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あれは高校生の頃、青少年ジャズミュージックセミナーで最終日に予定されていたコンサ-トの音あわせかなにかをしていたときだ。(夏の思い出 ~恐怖のヒッチハイク~参照)その日は午前中だというのにもう気温はすでに30度を越していたが、山の奥の青少年の家にエアコンなどという気のきいた設備などあるはずもなく我々はとにかく窓を開けてリハーサルをしていた。私もあまりの暑さに自分で何を吹いているかもわからないまま、トランペットをとりあえずプップップーとするしかない。周りをみると、たぶん似たようなことを考えているのかみんな同じようにいいかげんにピロピロやっている。しかし、ここまで暑いとまともに演奏しろ、という事自体が無理というものだ。かなしいかな、今この廃人ビックバンドが奏でているものはフォクシーではなくもうすでに葬送行進曲だった。そこに突然、絹を引き裂くような悲鳴が響いた。と同時にはじの方でフルートを吹いていた女の子が立ち上がって何かを叫びながら部屋のなかを走り回っている。よく聞いてみると、なにやら「モンスター!モンスター!」と言っているようである。半分死んでいたリハーサル室のテンションが一気に上がった。そのうちに、他の女の子にもヒステリーがうつったらしく彼女らも騒ぎ出す。私は何があったかさっぱりわからなくポカンとしていると、そのひとりが私の腕をつかんで、「蠅!モンスターバエ!」と言ったのだ。「???」(モンスター?)と、その子が指差す方向をみてみると、、、、、そこには、「トンボ」が飛んでいた。(・・・・・)そんなバカな!いくら都会育ちだからといって、トンボを知らない人間がいるわけがない!と思ったのだが、彼女らは、「このハエ、ぜ~ったいに襲ってくるんだから!かじられるー!」と本気で怖がっている。(ハエって襲ってくるっけ、、?かじるっけ?)私が、「あのね、あれはトンボっていってね、蠅じゃないし、かじらないし、襲わないのね、、、」と説明しても、誰も聞く耳をもたない始末。疲れてきたので、「窓が開いてるからそのうちでていくわよ。」といったら、全員の総スカンをくってしまった。しかも怖がっているのは女の子だけではなく、男子生徒も各自トロンボーンやらサックスやらをふりあげている為にトンボもびっくりしてしまってなかなか外にでられない。仕方がないので、私がこのかわいそうなトンボをつかまえて逃がしてやると、「キャーっっ!」という女の子達の悲鳴と共に「はやく、手を洗って!はやく!」とせき立てられながら今度は私が部屋を追い出されてしまったのだった。(どうしてトンボをさわって手を洗わなければいけないのだろうか、、、、)この大騒ぎの後私が、「モンスターバエを素手でつかんだ(野蛮な)女」として合宿中の有名人になったことはいうまでもない。トンボをハエだと言い張る国、ドイツ。少しばかり考えこんでしまった17才の夏であった。おわり
2008年07月09日
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(夏の思い出 ~恐怖のヒッチハイク~の続き パート3)みごとにチューニングされた改造スポーツカーのなかには20代半ばくらいのとても柄の悪そうな男がふたり。ふたりとも筋骨隆々、タンクトップからむき出しになっている真っ黒に日焼けした腕にはタトゥーがみえる。(あ、、、ヤバイ)「どこへいきたいの?」不安で高鳴る心臓をおさえながら、「◯◯◯までです。」と答える。「オッケー」でも、少したって目的地は、「◯◯◯」ではなく「△△△」だったことに気がつく(いいまちがえたのだ!)あわてて修正すると、返事はまた、「オッケー」(・・・・・・)◯◯◯と△△△では、方向も全然違うのに、オッケーとはどうことだ?まさか方向が違うのに、「通り道だから」ってことはないだろう。やっぱり、、、、、やっぱり、拉致されちゃうんだ!どこか知らないところに連れて行かれちゃうんだ!!売りとばされちゃうんだ!誘拐、暴行、監禁、人身売買、売春、殺害、寂しい森林、穴、変死体、、、頭のなかをぐるぐるかけめくるおそろしい言葉の数々。胃のあたりをズンズン容赦なく攻撃する大音量で流れるテクノ。「オレ、DJやってんだ。」と男のひとりがボソリ言う。DJ。(・・・)あぁ、なんてことだ。しかもDJだなんて絶対コカイン中毒にきまってるんだ!エクスタシーとかやって、ディーラーで、指名手配のお尋ね者なんだ~!そんな根拠のない偏見も今となってはかなりの説得力さえ持っているように思える。「ナッ、ナッ、ナイフ、ナイフ」とうわごとのように言うモニカの手を握りながら、「私のナイフなんてつまようじほどの役にもたたんだろうに」と前座席の右と左とにはみ出した筋肉の塊をながめながらひとりで納得するのだった。そして後悔の念に打ち拉がれている我々にとどめをさすかのように、「ディステニー! ディステニー!」と、背後からテクノのサビが響き渡った。あぁ、お父さん、お母さん、さようなら、、、、、車内に響き渡るこの歌声が我々の運命(ディステニー)の告知なのだ。取り憑かれたように、「ですてに、ですてに、」と繰り返しながら後部席で震えていると、「もう少しで△△△につくんだけど、なんていう宿泊所なの?」とマッチョなDJがふりむいた。えっ?あっ、合宿の住所、、、、はポケットに、、、ない!?しっ、しまった、、、なんと、あのビジネスマンの車のなかに忘れてきてしまった!、、、、、、どうしよう。これじゃあどの宿泊施設なのかわからない、、、。(間抜け)ということは、ここまできて、(もし今運良く生き延びたとしても)結局目的地につけないのだろうか。情けなさで、放心状態になる。(ここでゲームオーバー、か。)しかし!しかし、諸君!世の中捨てたもんじゃない。奇跡はおこるのだ。見かけによらない人が思いもよらない事をすることが本当にあるものなのである。この絵に描いたような「へぃ、へ~ぃ」と女をひっかけ、酒を飲み、テレビなんか盗んじゃいそうな男二人組が、(映画の見過ぎか?)いやな顔もせずに、「う~ん、△△△には宿泊施設っていくつもあると思うなあ、、、」といいながら、△△△市内の宿泊施設を片っ端から回ってくれたのだ。そして探しに探して6件目、、、、、。その施設にたどり着くと、入り口前にクラスメートが数名休憩をとっているのがみえた!こっ、ここだ!つっ、ついた! (これは本当に奇跡である。)感激のあまり、「スゴい!スゴい!スゴい!」としかいわない私たちに、男たちはトランクから我々の荷物をおろしてくれて、「じゃっ!」と言って去っていった。ひとは見かけによらない。(まったくもって失礼な話だが)こんな親切なひとたちが世の中にはいるのである。下心も一切なく、、、。あれからもうかなりの年月がたってしまったが、この名前もどこに住んでいるかもわからないお兄さん達(今は立派なおじさんになっている事だろうが)に心から感謝しなければと思う。それにしても、その場に遭遇して驚いたのは先生とクラスメートであろう。唯一別行動をとっていた我々が突然、真っ赤なスポーツカー&ムキムキな年上の男二人と登場したのだから。開いた口が閉まらなくなってしまっていた彼らの顔を今でも思い出す。しかし天使か守護霊だかよくわからないが、なにかに守られて何事もなく奇跡のように合宿にたどり着いた我々だったが、これに懲りてもう二度とヒッチハイクなんてものはしなかった。人生初で最後のヒッチハイク。17才の夏の思い出である。おわり良い子のみなさん、ヒッチハイクはやめましょう。
2008年07月05日
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(~恐怖のヒッチハイク~の続き パート2)そこで、うかつにも飲み物も用意して来なかった我々を待っていたものは、容赦なく照りつける真夏の太陽と、焼けるようなアスファルト。はじめは、「最悪だよね~、あのおやじ~」なんて文句を言う余裕のあった我々だが、人っ子一人いない車道を歩いているうちに、暑さと、疲労と、不安で段々心細くなってくる。そのうえ、トボトボ歩いている私の右手にはトランペット、左手に旅行かばん。(注1)その後を汗を流しながら歩いているモニカも背中に大きなリュックサック、両腕でホルンのケースを抱きかかえて今にも倒れそうになっているわけで、こんな「売れないチンドン屋、ただいま失業中」というキャッチフレーズがぴったりな出立ちではなんとも情けない。はたして正しい方向に向かって歩いているのかさえも定かではない田舎道を、「こんなことになったのも、すべてモニカのせいだ!」と呪いながら歩いていると、後ろから一台の車がスーッと近づいて止まった。「あななたちこんなところで一体何やってるの?」運転席からやさしそうなおばさんが顔をだした。天からの救い、棚からぼた餅、とはこのようなことを言うのであろうか。(ん?ちがう?)この突然の幸運に感謝しながら車に乗り込む。「これで、目的地につくことが出来るかも!」と多少の期待もあったが、「あななたちの行きたいところはここからかなり遠いからつれていってあげれないけど、あきらめずに頑張るのよ~」と我々はとなりの村の境界線で20マルク(当時1500円ほど)のお小遣いをもらって降ろされた。(あまりにも我々を不憫に思ったのだろう。)さて、、、最終目的地にまでは連れて行ってもらえなかったが、この思わぬラッキーな出来事についつい気をよくしてしまった我々が思いついた「合宿先までたどりつくプラン」は、「ヒッチハイク」(・・・・・)そう。学校でも、家でも、良い子がけ~っしてしてはいけないと口をスッパクいわれているあのヒッチハイク、である。しかし、悲しいかな、レイプ、強盗、殺人、誘拐、、、、、、そんな怖い話を十二分に聞かされていても、結局我々は17才。ノーテンキなティーンエージャーなのであった。しかしただ一つ、二人で決めたルールがあり、「男の人のくるまには乗らない」というものだった。(それにしても、「知らない人にはついていかないようにしましょう」なんて幼稚園児だよ、、、)さぁ、いよいよヒッチハイクだ!そう思いながら、はりきって車道にたった、までは良かったが、、、、、、、恥ずかしくて、親指がたたない。(でも、それをたてなきゃ話にならんだろう)その上モニカは、私には絶対に無理、といいはじめる始末。こうしてこの名誉あるミッションを無理矢理押し付けられた私は、ありったけの勇気をふりしぼって、、、、親指をたてた。しかし、このかろうじて1秒だけたてられた親指に反応してくれるドライバーがいるわけもなく(そもそも彼らも、「ヒッチハイカーは乗せないように」と教育されているのだ)非情にも車が目の前を通り過ぎていく。暑さと疲労でもう意識も朦朧としてきた。しかも、この国道、あまり車が通らないところらしい。私が親指をたてたり、ひっこめたりしているうちに、とうとう車が一台もこなくなってしまった。あぁ、ここで終わりか、、、戻ることも、先に行くことも出来ない無念さをかみしめてみる。「今日は野宿かなあ、、」なんてボーッと考えていると、遠くから車らしきものがみえてきた。このチャンスは逃がさない!とばかりに、ピ~ンと親指をたてる私。そしてその前を、真っ赤なスポーツカーがボボボッッと通り過ぎ、静かにとまった、、、、。ほとんど夢遊病者のようにフラフラその車に近づく私。後ろから「男?男の車じゃぁないのぉ!」モニカが叫ぶ声が聞こえる。、、、、、、はい。男の車のようです。そして、約束しました。男の車には乗らない、と。たしかにそう約束しました。でも!でもね、ここはド田舎。どこのなんていう名前かもわからない国道を35度の炎天下の下、あるものといったらトランペットとホルン、飲み物も食べ物も持たずにさまよっているのだよ、我々は。このままいくと、どっちにしたってのたれ死にする運命なのだ。はっきりいって、その時は男だろうが、なんだろうがどうでも良くなっていた。「私はぜ~ったい乗らない!乗らないから!」と騒ぐモニカに、「でも、私ナイフ持ってるし」(意味不明・・・)と説得し、その車に乗り込んだのだった。(注2)つづく注1 この合宿は、各自『管楽器』をもって参加するのが条件だった。私はピアノ専攻だったのだが、ビックバンドでトランペットを吹いていたのでトランペットを持参しなければいけなかった、というわけ。でも、チューバとかじゃなくて良かった。注2 この「でも、私ナイフ持ってるし」というセリフは、とても頼りになりそうで、実はまったく頼りにならない名言として、モニカと私の間でいまでも語り継がれている。
2008年07月04日
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連日、暑い。あまり暑いと北国むすめの私の頭は活動停止をしてしまう。そんなスクリーンセーバーがかかった状態の頭で、夏がく~れば思い出す~という歌とともに思い出した、夏の思い出。あぁ、あの日も暑かった、、、、、。 -------------あれはミュンヘンに来て2年目の夏、通っていた高校のジャズバンドの先生に半ば強制せれて行くことになった青少年ジャズミュージックセミナー(合宿)に行く途中のことである。その合宿は、青少年(15歳から18歳まで)が1週間、山のなかの青少年の家に泊りこみ、ジャズの音楽論、作曲、アレンジ、を学ぶというものだった。他の生徒たちはもうすでに汽車のアクセス等を調べていて、グループで汽車とバスを乗り継いでいく計画をたてている。私も仲間にいれてもらおうと思い、同級生のモニカを誘うと彼女は、「私は汽車ではいかない」というのだ。理由は、汽車の切符代がない、とのこと。彼女を見捨てて他のみんなと汽車で行くことは出来ない。しかし、汽車でいかなくて、何でいくというか。目的地は、ドイツの山のなかの僻地なのである。我々は17歳、車の免許などあるはずもない。そこで、モニカが出した案というのは、、、、「相乗り紹介所」(・・・・・)この時はじめて知ったmitfahr-zentraleというシステムは、そこの紹介所に行き先と日程で問い合わせをすると、登録してあるメンバーのなかから相乗りをオーガナイズしてくれ、我々は、そのメンバーに少しガソリン代をはらう。というものだ。(今でもあるのかどうかはわからないが)メンバ-はほとんどビジネスマン。どちらにしても行かねばならないところに、だれかが一緒にのってくれると退屈しのぎにもなるしガソリン代も安くすむし、相乗りするほうも日程さえあえばたしかに便利なシステム、なのである。そんな見ず知らすのひとの車に相乗りなんて大丈夫なのだろうか、、、、とも思ったが、モニカを信じて一応出発の日を登録しておいた。待つこと一週間。出発日の前日に紹介所から連絡があり、ひとり私たちの方向に行く予定のひとがいる、とのこと。「だれもみつからなかったら一体どうするのかっ!」とずっと不満をいっていた私に、勝ち誇った笑みをうかべるモニカ。少々腹はたつがこれで無事合宿にたどり着けるわけだから、めでたしめでたし。のはずだった、、、、、。が、人生そうなかなかうまくはいかないものである。相乗りパートナーのビジネスマンのBMWに乗り込み、快適にアウトバーンをブっとばしているその途中、、、、「君たち、stuttgartで適当におろしていいんだったよね?」と突然ビジネスマン。えっ?私たちが行かなければいけないのは、そんな都会ではなくて、山のなかなのだ。合宿の住所を伝えると、「はぁ~?そんなところ通りもしないし、全然違うよ」とのお返事。何をどう間違ったのか、我々はまったく違うところへ向かっている車に相乗りしているのであった。話が違う!と紹介所にクレームのひとつでもつけたいところだが、かろうじて、「方向」だけはあっていたらしいから、ウソは言わなかった、とでもいわれてしまうのがオチだろう。それより、(どうしよう、、、、、。)焦る我々の想いを踏みにじるように、「じゃあ、次のインターンで降りて」と冷たく言い放つビジネスマン。(・・・・・)こうして我々は、まったく知らない土地のまったく知らないアウトバーンの出口に放り出されてしまったのである。7月は真夏、30度を越す暑さのなかのことであった。つづく
2008年07月03日
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