つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―

つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―

PR

Calendar

2012.12.05
XML
カテゴリ: 教育・思想・哲学
ブックオフで105円で購入。出版社を見て、よくあるビジネスマンの自己啓発本と思ってはいけない。まあそういう読み方も可能ではあるのだけれど、これは哲学の本である。「働くこと」を著者なりに徹底的に哲学する。生き方が下手な人の、生き方が下手な人による、生き方が下手な人のための本と言い換えてもいいだろう。

キーワードは「理不尽」だ。哲学的にカッコよく言えば「不条理」である。才能や能力は平等に与えられていない。 人格者が社会的に成功するとは限らないし、逆に、社会的に成功しないから人格者というわけでも、悪人というわけでもない。 人格者ばかりではない。美人、ブス、真面目、不真面目、才能がある人、ない人、エトセトラ。

簡単に言えば、引きこもりや生き方が下手な人たちはこういう社会の不規則性、一貫性のなさ、混沌、偶然に耐えられない人たちなのだ。彼らは真実を求める。頼れる指針を求める。けれどそれは得られない。得られないというところから出発するしかない。見もふたもない現実から一歩踏み出すしかない。

働くことだってそうだ。働くことは必ずしも生きがいに結びつかない。けれど仕事とは、それだけだろうか?  生き方が下手でも、人生が失敗に終わっても、自分なりに「よく生きる」ことを指向して、哲学することではないのか、それが本当の「人生の仕事」ではないだろうか。 その人生の仕事を追い求め続ける、そのために普通に働きつづける、そういう生き方だってありなんじゃないか、とこういうのである。

もっと言おう。著者は一言も述べていないし、こんなことをここで書くと語弊があるかもしれないが、これは発達障害者のための本である。それも自閉圏の人向きの書だ。定型発達の人はこの世の理不尽さに耐えられる。適応できる。むしろそれが当然だと思う。 混沌さに耐えられないのは自閉症の人たちである。だからこういう独特の理屈を考えつくし、むしろそれを指針とする。 あるいはこの不具のように共感する。自己愛というより、他者への心からの共感の欠如からくる孤独癖。本書を読むと、著者の父親にもその気があったようである。

「幸福になるために」ではなく「真実から目をそらさないために」生きる。なるほど哲学者らしい題目である。けれども著者は忘れている。 それが傍からどんなに苦しく見えようとも、「真実から目をそらさない」ために生きることこそその人にとっての幸福なのだと。他の道を選べばその人はもっと不幸になるのだと。どのみち人は自分にとっての幸せを追及するように生きているのだと。

何せ哲学の本だ。日本経済新聞社から出たにしてはこれは珍本、奇書の類である。だが特別支援学校の教師が自閉症の専門書を読むように、会社の管理職が気になる部下の掌握のために目を通すのも、また一興かもしれない。


【中古】 働くことがイヤな人のための本仕事とは何 / 中島義道





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2012.12.16 12:03:44
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: