サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2009.06.24
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カテゴリ: 文学
 実は、上のパラグラフの … の部分で、この「須磨」の絵がいかにすばらしく、あわれを誘うものであったか、言葉を費やして褒めちぎっているのですが、いかんせん、絵画の妙味を言葉で表現するのは、実在の絵でも至難の業であって、まして現実には存在しない光源氏の絵を、言葉によってそのすばらしさを想像せよと言われても、ちょっと無理なところがあるのです。フェアじゃないかもしれないので、原文だけ上げますと、

― みこ(師の宮)よりはじめたてまつりて、涙とゞめ給はず。その世に、「心苦し。悲し」と、おもほしし程よりも、おはしけむ有様、御心に思しし事ども、たゞいまのやうに見え、所のさま、おぼつかなき浦々・磯の、かくれなく書きあらはしたまへり。草の手に、仮名の、所々に書きまぜて、まほの、くはしき日記にはあらず、あはれなる歌などもまじれるたぐひ、ゆかし。誰も、異事おもほさず。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫()筆者)

 これとは関係ない話ですが、三島由紀夫でしたか、文学について「セックスとかスポーツの言語による描写は、結局想像力の模倣なので、本質的に意味がない」というようなことを、言っていたような記憶がありますが、確かなことは思い出せません。

 ということで、言葉による表現とは何か、というようなことを考えてしまいます。ベートーヴェンのピアノ・ソナタとか、ピカソの抽象画とか、いくら言葉で表現したって、実物がことごとく再現されるわけではありません。絵画は視覚からのアプローチで、音楽は聴覚からのアプローチで、人の想像力を揺さぶるのであって、言葉による音楽の表現とか、絵画の表現というのは論理的に矛盾しているのです。あたりまえですが、言葉で音楽を聴き、絵を観ることはできないでしょう。
 「チャングムの誓い」の宮廷料理の競い合いが、なぜ面白かったかといえば、料理番組の中継のような演出だったからでした。という意味で、このドラマはすぐれてテレビ・ビデオ向けの表現をしているので、同じ料理が映画のようなフィルム映像で表現された場合、その面白味は半減したでしょう。このあたり、テレビと映画の表現形式の違いが、同じ映像表現であっても、何となくほの見えるのですが、ここでは別の話ですね。

 では言葉とは、何によって人の想像力を揺さぶるのか、ということになるのですが、ちょっと難しい話になりますが、文字通り「言の葉」⇒「コトの端」を表現する力だと思うのです。コトの端をかすめるように言葉が存在する、つまり出来事の移り行きの端っこを、わずかにかろうじて書き記すのが、言葉の本来の字義であって、対するにモノを表現しようとするとき、言葉は常に対象のモノそのものには負けるのではないか。百聞は一見にしかず、という言い方がありますが、その意味するところは結構深いのかもしれませんね。
 であるとするなら、コトとは何かということになるのですが、それはモノと対置すればあるいはヒントが見えてくるかもしれません。結論から言うと、コトとは時間のことではないか、時の経過を表わす表現なのではないか、と何となく私は感じているのですが、皆さんはどう思われます?
 まあしかし、これは「源氏物語」を読んでいて、何となく全編を通して流れているテーマだ、という気もしているので、この話もまたいったん棚上げです。

 さて、源氏と藤壺の女院にとって大成功だった絵合の催しですが、これはたんに前斎宮が冷泉帝の寵愛を勝ち取るというだけでなく、もっと大きな意味合いを持っていました。ひと言でいえば、光源氏が前斎宮の後見人であることを、「須磨」の絵を斎宮側(梅壺)から出すことによって、公けにもハッキリさせたということで、これは弘徽殿の女御擁する左大臣一族に対する勝負に出て、しかも勝った、ということを意味するのです。

― つづく ―





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Last updated  2009.06.24 08:20:20
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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