ブルゴーニュワイン通なら判ると思うが廃業ドメーヌには独特の Pathos が有る。廃業前にブレークした翁のようなところならまだしも良いが廃業後にブレークした Rene Engel や Grivelet もまだ救いがあるが、廃業してそのままブレークせずフェードアウトして歴史の闇に消えていく幾つかのドメーヌのワインを見る度に喜びと悲しみ、諦観、焦燥等が混じり合った感情が押し寄せてくる。特にそのドメーヌが秀逸であるにも拘らず知られていなかった場合、特にその感情は強い。所謂滅びの美学を感じるからだろう。
この作り手も秀逸なのだが最終的には知られず廃業していった。 Montrachet 直下の Batard 最上部に畑を持ちだれることない優れた Batard を作っていたのだが殆どが Louis Latour に売られていたため余りブレークはせず、米はともかく日本ではインポーターが付かなかったためスポット輸入しかなく極一部の人にしか知られずひっそりと廃業。 2008 年の頃だろうか。(因みに Batard は上部と下部で歴史的評価が違い、 1860 年の CAB の格付けでは上部は一級だが下部は二級格。下部は土が重く赤中心だったらしい。)
さて、このワインだがどうしてもパトスを感じてしまい、あまり客観的にワインを評価出来ない。が、 04 という白の好 VT に合って横に膨らむことは無く、スレンダーで果実の奥行きも有り中々素晴らしいワインだと思う。大輪の花ではなく、神経質なニュアンスもなく語りかけてくるようなバランスの取れた白果実だ。何よりも品が良い。
1 Pathos も終わる。このワインが無くなり、そのワインを作ったドメーヌも無くなり、このドメーヌの痕跡はゆっくりと世界から消えていく。そしてこのワインを友と開けた思い出になって昇華する。それがワインの楽しさの真髄なのであろう。
さてこのドメーヌの Batard 、最後の 1 本いつ開けようか。難しい問題だ。
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