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2015.11.23
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カテゴリ: 小説
むずかしい愛の状況を書いた短編集。

「ある兵士の冒険」はトマーグラ歩兵が汽車で隣に座った未亡人と体があたり、相手が受け入れているのか嫌がっているのかよくわからないまま徐々に痴漢する話。

「ある悪党の冒険」は警官に追われているジムが娼婦アルマンダのところに逃げ込み、そこに憲兵准尉アンジェロがやってきて泊まる話。

「ある海水浴客の冒険」は、海水浴中に水着が脱げたことに気づいたイゾッタ・バルバリーノ夫人が男に助けられるのを嫌がって逃げる話。

「ある会社員の冒険」は、会社員エンリコ・ニェーイが徹夜で情事した名残を留めつつすてきな朝に出社しようとしたら、床屋と会話がかみ合わなかったり、十年ぶりに会った級友が結婚して老け込んだり、いろいろあって気がめいる話。

「ある写真家の冒険」は写真を撮らないアントニーオ・パラッジが旧式の写真機を買い、写真をとる行為について哲学的な探求をしながら女友達のビーチェをモデルにして写真を撮りまくるものの振られる話。

「ある旅行者の冒険」はフェデリーコ・Vがローマの恋人を訪ねるために列車に乗り、コンパートメントで苦労して寝ようとしたりする話。

「ある読者の冒険」は海岸で読書していたアメーデオ・オリーヴァが日光浴していた女と知り合い、女と読書の両方が気になって両方ともこなそうとする話。

「ある近視男の冒険」は近視のアミルカーレ・カッルーガが眼鏡をかけたことで新しい世界が見えるようになり、仕事で故郷に帰った際に知人たちに挨拶しようとするものの、イーザ=マリーア・ビエッティは彼が眼鏡をかけているせいで気づかなくて、眼鏡をはずして再び彼女を探すものの、煙草屋のジジーナとイーザ=マリアを見間違えてそっけなく挨拶してしまったかもしれず、すべてが無駄になってしまったかもしれない話。

「ある妻の冒険」はステファーニア・R夫人はフォルネーロ青年と夜遊びして朝帰りしたものの鍵をもっておらず、門が閉まっていたのでカフェで時間をつぶしていろんな男と話して、ひとりで男たちと肩を並べることが不倫だと思う話。

「ある夫婦の冒険」は工場で夜間勤務するアルトゥーロ・マッソラーリが朝に工場で働く妻のエルデを見送ってから眠り、夜にはエルデが夫を見送ってからベッドに入ると夫の場所でなく自分の場所のほうに温もりがあって夫がいとおしくなる話。

「ある詩人の冒険」はウズネッリがゴムボートでデーリアと小島に行って太陽の中心のような裸で泳ぐ彼女を眺めるものの、彼女とはそりが合わず、頭の中は言葉で埋まっていく話。

「あるスキーヤーの冒険」は緑色のサングラスの若者がスキーがべらぼうにうまいブロンド娘を必死で追いかけるもののついていけない話。

どれも三人称で、ある状況での主人公の心境の変化を書くという短編らしい短編。各短編が10-20ページほどで、それぞれの短編にユーモアとか哀愁とか違った面白さがあってよい。イタロ・カルヴィーノというと奇抜で実験的なアンチ・ネオレアリズモ小説が多い印象だけれど、この短編集ではリアリティを損なわない程度に非日常的な恋愛の状況を書いていて、文章もページにみっしり詰まっているのに読みやすくてよい。平易な日常語で小説を書いたネオレアリズモの短編なのだろう。カルヴィーノに奇抜さを期待する読者は普通すぎて刺激がたりなくてがっかりするかもしれないものの、基本的な文章がうまくてどの短編も小ぶりながらもよくできている。「ある近視男の冒険」と「ある夫婦の冒険」はオチが効いていてよく、「ある兵士の冒険」と「ある海水浴客の冒険」はユーモラスな状況設定がよい。
欠点としては時代背景がわかりにくい点で、これは書かれた当時の1950年代のイタリアが舞台なのだろうけれども、短編ということもあって描写や説明が簡潔なので、イタリアに行った事もなく、ましてや50年代のイタリアの状況など知る由もない日本人読者としては状況を想像しにくい。当時のイタリア人読者のために書かれた小説だから現代の日本人にわかりにくくてもしょうがないのだけれども。
あとタイトルは「L'avventura di ○○」が「ある○○の冒険」と翻訳されているけれども、冒険という言葉がしっくりこない。フランス語でいうところのアバンチュールで恋の冒険という意味なんだろうけど、日本語で冒険というと探検隊が秘境に財宝を探しに行ったり勇者が魔王を倒しに旅をしたりするようなイメージになってしまう。『L'avventura』というイタリア映画は『情事』という邦題なので、冒険というよりは情事のほうが翻訳としてしっくりくるような気がする。

★★★☆☆






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最終更新日  2015.11.23 09:35:55
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