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2025.04.27
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カテゴリ: 音楽
先日このブログで紹介した「 揺らぐ日本のクラシック 」という著作、別の本を読んでいるうちに気になり始めた部分があって、この週末に読み返していました。「興行としての長い道のり」と題された第3章の冒頭見出しにある表題の問いかけです。

この問いを亭主なりに言い換えれば、「 演歌歌手=芸人 」、「 オペラ歌手=芸術家 」と言えるのか?

これに対する答えを考えるためには、まず「芸人」と「芸術家」それぞれの言葉の定義(中身)を明確にする必要がありますが、そもそもそこからして曖昧です。本書では、この見出しに続く文章の中で「芸を金に変えることなく、ただ芸術に生きることだけを目指すのが崇高な見識ではないか、いや芸術も資本主義の中で成り立ってこそ存在価値があるのではないかという本書の根源的な問いかけ」とあり、どうやらこれが見出しの問いの意図することらしい。

ちなみに、この言葉は先行する第2章で紹介された幸田延(明治期に米国やウィーンに留学して西洋クラシック音楽を身に付け、帰国後「音楽取調掛」で音楽教育に携わる)についての文章中に出てくるもの。延はその当時演奏料をもらって公演することを一切断っていたそうで、音楽学校以外での演奏会に出演することは芸術家としてあるまじき姿だと言っていたようです。ところが彼女はその後、いろいろあって再度ヨーロッパに渡り、そこで音楽が興行ビジネスとして興隆していることを目にしたことで考え方を大きく転換させたのではないか、というのが著者の見方です。

つまり、芸人と芸術家の違いは金銭的な対価の有無ではなく、演奏する音楽がもっぱら「娯楽」を目的とした「演歌」か、オペラや器楽曲といった「真面目な音楽」であるかの違いにある、というわけです。そして、この真面目な音楽=芸術という価値観を生んだのが19世紀ドイツの音楽美学だったわけでした。

これは、演歌歌手、オペラ歌手いずれも履歴書の職業欄で自分の職業名を書くとすれば「歌手」でしかないことからも想像できます。(ちなみに、楽器の演奏家であれば「楽師」とでもなるでしょう。ロックバンドのギタリストもN響のヴァイオリニストも楽師です。)彼・彼女がどのようなジャンルの音楽で稼いでいるかは、職業という観点(別の言い方をすれば興行という観点)から見れば些細な違いに過ぎないとも言えます。

クラシック音楽が(一部大衆の憧れとしての)高尚な芸術として特別扱いされていた19世紀半ば〜20世紀までは、そのような音楽の演奏家も「芸術家」として自他共に認められていたわけです。

が、そういう時代はすでに過ぎ去りつつある、と言えるでしょう。実際、多くのステージ演奏家はクラシック音楽という枠組みに囚われることなく、ジャンル横断的にさまざまな音楽を取り上げるようになっています。 興行ビジネスで生きていくということは、とりもなおさず芸人として生きていくということ です。

言い換えると、初期の幸田延のように「芸術=金銭的対価と無縁で純粋に精神的な活動」という19世紀的な芸術観に殉じたければ、クラシック音楽=文化遺産の一つとして公的な支援に依存する必要があることも明らか。つまり、政府・自治体の「公共政策」の項目として認められる必要がある、というわけです。が、これでは現在の規模のクラシック音楽活動を支えるのは無理で、早晩常磐津・清元と同じような立場で生き残ることにならざるを得ないということになります。

ちなみに、冒頭のお題を試しにグーグル検索にかけたところ、Yahoo知恵袋に掲載されたベストアンサーというものがヒットしました。その内容をかいつまんで言うと、答えは「芸人」で、その理由は「芸術家は無から有を生み出す人のことで、演奏家は他人が作った音楽を自分風に味付けしているだけだから芸術家ではない」、「ラフマニノフを弾ける方はいくらでもいるが、ラフマニノフの音楽を書ける人間はラフマニノフしかいない」というもの。結論だけ見ると亭主のそれと同じですが、その根拠として作曲家と演奏家という「職業の違い」を挙げている点では残念ながら核心をついていないと言えるでしょう。

これは「歌謡曲の作曲家」のことを考えればすぐわかることで、彼らがクラシック音楽の世界と同じように「芸術家」として遇されることはまずなく、レコードのジャケット全面に踊る歌の題名や歌手の名前の脇に小さく名前が出る程度です。逆に、いかなるジャンルの作曲家といえども、それによって金銭的対価を得ている限りにおいては同じ「芸人」ということになります。









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Last updated  2025.04.30 08:20:25
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