羊の墓場

羊の墓場

2004.01.30
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私はあの頃勉強ができる事が厭で嫌で仕方が無かった。
多分、六年前。小学校を卒業する辺りの記憶だろう。
親は私の勉強には煩くて、色々と口出しした。
彼の口癖は「煩く勉強しろと言った憶えは無い」だったけど、それは“学校の勉強には”という意味で、私があの頃たとえ課題を全て無視したとしても恐らく何も言わなかったのだろう。
あの頃は真面目過ぎてそんな事考えもしなかったが。
彼は一から十まで兎角、口を出した。
そのせいでか、私はどれだけ担任に褒められようが、心の底から嬉しくは思えなかった。
どうせこれは私の能力じゃない。全部、彼の能力だ。
そう思っていたからだ。
憶えている限りでは、一度だけ彼に言った事がある。
「勉強できるのが厭だ」
彼は怪訝そうな顔をして、「何わけの分からないこと言ってるんだ」と切り捨てた。
あの頃、彼は恐怖の対象でしかなくて一言話すだけでも精一杯だった私はそれだけしか言えなかった。多分、泣いていたんだろう。
自分でも変な事を言っていると感じながら、他にどう言えば良いか考えられなかった。
彼はいつも考える時間を与えてくれなかったから。

自分の能力、他人の能力と堅く考えていた頃の話。
自分の精一杯を否定された憶えは数え切れない程あるけど、もう彼の事は気に掛けたくないから全て忘れたいと思う。
憎しみの中にすら彼を思い浮かべたくは無い。
あれから数年で割り切れるようになった。
たとえ誰が授けた能力であろうと私が行使できるものは私の能力だ、と。
何だか何処ぞの政治家の詭弁のようだが、こうでも思わないと前には進めない。

たとえ目の前が断崖であったとしても、もう後には戻らない。





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Last updated  2004.01.30 17:44:07
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