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この作り手の事は前にも書いたが所謂裾物のこのワインを飲んでやはり素晴らしさを再認識した。単なるブルゴーニュACだが味わいはぐっと詰まったマチエール溢れる少し重心の低い赤果実、それでいて伸びやかさが有る。複雑な構造すら有り、並の作り手の村名を遥かに超え、1級に匹敵する素晴らしさだ。有名ドメーヌにありがちな裾のシャバシャバさとは全く質が違う。これよりも薄っぺらでつまらないGCも多いだろう。 ブルゴーニュ表記だが畑はVRの国道の反対側、ここは粘土質で確かにのっぺりした詰まらない赤が多いがこのVRにNSGの高地の畑をアッサンブラージュ。このアッサンブラージュが絶妙なのだろう。ワインに複雑さを与えている。100%除梗(彼はRougetでStageしている)、このクラスでも25%新樽、18ヶ月樽熟と上位のキュベとほぼ同じ作り。個人的にはCathiardの確固とした構造、Rougetの妖艶さ、両方持つ素晴らしさがあるように思える。 下から上まで全て優れた作りが出来る数少ないドメーヌ。恐るべきなのはこの作り手が若干33歳という事だ。ドメーヌは先代の元でかなりをJadotとDrouhinに売却していたのだが2010年に彼が20歳で戻り、元詰めを開始。既に2013辺りから素晴らしいワインを作り出している。恐るべき早熟の天才としか言いようがない。伝説のCharles Noellatを伯父に持ち、Jayerとも血縁にあるサラブレッド。世代が変わり作りが雑になるドメーヌは結構多いがこのような逆はなかなか見受けられないが故に個人的には一押し(の一つ)。 もうすぐCathiardのように買えなくなってしまうのは致し方ないだろう。その前に少し買っておくか(自爆)。
2022/11/13
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今まで何杯のグラスを重ねたことだろう。一杯のグラスからワインが味われ咀嚼されそれが思い出に変わる。そして空になったグラスにまたワインが注がれその繰り返しだ。今のグラスを飲みながらその前にあったワインの記憶は朧げに昇華していく。それはあたかもサンサラのようだ。グラスといういう肉体にワインという心が注がれ時には高揚し、時には落胆し、怒り、諦め、色々な感情を生みながらサンサラは続いていく。サンサラ、それは輪廻というよりむしろ遊戯なのだろう。優雅で甘美な遊戯。一度、二度、いや何千回、何万回も繰り返された遊戯。これからも繰り返して行くのか。是という自分がいる。そして否という自分もいる。とりあえず遊戯を演じ続けよう。夕闇が来るか、自分の中で何かが壊れるまでは。ところでこのワインめっちゃ美味しかったんだけどね。
2023/10/28
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