サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.05.22
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 今回なぜか冷泉帝が、ずいぶん熱心なのです。ひとつにはここまでこの「求婚譚」で、帝はたいした出番がなかったこともあるのでしょうが、最後に持って来たのには、やはり「竹取物語」の終りを意識するところがあったのでしょう。

 しかし、玉鬘としては、こうしていつまでも、寄ってたかって来る男=オスたちの振るまいというのには、ホトホト嫌気がさしているので、華やかな御所まわりの様子もいっぺんに色あせて見えたことでしょう。前にも言いましたが、彼女には不思議と男=オスを惹きつける強いフェロモンがあるようです。
 それにしても相手は現帝じゃないか、それに愛想をつかすとは何事!という声も出てくるかもしれませんが、そこはそれ、彼女はすでに光源氏という、稀代なる殿方の立ち居振るまいというものを、六条院でつぶさに見ているわけで、帝といえども源氏の殿には敵わないのです。ここには裏に、それほど光源氏は現(うつつ)とは隔絶したスゴイ男だった、という紫式部のニュアンスが込められていますね。

― 大将は、かく、わたらせ給へるを聞き給ひて、いとゞ、静心なければ、いそぎまどはし給ふ。身づからも、「にげなきことも、出で来ぬべき身なりけり」と、心憂きに、えのどめ給はず、まかでさせ給ふべきさま、つきづきしきことづけども、作り出でて、父おとゞなど、かしこくたばかり給ひてなむ、御いとま許され給ひける。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)

 (髭黒の)大将は、このように、(帝が、玉鬘の局を)訪れなさったとお聞きになって、とてもじゃないが、平静ではおれず、さかんに(退出を)急き立てなさる。(玉鬘)自身も、「(このままでは)ややこしいことも、起こりかねない我が身の上だから」と、(すっかり)情けなくなって、落ち着なさっても居られず、ご退出なさる旨、しかるべき口実などを、取り繕い、(さらには裏で)父内大臣なども、うまく謀られたので、お暇を(やっと)許されなさった。

 このあたり、髭黒は今やタッグを組んでいる義父の内大臣に、裏で手を回したみたいですね。しかしその後の段取りというのは、

― 「やがて、今宵、かの殿に」と、おぼし設けたるを、かねては、ゆるされあるまじきにより、もらしきこえ給はで、
「にはかに、いと、乱り風の悩ましきを、心やすき所にうち休み侍む程、よそよそにては、いと、おぼつかなく侍らむを」
と、おいらかに申しない給ひて、やがて、わたしたてまつり給ふ。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)

 「このまま、今夜、あの(私の)邸に」と、(髭黒は、はじめから)心づもりなさっていたが、前もって(源氏の殿に、申上げたので)は、お許しになるわけもないので、
 「急に、たいそう、きつい風邪をひいてしんどいので、気安い所で休もうと思うのですが、(その間)別々なのは、何とも、心配ですので(玉鬘と一緒に、引き上げることにします)」
と、穏便にお断りなさって、そのまま、(玉鬘を自邸に)お連れになった。

 これは完全に髭黒の独断専行で、彼はなかなか策略も巡らせることが出来る人なのです。

― つづく ―





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Last updated  2010.05.22 10:16:37
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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