雅の日記~お気楽生活をめざして

雅の日記~お気楽生活をめざして

2009年09月07日
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カテゴリ: お酒を愉しむ
満月の夜。山崎19年の封を切って、グラスに注いだ。

お友達からいただいたもので、節目の日に呑みたいなと思っていたので、この日までとっておいたのである。
19年という中途半端な数字は「オーナーズカスク」のしるし。
つまり、誰かが樽ごと所有していたものを開けてボトルに詰めたということだ。
何かの祝い事で配られたものなのかもしれない。

部屋の明かりを消すとカーテンの隙間から月光が差し込み、琥珀色の液体の中に白色の織(おり)を作る。
アルコール度数は56度。火をつけると燃えるほどの度数ではないけれど、通常よりもかなり高めだ。
だからグラスを覗き込むと、アルコールの熱気がぬらぬらと立ち上ってくる。むせるほどに高貴で、きめの整った香りが鼻腔を刺激し、眩暈がした。

ややあって、一口含んだだけで、「これは参った」いう気持ちになった。
いつも呑んでいた山崎とはまったく違う、繊細ながらも幾重にも織り成された味が身体を支配する。それは一枚、一枚と年月を重ねてきた年輪を思わせる、重厚な味わい。

既に少し酩酊していたからなのかどうかわからない。
でもこの樽を贈った造り手の気持ち、そしてその樽を開け、皆に配った人の気持ち、そしてこの素晴らしいウィスキーを私に贈ってくれた人の思いやり。妄想でしかないのだけれど、そういうものがなんとなく頭の中に、映像として入ってきた。そして感謝とか優しさとか、そういう気持ちで身体一杯に満たされていった。
アルコール度数のせいかもしれないけれど、心も身体もふわーっと温かいものに包まれるような気がした。

そうしてしばらくすると、ぼんやりとこの19年間、自分がどう生きてきたかが走馬灯のように甦った。甘酸っぱい思い出も、苦しいが故に昇華せずに心の中に押し込めた感情みたいなものも、次第に湧き上がってきた。
つらいこと、悲しいことは諦めたり、手放そうとしたけれど、どうしてもいくつかは心の底に澱(おり)となって溜まっている。見てみぬ振りして生きてきたのに、己の中のそういうものが露(あらわ)にさせられる。琥珀色の液体が私の心に忍び込み、鏡のように内面を照らすからだ。
私はまんまと「気づかされて」しまったのだ。

いろいろな思い出が甦るたびに、涙が出そうになった。次第に嗚咽しそうになって、必死で堪えようとしたけれど、もうできなかった。

気が付くとひとりでわぁわぁ泣いていた。
嗚咽というより、それは慟哭と呼ぶほうが近かったと思う。

あたりはしんとしていて、ただ虫の音だけがかすかに、していた。
満月の光は変わらず、白く差し込んでいた。
<お酒メモ>
土曜日

ヱビスビール 生 グラス 2つ
風の盆 大吟醸 2合くらい
白隠正宗 山廃 1合くらい
天法 本醸造 1合

山崎19年 そのままで1つ半





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最終更新日  2009年09月07日 01時43分29秒
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