サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.02.02
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 前の帖のおわりに、内大臣が玉鬘のうわさに刺激されて、自身の行方不明の姫君を思い出しもし、何としても見つけたいと思う。ところが、その夏にはすでに新たな姫君を探し出して来たらしい、といううわさがすでに源氏の耳にも入っていて、彼としてはいわばウラを取るために聞いたのでしょう。内大臣の娘はここに預かっているではないか、ということなのですが。
 聞かれた内大臣家の次男、弁の少将は本来、源氏方の新姫の様子を探りに来たのですが、そこはまだ子供で、ベラベラしゃべってしまうのです。

― 「ことごとしく、さまでも言ひなすべきことにも侍らざりけるを。この春の頃ほひ、夢語りし給ひけるを、ほの聞きつたへ侍りける女の、「我なむ、かこつべき事ある」と、名のり出で侍りけるを。中将の朝臣なん、聞きつけて、「まことに、さやうに触ればひぬべきしるしやある」と、たづねとぶらひ侍りける。委(くは)しきさまは、え知り侍らず。げに、この頃、めづらしき世語りになむ、人々もし侍るなる。かやうの事こそ、人のため、おのづから、家損(けそむ)なるわざに侍りけれ」 ― (山岸徳平校注、岩波文庫()筆者)

 「ことごとしく、そのように触れ回るほどのことではございません。この春の頃合いに、(内大臣が)夢占いなさったのを、何やら伝え聞いた女が、『私こそ、申し上げるべき仔細がございます』と、名乗り出て参りまして。(兄の)中将の朝臣(柏木)が、聞きつけて、『ほんとうに、そのように触れ回るような証拠はあるのか』と、尋ねてまいったのです。詳しいことは、(私は)存じ上げません。まことに、今どき、珍しいうわさの種と、世間でもしております。こういう事こそ、父上にとっては、何かと、(ひいては)家の不面目にもなることでございますのに」

 弁の少将は、この話が何となく内大臣家にとって、みっともない話であることが、その後の家中の様子で分かっている。しかしその原因は自分でないことを強調するために、「中将の朝臣なん、…」とやったので、光源氏には内大臣家の雰囲気が手に取るように分かる、という仕儀に相成ります。

― 「まことなりけり」と、おぼして、
 「いと、おほかめる列に離れたらむ、おくるゝ雁を、しひて尋ね給ふが、ふくつけきぞかし。こゝにこそ、いと、ともしきに、さやうならむ、物のくさはひ、見出でまほしけれど、「名のりも、物憂き際」とや思ふらん、更にこそ聞えね。さても、もて離れたることにはあらじ。らうがはしく、とかく紛れ給ふめりし程に、底清く澄まぬ水にやどる月は、曇りなきやう、いかでかあらむ」
と、ほゝ笑みて、のたまふ。中将の君も、くはしく聞き給ふことなれば、えしもまめ立たず。少将と藤の侍従とは、「いとからし」と思ひたり。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)

 「やはりそうであったか」と、(殿は)お思いになって、
 「(内大臣殿は)たいそう、(お子たちが)多いのに(その群に)、遅れた雁までも、あえて探し出しなさるのが、欲深というものさ。こちらこそ、まったく、(子供といえば)覚束なくて、そのような、縁のあるものを、見つけ出したいものだが、(なにせ)『名乗り出るにも、値しない相手』とでも思うのであろう、いっこうに(誰も)知らせてこないよ。とはいえ、(その新姫の話は)まるきり根も葉もないことではないでしょう。騒々しく、何かと(女性方と)立ち混じっておられた(若い)頃に、素性の知れない女に宿した子供というのが、まともである、わけがないからね」
と、ニッコリして、おっしゃる。中将の君(夕霧)も、(そのあたりのことは)詳しくお聞きになっているのだが、つゆ知らぬ顔をしていた。少将と藤の侍従とは、「何とも辛い(恥ずかしい)」と思っている。

 手練の源氏にかかれば、若者たちは手もなく誘導され、からかわれる。夕霧だけは、そのあたりの父の気性を知っていて、空とぼけているのです。最後に源氏は内大臣に聞えるように、若者たちに次のように言い放ちます。

― つづく ―





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Last updated  2010.02.02 11:29:18
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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