すい工房 -ブログー

すい工房 -ブログー

2010年01月04日
XML
カテゴリ: クチナシの庭3部



 そう、告げた橋川。

 その直後の行為。

 橋川が突然、口づけたのは、圭介との根拠も何もない言動を告げてからだ。

 ――比べてみる?

 そう告げた橋川。

 その真意はわからないけれど。

 圭介に対して、何かしらの対抗意識を持っていて、それであんな行為をしてきた。

 それはたまらなく悔しかったけど。

 ……それより。

 橋川が、私が圭介とキスをしたと信じたことが、悲しくてならなかった。

 最初に私と圭介との仲を勘ぐる橋川に腹がたって、売り言葉に買い言葉的に言ってしまったことだけど。

 ……すぐに信じるなんて、思ってなかった。

 探ることもなく、聞き返すこともなく、私が言ったことを、その場でうのみにしていた。

 私は。

 橋川が好きだと、伝えているのに。

 たった一度きりの機会だったけど、しっかりと伝えているのに。

 私の想いを信じていないのだと。

 私の気持ちがうつろいやすいのだと。

 そう思っている橋川が、うらめしくて。

 信じてもらえていないのだと、目の当たりにして、悔しくて、悲しくて、仕方なかった。

 こぼれる涙をぬぐいつつ、呆然としている橋川を、睨むように見据えた。

 頬をぬぐいながら、唇も、こするように、拭いながら。

「……するわけっ、ないじゃない……!」

 嗚咽交じりの私の言葉に、橋川は眉を寄せて怪訝な表情をのぞかせた。

 真意を汲み取ってくれない橋川に苛立ちを覚えつつ、私は再度、言葉を募った。

「圭介と……! そんな、こと、するわけ、ないじゃない……!

 私は……っ!」

 ――橋川が好きなのに。

 そう続けたかった言葉は、喉もとで止まって、声にはならなかった。








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010年01月04日 07時50分59秒
コメント(1) | コメントを書く
[クチナシの庭3部] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


はじめまして  
shera さん
クチナシの庭を拝見しました。
とても引き込まれ、一気に三部まで読んでしまいました(笑)
是非続きを読みたいです。
最近は別の小説をお書きのようですが、二人のその後が気になるので、時々でも続編お願いできませんか?
よろしくお願いします。
(2010年03月02日 16時13分22秒)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

カレンダー

プロフィール

高月すい

高月すい

コメント新着

高月@ Re[1]:手のひらに「うおのめ」。(09/19) >石井小太郎さん 返事、遅くなりまし…
石井小太郎@ Re:手のひらに「うおのめ」。(09/19) 1週間前に左手親指にトゲが刺さったようだ…
shera@ はじめまして クチナシの庭を拝見しました。 とても引…
佐藤YUKI @ 寮なので夜ヒマで… 寮生活なので、夜がヒマで辛いです(汗)…
梅(b^▽^)b@ 復活 熱烈歓迎 人生長い道のり…… いろいろありますよね…

キーワードサーチ

▼キーワード検索

バックナンバー

2024年12月
2024年11月
2024年10月
2024年09月
2024年08月

© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: