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2013.12.29
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カテゴリ: 小説
刑務所を出た緒方隆雄が持ってた金を使い果たして無賃乗車した末にただで風呂を使わせてくれた老夫婦を殺害して死刑になることを受け入れることで自由になった気がして生きる気力がわいてくる話。
三人称。緒方が刑務所を出た場面から過去に遡っていき、緒方の元同僚で男のうなじに発情する変態殺人者白鳥、緒方が働いていた飲食店の店長の伊藤(久島の娘の夫)、認知症の妻を殺した久島老人、緒方の妻のゆかりのSM女王の過去など、それぞれの過去が語られる形式。読者はなぜ緒方が刑務所に入ることになったのかというプロットを過去に遡って長々と読ませられることになるものの、そのプロットは読者が興味を持てるほど魅力的でもなく、そのうえ途中で主人公とたいして縁のない登場人物の話をされても脱線気味に感じられて、悲惨なエピソードを寄せ集めたことで逆に緒方の体験が希薄化して、この構造はうまく機能していない。不幸な境遇の人にもなにかしら幸福な瞬間があるものだけれども、この小説は悲劇一辺倒で一面的になっていることでさらに物語を飽きさせる。過去形で物語が進行するのは読者としてはつまらなくて、誰が何をしたというのを列挙されても、そのとき何を感じて何を考えたかという感情や思想が書かれないと同情も共感もしようがなく味気なく、小説を読んでいるというより犯罪レポートを読んでいるという感じ。ノンフィクションならまだしも、フィクションの犯罪レポートまがいの小説を読んでも面白くもなく、犯罪を題材にしていながらもサスペンスやミステリとしての面白さもない。仏教に傾倒した緒方の思想が掘り下げられるわけでもなく、服役中の様子も描写されないままいきなり出所の場面から始まるので、最後に死刑になることを受け入れることで自由になった気がするという心理にも説得力がない。
「餃子の王将」をまねたチェーン店の「包子 マダム楊」を舞台にすることで間接的に「餃子の王将」の異常な研修を批判をするあたりは時流をとらえているものの、阪神大震災や新興宗教をいまさら書いても時期が遅すぎるという感じがする。ブラック企業、阪神大震災、新興宗教、シャブセックスはその一つのテーマだけで一つの小説がかけるくらい世間の関心事だけれども、全部をちょっとづつ小出しにしたもんだから掘り下げが浅くなり、エピソードの寄せ集め的な陳腐さが目立ってしまう。
この小説は作者が新しいことをやろうとして失敗したんだろうか。伊藤整文学賞受賞ということで期待して読んだら、別人が書いたのかと思うくらい残念な出来だった。帯の文句も残念で、「求めては奪われ、掴んでは失った。おれの人生、どこで躓いたんや。」の文章のあとに「妻の失踪を皮切りに、緒方隆雄の人生は悪いほうへ悪いほうへと雪崩れる。」と早速躓いた箇所をネタばれしているし、「残されたのは、凡てからの自由」と結末も若干ネタばれしているのもひどい。

★★★☆☆

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最終更新日  2013.12.30 01:41:19
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