先週、今週と週末にかけて昔良く参加していたメジャーどころのオークションに冷やかしながらちょっと札を入れて見た。私が最後に(真剣に)参加した3年前と比べてやはり値が上がりは半端でない。 Jayer は流石に値が落ち着いてきたもの(これは贋作が多数有るということにも依るだろう)、 DRC は堅調、そして何よりも Leroy の高騰ぶりは他ドメーヌと比べても一際立っていた。ほぼ全てのロットで予想最高額を2割程度越え、 Riche は4000の大台、リリース時にそれ程評価が高くなった一連の04も3年前より倍になっている。経済学で言う「 event study 」からすると近未来に起きる何かの event を予期して投機筋が仕手を始めたのだろう。一ロットの額も数年前は1000以下が殆どだったのに今は 5000 〜 10000 が多い。これでは市井のマニアは中々買えない。
閑話休題、ワインは単なる貨幣より優れているのはそれが社会的効用を持つ事だろう。ワインが単なる飲み物で有れば、その効用(経済学に於る)は主に飲んで楽しむ事により与えられる。ところが現代社会は SNSの
浸透が進み、誰もがマズローの第3欲求である帰属欲求を満たされ、その帰属するグループの中での尊敬欲求を追求するようになるとこういったワインをセラーに持つという事だけで十分効用が得られる。貯金通帳の額を自慢する馬鹿はいないだろうけど、こういったワインを持っている事を自慢する馬鹿は数多い(自分もそうなのだが)。即ち現代におけるマウンティングだ。
私も前にワインをセラーで熟成させる事は、そのセラーの中で熟成し、価値が上がっていくワインに見合うように自分も切磋琢磨し、それに見合った人間になろうとする力を与えてくれると書いた。だがこうやってトップドメーヌのワインが飲み物から尊厳欲求を満たす貨幣へ変質して行くに当たってこういった自負はもうあまり意味を持たない。
(この項更に続く)
Intermezzo 2022/09/04
雑感 2022/05/20
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