の面など後々意味を持ってくるかと思います。私は石持さんの作品が大好きなのでこの作品も読みやすかったですし、設定の特殊さも楽しませていただきました。
June 21, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、阿川大樹さんの 『 終電の神様 』終電の神様 (実業之日本社文庫) [ 阿川大樹 ]です。こちらの作品は第9回 エキナカ書店大賞 第1位を獲得しています。こちらの作品は7編からなる短編集です。それぞれが電車に纏わる話です。背表紙に書かれているのがヒューマンミステリーということで謎が散りばめられていますが、殺人事件が起こるようなことはなく、推理を楽しむというよりは人間模様を楽しむような物語です。私は電車に乗ることが少なく、満員電車や終電の雰囲気というものを実感したことはないのですが、この本を読むとなぜか電車に乗った気分になれました。人身事故で停車した電車に取り残された人に感情移入してしまいました。私としては、各短編が実は繋がっていて、緊急停止した同じ電車に乗り合わせた人たちの各々の物語があった、というような連作短編集となっていた方が好みだったかと思います。
June 14, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、北山猛邦さんの 『 先生、大事なものが盗まれました 』先生、大事なものが盗まれました【電子書籍】[ 北山猛邦 ]です。こちらの物語は、三角の形をした凪島。その各頂点の位置にある3つの高校は『灯台守』『探偵』『怪盗』という特徴があった。主人公の女子高生が通う『灯台守』高校は、不思議な力を持つ灯台の灯を生徒に受け渡す。その灯は、怪盗が盗んだものがあると灯の燃焼が盛んになるという力があった。ある日、凪島ではどんなものでも盗むことのできる怪盗フェレスが犯行後にカードを残した。主人公は探偵高校と怪盗高校に通う幼馴染と共に事件の解決にあたる。というものです。こちらの作品の特徴は、『 何が盗まれたのか? 』を推理するミステリーです。ミステリーというと、『誰が犯人か?』という『フーダニット』、『どうやって犯行を行ったか?』という『ハウダニット』、『なぜ犯行を行ったか?』という『ホワイダニット』があります。従来のミステリーの常識外の『ホワットダニット』という新ジャンルになります。ライトノベルのような軽い語り口で重厚な人間模様や難解なトリックなどは出てこないのでサラッと頭脳に優しく読めます。今までのミステリーに飽きてきて何か変わったミステリーを読みたいと思っている人には特におすすめです。
June 7, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、斜線堂有紀さんの 『 楽園とは探偵の不在なり 』楽園とは探偵の不在なり [ 斜線堂 有紀 ]です。こちらの物語は、『 2人以上殺した者は天使によって地獄に引きずり込まれる 』という世界で起こる連続殺人事件。というものです。2人以上殺したら地獄に落ちるので連続殺人が起こるのは考えにくいのですが、それでも起こる連続殺人事件の解決に挑む探偵が出てきます。この連続殺人事件の舞台は、天使の存在を敬愛している富豪が所有する島に友人を招待し『 天国に纏わる催し 』を行う。孤島の中の館で起こる連続殺人事件。というクローズドサークルものです。その上、『 2人以上殺すと地獄に落ちる 』という縛り付き。私の好きな設定で面白そうな付属がついているので楽しみに読みました。天使というと『 フワフワの羽がついていて裸に近いような恰好をした可愛らしいもの 』というようなイメージがありましたが、この物語に出てくる天使は可愛くありません。寧ろ、気持ち悪いくらいです。孤島での話なので登場人物も少なく読みやすかったです。
May 31, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する本は、甲斐田紫乃さんの 『 塩見崎理人の謎解き定理 』塩見崎理人の謎解き定理 丸い三角について考える仕事をしています (宝島社文庫) [ 甲斐田紫乃 ]です。こちらの物語は、大学に通う主人公の女子大生は、友人のレポートが未提出扱いになっていることを確認するため、担当准教授の部屋を訪ねる。そこにいたのは、「 問題の誤謬を正せば、問題は問題でなくなる 」という変人哲学者だった。というものです。大学で起こる日常に謎を変人大学准教授がヒントを出し、女子大生が推理する、人の死なないミステリーです。私は、この本を読むにあたり、哲学を題材にしているということなので、小難しい内容なのかと身構えましたが、そんなことはなく、登場する謎が哲学の思考実験に似ているからその思考実験の内容を準教授が教えてくれる、程度の哲学講座のような感じです。女子大生目線で進むので語り口はライトで、謎も・提出したはずのレポートが未提出になっている。・芸を覚えた猫が芸を間違える。・卒業した先輩が残した暗号。・喧嘩別れした親友との確執。という日常にあるちょっとしたものです。変人准教授や助手、主人公の友達のキャラクターが良く、文体も難しくないのでスラスラと読めました。ドラマ化できそうな感じなので、その時が来るのを楽しみにしています。
May 24, 2022
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こんにちは!ラスカルスズカです。今日、紹介する曲は、木元哉多さんの 『 閻魔堂沙羅の推理奇譚 』閻魔堂沙羅の推理奇譚【電子書籍】[ 木元哉多 ]です。 こちらの作品は第55回メフィスト賞受賞作です。こちらの物語は、死んだ先にいたのは閻魔大王の娘と名乗る少女。現世に未練を残した者にゲームを持ちかける。「10分以内に自分を殺した犯人を推理しろ」見事犯人を見つけたら生き返れる。もし見つけられなければ地獄行き。というものです。推理するのは殺された被害者なので、変質的な名探偵や鋭い観察眼を持った刑事などは出てきません。殺される前までの状況は知らされていて、そこまでの情報だけで犯人を推理することは出来る。それを推理の素人が頑張るという今までにないミステリーがメフィスト賞受賞の要因でしょうか。閻魔大王の娘の沙羅のキャラクターが良く魅力的です。事件ごとの短編になっているのでサクッと読めます。こちらの作品はドラマ化されています。
May 17, 2022
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