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NHKは、多くの人たちを対象に「アンケート調査」を行うようですが、私のような教職員からの意見も大切と考えて、アンケートに答えることとしました。項目は多いので、一つひとつ質問項目と「私の回答」を紹介します。(このたびが第7回) 幸いにして文部科学省は「フィンランドの教育」に注目している。「学力世界一」のフィンランドは、「教育の市場化」政策は一切とっていない。 福田誠治著 『格差をなくせば子どもの学力は伸びる 驚きのフィンランド教育』の内容を任意に列挙すると 「格差をなくす それが共通理解」「逆行する日本の教育」「すべての権限を現場へ」「フィンランドでは学校間格差はほとんどない」「底上げすれば上も伸びる」等々。基本的に成績上位者を伸ばすための「特別な措置」は行われずもっぱら「遅い子も追いつける授業」に力を入れているのであり、そのための条件整備をしっかりと行っている。 このような「世界一」の教育に学びつつ「追い立てる発想」を根本的に変えていく必要があるのではないか。ただし、総合的に果たしている役割は日本の教育も負けていないかもしれない。 (『悲鳴をあげる学校』の最終章を参照されたい)〔質問項目〕 めざすべき教育についてお聞きします 日本の教育は、今後どうあるべきだと思いますか?〔私の回答〕1, 学力格差をなくす (ただしこれと「2,将来国を担う学力の高い人材を育てることを重視する」とは両立する。) なぜそう思うのか、ご自身の体験などをふまえ、詳しくお聞かせください。 フィンランドの教育がもっぱら「底上げ」に力を入れていることは前述したが、フィンランドの世界一の携帯メーカーであるノキアについて『週刊東洋経済』(1月12日号)には次のような記述があった。 「日本の端末メーカーが攻めあぐねた新興市場を寡占し、力強く成長するノキア。(…)いまや、世界指折りのグローバル企業だ。海外売り上げ比率は実に99%あまり。自国市場への依存度はゼロに近づく。 だが、ひとたび組織に目を向けると、ノキアは驚くほど“内向き”だ。そう従業員数52488人のうち、3割弱が今でもフィンランドで働く。国別従業員数では最多だ。自国内にはヘルシンキ郊外本社などに加え、工場も工業都市サロなどに4箇所ある。(…) 高福祉のフィンランドでは労務コストが高い。給与や福利厚生費など製造業における労務コストを国際比較すると、フィンランドは米国の1.3倍。日本はほぼ米国並みだから、フィンランドの高さがわかる。 市場は圧倒的に海外にあり、コスト面でも国内は不利というのに、なぜノキアは母国にこだわるのか。その答えを、ノキア本社広報は「母国にはR&Dの素地がある」と言う。フィンランドではノキア社員の6割弱がR&D(研究開発)に従事しており、工場の製品も欧州向けの多機能端末などハイエンド機主が主だ。」 以上は一例だが、「学力の底上げ」に力を入れる教育体制と、先端での技術者の育成が両立可能だ、と言うことは注目するべきであろう。 ただ、社会保障制度の充実しているフィンランドは「家庭教育の基盤」も日本よりしっかりしていると思われる。「学力」の問題を窓口にしながら、社会全体の問題・課題を総合的に考えていくことが求められているのではないだろうか。 コメントを下さったかたがたへ ていねいなコメント、ありがとうございます。 遅くなりましたが、「回答」させていただきました。(教育問題の特集も含めてHP“しょう”のページにまとめていますのでよろしければ…) ↑ランキング(日本ブログ村)はこちらです
2008.02.02
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NHK「日本の、これから」の次回3月8日(土)テーマは「学力」だそうです。 NHKは、多くの人たちを対象に「アンケート調査」を行うようですが、私のような教職員からの意見も大切と考えて、アンケートに答えることとしました。項目は多いので、一つひとつ質問項目と「私の回答」を紹介します。(このたびが第6回)〔アンケートの項目〕 公立の小中学校を自由に選べる学校選択制や、教師の人事評価に成果主義を導入するなど、 学校や教師の質を高めようという動きが始まっています。 公教育の現場に競争原理を導入することをどう思いますか?〔私の回答〕 反対である なぜそう思うのか、ご自身の体験などをふまえ、詳しくお聞かせください。 市場に任せてしまうこと(教育の市場化)が格差の再生産につながっていくことは自明である。それは、学校間格差も個人間の学力格差も確実に増大させていくであろう。 また、教育の成果主義にも根本的な問題がある。その理由はつぎのとおりである。1、教育の仕事は、前述したように一面的なものさしで数値化できるようなものではない。かといって、総合的な評価をあらゆる側面から納得できる客観的なやり方で実施することはまず不可能である。2、教育の成果は教職員集団の「チームとしての力」が作り出すものであり、無理やりに個別の評価をして賃金に差をつけるようなことは百害あって一利なしである。個別に「打率」や「防御率」が出るような野球の選手とはちがう。教育現場のチームワークを壊す力を加えるだけのことである。(具体例を挙げよう。例えば、高校入試の合格率や大学進学率を高めた教員の賃金を上げる、といったやり方が果たして妥当なのか。上記の「率」を個人で高めることは不可能である。また、「賃金が上がるから進路指導に力を入れる」といった制度を導入することは、教育そのものをねじ曲げてしまうことになるであろう。) そもそも教職員の「動機づけ」とは何か。何が教職員をやる気にさせるのか。もちろん進路の実現を含めてであるが、広い意味で生徒が成長したり目標を実現していく姿である。もっと言えば、そのような教育の営みを保護者や社会がしっかり見た上で評価することである。 思うに、「教育の市場化」の根本的な問題は、それが「教師はなってない、という不信感をあおるような形で」推進されてきたことである。(特に、安部元首相は「免許法の改正」なども含めて「選挙対策の実績作りの一環として教育への不満をあおりつつ」それを強引に進めていった。) しかし、大切なことは「無責任なバッシング」ではなく「客観的な評価や課題の提示」ではないのか。 少なくとも社会全体でバッシングして教育をダメにするような愚は犯すべきでない。 しかし、「無責任な批判」によってその愚を犯しつつあったのではないか、と問うことが必要だろう。 次へ(教育問題の特集も含めてHP“しょう”のページにまとめていますのでよろしければ…) ↑ランキング(日本ブログ村)はこちらです
2008.02.01
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NHK「日本の、これから」の次回3月8日(土)テーマは「学力」だそうです。 NHKは、多くの人たちを対象に「アンケート調査」を行うようですが、私のような教職員からの意見も大切と考えて、アンケートに答えることとしました。項目は多いので、一つひとつ質問項目と「私の回答」を紹介します。(このたびが第5回)〔アンケートの項目〕教育についてお聞きします いわゆる“公立離れ”が進み、私立の学校を受験する子どもが増えています。 そのために塾に通う子どもも多くなっています。 こうした現状をどう思いますか?〔私の回答〕 問題だ なぜそう思うのか、ご自身の体験などをふまえ、詳しくお聞かせください。 この傾向は、「有名大学への合格」という一面的なものさしだけで親たちが学校を判断している結果だと思われるからだ。そのような一面的なものさし・見方が幅を利かせているから「中高一貫」の私立に対抗するため「世界史の履修をごまかす」といった問題が出てくるのではないか。 有名大学に進学できる「ごく一部の生徒」の要求を中心に「公立」の教育を評価するのではなく、社会全体に対して果たしている役割に注目して公教育を総合的に評価する必要がある。 OECD諸国と比べてはるかに「悪条件」であるにもかかわらず、日本の子どもたちが「高学力」をいまだに維持していることがむしろ驚くべきことだ、という点については先に述べたが、公教育の「成果」はそれだけではない。 注目すべきは日本の「犯罪発生率」が「教育条件」において恵まれていると思われる欧米諸国と比較してもはるかに低いことである。〔(2003年 殺人事件の認知件数は人口10万人当たりにして日本1.2、アメリカ5.7、イギリス3.3、ドイツ3.1、フランス3.6)(窃盗事件の認知件数 10万人当たり日本1752件、アメリカ3588、イギリス5815、ドイツ3670)いずれも日本の低さは群を抜いている〕 これについては大阪大学大学院の小野田正利教授も述べているが、「数値に表れない形での日本の学校教育の成果が相当に大きいのではないか」と考えられる。 「膨大な生活指導の領域を抱え(・・・)『一人ひとりの子どもたちのために』活動するわが国の教師たち。運動会や文化祭といった特別活動の領域の幅広さによって、勉強ができる子どもだけが評価されるのではなく、実に多様な活動の場がそれなりに設定されている学校・・・」。(小野田正利著『悲鳴をあげる学校』より) なるほど、確かに高校を退学していく生徒も少なくはないが、高校進学率98%に対して、年間の退学率は2%、青年期の男女(全人口)の90%以上は高校を卒業していく。欧米と比較しても群を抜いて大きいこの数字の背景には、上記のような学校の「特質」(例えば、特別活動を通した「学びあい」や「自己実現」を大切にし「集団の中での個人の活躍や成長」を柔軟に評価しつつ、個人と同時に「クラスが成長する」という視点を持った「生活指導」)があるだろう。「そのことはもっと評価されてもいい」とベネッセの関係者も述べていた。 水谷修も指摘しているが、現在は日本全体に「余裕のないイライラした状況」が広がっており、子どもたちはその犠牲者である。家庭の教育力は明らかに低下しつつあるが、「貧困層」が15%をこえている現実(『ワーキングプア3』)もその背景にあるだろう。 地域共同体の「教育力」もほとんど崩壊しているような現状、さらには「欧米では製造されていないインターネットつきの携帯電話が普及してさまざまな“犯罪”の温床になっているような状況下」で、上記のような犯罪発生率の低さは「奇跡的」でさえあるのではないか。 そのような「事実」に目を向けず、一面的なものさしで「公立」の教育があたかもダメであるかのような評価をすることに根本的な問題はないだろうか。 (小野田教授の講演会の内容はこちら) 次へ(教育問題の特集も含めてHP“しょう”のページにまとめていますのでよろしければ…) ↑ランキング(日本ブログ村)はこちらです
2008.01.31
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NHK「日本の、これから」の次回3月8日(土)テーマは「学力」だそうです。 NHKは、多くの人たちを対象に「アンケート調査」を行うようですが、私のような教職員からの意見も大切と考えて、アンケートに答えることとしました。項目は多いので、一つひとつ質問項目と「私の回答」を紹介します。(このたびが第4回)〔アンケートの項目〕“ゆとり教育”についてお聞きします いわゆる“ゆとり教育”の柱として2002年度、総合的な学習の時間が導入されました。 しかし、今年3月に発表される新しい学習指導要領では、その総合的な学習の時間が減らされ、 逆に、数学や理科など主要科目の授業時間が増やされる見込みです。 こうした、いわゆる“ゆとり教育からの転換”が、学力向上につながると思いますか? (総合的な学習の時間・・・体験的な学習を通じ、自ら学び自ら考える力を養うのが目的で、 それぞれの学校が独自に行っている授業。)〔私の回答〕 基本的に思わない なぜそう思うのか、ご自身の体験などをふまえ、詳しくお聞かせください。 今後、学力が低下する可能性がある大きな要因としては、子どもたちの「勉強嫌い」が明らかにある。「学力低下」と大騒ぎする大人をよそに子どもたちは勉強に「嫌気がさす」「うんざりしている」状況なのだ。 「総合的な学習の時間」は子どもたちの自然な知的好奇心を高めていく大切な試みであったと思われる。その時間が削られて教科の時間が増えても「知的好奇心」がどんどん伸びていくとは思えない。 ただし、文部科学省としては「総合的な学習の時間の発想を教科の中に取り入れて」PISA的な問題解決能力をつけていく、という考えのようである。しかし、それが充分現場に受け止められるかどうか。それに加えて「総合的な学習の時間」にしてもその成果が限定的であったのは、人員等の条件整備がなかったという問題がある。 体験や観察・実験を通して学んだり、「科学」の本質について創造的な活動や思考をとおして理解していくような授業は従来型のものと比較して準備においても実践においてもはるかに労力を要する。 人員増、時間数軽減などの条件整備をまったくせず、余裕もなくさまざまな問題に振り回されている「現場教職員の善意と頑張り」だけで成果があがるはずがない。すでに、限界が来ているのである。 教育という営みにはじっくり教材等を準備するゆとりや日々子どもたちと向き合うときの「心のゆとり」が大切だ、(「総合的な学習の時間」や「その趣旨を活かした授業」の成果を挙げるためにも)と言うことをなぜ文部科学省が理解できなかったのか不思議である。 ただし、2008年度の教育予算は若干だが増えそうなので、有効に活用すれば上記の学習が成果を挙げていく可能性はある。 なお、私の前任校(W 高校)で実施していた「総合的な学習の時間」の大まかな内容はこちらです。 次へ(教育問題の特集も含めてHP“しょう”のページにまとめていますのでよろしければ…) ↑ランキング(日本ブログ村)はこちらです
2008.01.30
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NHK「日本の、これから」の次回3月8日(土)テーマは「学力」だそうです。 NHKは、多くの人たちを対象に「アンケート調査」を行うようですが、私のような教職員からの意見も大切と考えて、アンケートに答えることとしました。項目は多いので、一つひとつ質問項目と「私の回答」を紹介します。(このたびが第3回)〔アンケートの項目〕 文部科学省は、学力を「基礎的な知識・思考力や判断力・学習意欲」の3つと定義しています。 あなたにとって、学力とは何だと思いますか?〔私の回答〕 「基礎的な知識・思考力や判断力」といっても間違いではないが、根本的に身につけさせたいのは第1に日常生活も含む「具体的経験」の中で生きる知であり、第2に「公的・社会的な問題に対する判断力」である。(当然それは、現状の社会に対する健全な「疑う知性」も含んでいる。)言い換えれば、「平和的な国家および社会の形成者」として「社会をよりよくしていく見通し」を開くような生きた知こそが必要な「学力」だと思われる。〔質問項目〕 また、学校や家庭ではそれぞれ何を重点的に教えるべきだと思いますか?〔私の回答〕 学校 : より良い社会を作っていくためには確かに「自然科学」「社会科学」的な知(環境問題等も含めて)を獲得させることが必要である。そのような「知」を獲得することで、社会の形成者として実践し生きていくための「見通し」もだんだん明確になってくるはず。 具体的には、急速な高齢化や生活の困窮などが問題になる今こそ、さまざまな領域で「憲法」や「生存権など基本的人権」の理念と現実、それらを実効あるものにしていく道などについて、問題を投げかけ一緒に考えていくことが必要であろう。『今こそ学校で憲法を語ろう』(青木書店)には、NHKスペシャル『ワーキングプア』を題材に「生存権の問題」を具体的に考えていく実践などが「報告」されている。 家庭 : 自分自身の大切さ、一人ひとりの大切さ、みんなが幸せになっていくことの大切さ、いい人間関係を作っていくことの大切さ、などを伝えていくことが大切。 全国で数多く結成されている「親父の会」では、さまざまな遊び的行事や自然体験・環境学習など、子どもたちにとって不足しがちな体験の企画・創造を通して上記のことを実感できるような機会を生み出すよう活発な取り組みが見られる。〔質問項目〕 なぜそう思うのか、ご自身の体験などをふまえ、詳しくお聞かせください。〔私の回答〕 HR担任や生徒会担当として教育に当たり、あるいは総合的な学習の時間などを企画・実践しつつ、「体験を通して健全な自己形成ができる」ということを実感する機会を数多く得たため。 自分自身が受けた教育は「進学校」のそれであったが、上記のような面が決定的に不足していたことを感じる。例えば「有名大学」に入って「国家官僚」になる場合にしても、そのような「自己形成」や「よりよい社会の形成者として実践し生きていくための姿勢と知」はきわめて重要であると思われる。 次へ(教育問題の特集も含めてHP“しょう”のページにまとめていますのでよろしければ…) ↑ランキング(日本ブログ村)はこちらです
2008.01.28
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NHK「日本の、これから」の次回3月8日(土)テーマは「学力」です。 NHKは、多くの人たちを対象に「アンケート調査」を行っていますが、私のような教職員からの意見も大切と考えて、アンケートに答えることとしました。項目は多いので、一つひとつ質問項目と「私の回答」を紹介します。(このたびが第2回)〔アンケートの項目1〕問1 あなたは、子どもたちの学力が低下していると感じていますか? 上記の問いに対して私は池上彰氏の著書を根拠に「感じない」と答えたが「ベネッセ教育開発センターの調査」1、算数、2、国語でもむしろ正答率がやや上昇している、という結果が報告されている。もちろんこれだけですべてを判断できるわけではないが、少なくとも単純に「学力低下傾向」を断定できないとは言える。問2 PISAの調査では、「将来、科学関連の職業に就きたい」という生徒の割合が7.8%と、 OECD加盟国の平均25.2%を大きく下回りました。いわゆる“理科離れ”をどう思いますか?〔私の回答〕 心配である なぜそう思うのか、ご自身の体験などをふまえ、詳しくお聞かせください。 〔私の回答〕 同じく池上彰氏が著書のなかで触れている点であるが、2003年のIEAの調査でも「数学・理科」の嫌いな生徒が増えている。(国際平均の約2倍) また、家庭での勉強時間は中学2年生で1.0時間と調査した45の国・地域の中で最下位である。 このような現状の中で、しかも一クラスの生徒数などの教育条件がOECD諸国と比較して最低レベルであることを考えれば、「それにもかかわらず、なぜ日本の子どもたちの学力水準は高いのか」を問うべきであろう。 実際、日本の子どもたちの学力は、読解力に関してはOECD諸国のほぼ平均、他の科目においてはOECD諸国の平均をかなり上回っている。明らかに小学校・中学校職員の献身的な指導が背景にあると思われる。(ちなみに中学2年生のテレビを見る時間は、2003年の調査では2.7時間と46か国中最大である。ゲームや携帯電話、テレビと向き合う時間が多く、読書の時間が少ない現状の中で、読解力がOECD諸国の平均に達している方が不思議なくらいではないか) ただ、日本では韓国とともに明らかに「勉強嫌い」が多い(数学嫌い:日本61%、韓国57%、国際平均35%、理科嫌い:日本41%、韓国62%、国際平均23%)。その理由としては、「しなければならない」という有形無形の「圧力」に対して子どもたちも「嫌気がさしているのではないか」ということや、小学校・中学校の教職員が心身ともに余裕がない状況の中、「自然な興味・関心を伸ばしていくような指導」がなかなかできていないことなどが考えられる。 そうした中でも「ポーランド科学アカデミーが主催する高校生物理論文コンテスト」(ノーベル物理学賞への第一歩)で3年連続入選した小石川高校の生徒を指導した上條隆志教諭の「実験・議論中心の授業」は注目に値する。。 次へ(教育問題の特集も含めてHP“しょう”のページにまとめていますのでよろしければ…) ↑ランキング(日本ブログ村)はこちらです
2008.01.27
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NHK「日本の、これから」の次回3月8日(土)テーマは「学力」です。 NHKは、多くの人たちを対象に「アンケート調査」を行っていますが、私のような教職員からの意見も大切と考えて、アンケートに答えることとしました。項目は多いので、一つひとつ質問項目と「私の回答」を紹介します。〔アンケートの趣旨と項目1〕 昨今、日本の子供たちの学力低下が問題視されています。 OECD(経済協力開発機構)が行った国際学力調査(各国の15歳対象。以下PISA)は、 子供の「知識量」をはかるのではなく、「実生活で役立つ能力」をどれだけそなえているかを 調べる目的で行われ、読解力・数学的応用力・科学的応用力の3項目が調査されます。 00年、03年、06年と3回調査は行われ、読解力(8→14→15位)、数学的応用力(1→6→10位)、 科学的応用力(2→2→6位)と全て順位が下がっています。 あなたは、子どもたちの学力が低下していると感じていますか?〔私の回答〕 感じない なぜそう思うのか、ご自身の体験などをふまえ、詳しくお聞かせください。〔私の回答〕 そもそも自分自身の体験をもとに、日本の生徒の「学力低下」について判断することには無理がある。従って「学力テスト」の結果を妥当な形で判断していくしかないが、「学力が低下している」という主張には根本的に疑問がある。 PISAの結果についての上記のまとめも、「学力は低下している」という結論を前提としたような形になっているが、ベネッセが紹介しているPISAの結果分析を見ただけでも、妥当でないことが分かる。〔2010年 11月 右のリンクを追加 「日本の子どもたちの学力は低下していない」〕 (なお、PISAの学力テストで世界一のフィンランドの教育についてはこちら) 『にっぽん 本当に格差社会?』のなかで池上彰は次のように述べている。「日本の児童・生徒の学力は、騒がれているほど低下していない。むしろ世界的に見ても依然として高い水準にある。国際調査のデータを正しく読み取ることのできなかった大人の問題であり、こちらのほうがよほど「学力低下」の心配がある」と。 池上は具体的なデータをていねいに検証しており、その主張には説得力を感じた。引用を続けよう。 「順位が下がったから『学力低下』だ、と騒ぐ発想は、実はそういう人こそ「学力低下」が疑われます。参加している国が同じで、順位に統計学的な差(有意差)があって初めて、成績(学力とは断定できない)が上がった、下がったと議論できるからです。(…)検証しましょう。(…) IEAの調査では、日本の中学2年生の数学が、1982年には1位だったのに、1995年には3位に後退しています。ところが、1981年の調査に参加した国・地域の数は20だったのに対して、1995年には41に倍増しています。しかも、1995年に日本が3位に後退したとき、1位はシンガポール、2位は韓国で、どちらもこの時初参加だったのです。 1999年に日本は5位に下がっていますが、このとき、1位と2位は変わらず、3位は台湾、4位は香港でした。台湾は、このときが初参加でした。 つまり、日本は強豪が参加しない試合で好成績を収め、「日本はトップレベルだ」と喜んでいたに過ぎなかったのですね。(…)強豪が加わるたびに、順位が下がる。その順位の数字だけを見て、「学力低下!」と叫んでも仕方がないのですね。 さらに、こうした調査には、統計学的な誤差はつきものです。数字に僅かでも差があれば順位はつきますが、統計的に意味のある差かどうかは別問題です。(…) OECDによる調査(PISA)も、同様です。2003年の「数学の応用力」は6位ですが、日本より上位の5カ国と日本とのあいだに(統計上の)有意差はありません。日本は「1位グループ」に入っているのです。 2003年の「読解力」の成績は14位になっていますが、これも日本より上位国の中に有意差のない国があって、日本の実際の位置は「9位グループ」ということになります。これだと、こちらも「前より下がった」と大騒ぎするレベルではない、ということになります。〔ちなみに2003年の科学に関する応用力(科学的リテラシー)は1位グループ、問題解決能力も1位グループであった〕 私の知るかぎり、「学力低下」論者のなかで池上氏の問題提起にたいしてまともに応答している人はいない。「わかったつもり」の人が多いように思われる。 そして、「学力低下」と騒ぎ立てることが、教育にとって果たしてプラスになるのかどうか。。池上彰も「ゆとり教育の集大成がまとまった途端、再び『学力低下』批判が起こり、教育方針は再度、転換を始めました。こうした右往左往ぶりのほうが、よっぽど心配なのです」と述べている。2011年1月追記: PISA2009に関わるニュースについてshira さんもブログ記事で述べていらっしゃいますが、2010年になっても日本の報道機関のデータ読解力は全く向上していないようです。 教育行政の右往左往を生み出した「マスコミの読解力不足」に関して報道機関にまったく自覚がないのは、日本の教育にとって大きな問題だと思いますね。 次へ(教育問題の特集も含めてHP“しょう”のページにまとめていますのでよろしければ…) ↑ランキング(日本ブログ村)はこちらです
2008.01.26
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