サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.03.01
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 話が本筋から逸れて、例によって小難しくなっていますが、もう少し突っ込んで言ってしまうと、この「書いてある言葉と、それを読む人とのあいだの関係性」というのは、さらに「作者 ― 作品 ― 読み手の関係」に分けることもでき、この関係とはどんなものなのだろう、と思ってしまいます。早い話、この三者の中で、どれかが何らかの実体であると、指し示すことはできるのでしょうか?まあ実体の定義によって、変わってくるんじゃないの?という話になりそうですが、ここは文学の話でするとややこしいので、一つの思考実験として、次のような例を考えてみたいのです。

― 音楽の実体というのは、作曲者にあるのか、作品にあるのか、演奏者にあるのか、聴き手にあるのか? ―

と、いうふうに考えたとき、物ごとの実体というのは、たちまち不分明になって来るでしょう。音楽の実体が作曲者にあるかと言えば、それが譜面に記されていなければ誰も感じ取ることは出来ないし、譜面があっても大半の人はそれを見て音楽を感じることは出来ないでしょう。かといって演奏者が音楽を奏でたとしても、聴く耳を誰も持たなかったら、はたしてそこに音楽があると言えるのか?聞くに堪えない音楽とは、むしろ雑音に分類されるべきものでしょう。
 で、そのあたりは皆さんも経験的によくご存知のとおり、ときどきの気分によって音楽は心地よかったり、ヘンにイライラさせるばかりであったり、まことに不安定に移ろい行くものであって、ついに実体などというものが、我が身がたまたま関与しているこの世とは無関係に、独立して存在しているなどとは、誰も思わない。

 もし、こうしたものに、何か存在を認めるとするならば、結局、

― 音楽というのは、作曲家と譜面と演奏者と聴き手のあいだの関係性でのみ、存在している ―

と、いうことなのではないか?
 で、実際に音楽を聴いて、何か真実を感じるとすれば(確かに感じるときがあるのです)、それはお互いが幸福な作用をし合ったとき、ちょっと今どきの物理学の用語をシャレて使えば、互いの「相互作用」のみが実体で、それぞれが別個に独立して存在しているわけではない、と言い得るのではないか、ということなのです。

 これはあるいは、文学についても同じことが言えるのかもしれず、「作者 ― 作品 ― 読み手」の関係というのは、互いの「幸福な相互作用」が生じた時にのみ、作品として立ち上がってくるので、「それぞれが別個に独立して存在しているわけではない」。互いの「相互作用」のみが作品を作品たらしめているので、「野分」の帖のここのくだりは、「源氏物語」の用語が話し言葉に近いぶん、このあたりの関係性をよく考えさせてくれるのです。
 書き記された言葉こそ唯一絶対の真実であって、したがって何もかも(美女の顔も、セックスの態様も)、描き切れると信じた十九世紀近代リアリズムに基づいた近代文学が、二十世紀以降完全に行き詰って、立ち尽くしているように見えるのと、これは対照的に見える。こうした関係性における文学的あるいは芸術的享受というのは、じつは日本では「源氏物語」だけでなく、ずうっと一つの伝統として理解されていたかに思われ、例えば「連歌」だの「茶の湯」だの、この関係性による相互作用をおいて他に何か、これを成り立たせている実体というのはあるのでしょうか?

 何だかますます、本筋から離れて行ってしまいそうです。さて、では唐突に記された「 … 、そこはかとなく涙の落つるを、おし拭ひかくして、 … 」から、どのような相互作用を観測できるか、以下、箇条書きにして述べなさい!?

― つづく ―





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Last updated  2010.03.01 14:04:58
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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