サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.08.12
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カテゴリ: クラシック
 このR・シュトラウスが晩年に生み出した壮麗な音楽というのは、ドイツ敗戦後の寂寥感とすでにとっくに終わっていたはずの後期ロマン派音楽の真髄を余すところなく伝えていて、何度聴いても歌い手冥利に尽きるであろう素晴らしいイントロだと思うのですが、逆によほど自信のある歌手でないとオーケストラの響きに負けてしまう。ヤノヴィッツはカラヤンお気に入りのソプラノで、声の質からいってもベルリンフィル(ということは当時のカラヤン好み)の音によく溶け合って、奇跡のような響きを奏でていますね。

 さてカラヤンだのバーブラだのバーンスタインだの、考えてみると私は当時のメジャーの指揮者だのミュージシャンに、ずいぶん簡単に同化していたのが分かります。これは例えばその当時読んでいた本が、学生時代の小難しい大江健三郎だの吉本隆明だのから、舌触りのよい司馬遼太郎や養老孟司さんに傾斜して行ったのと期を一にしていて、娑婆に出るとどうしてもさしあたって分かるもの、腑に落ちるものを生理的に必要とするようです。
 今回、昔の私の音楽のお気に入りをSurfしていて、あらためて気づいたのですが、バーンスタインやバーブラ(私の心内では、親愛を込めてLennyやBabie)は、優れてかつてのアメリカ文明の間口の広さというか、懐深さを感じさせてくれて、私までの世代はまだまだそのころのアメリカ的なるものに、ヴェトナム戦争をあれだけボロクソにくさしながらも、畏敬を込めた親近感があったのです。今やそのアメリカからは、そうした魅力的な文化の発信源という色合いはすっかり失せてしまって、私の脳裏から消え去ろうとしています。今どきのアメリカ映画で、観る気がするのはC・イーストウッドだけになってしまいました。ヤッパリ年を取ったのですかね。

 それにしてもNetをShrfしていると、とくに音楽の場合、題名はすっかり忘れているのに、メロディラインとか歌なら歌詞の一部だけが、何となく記憶に残っていて、なかば焦燥感に駆られて際限なくShrfを繰り返す、というハメになってしまいます。で、たいていそうした記憶というのは、何がなし甘酸っぱいニオイを伴なっているもので、音楽というのは意識化された散文的なコトバの奥に潜む、自身の原風景を垣間見させる特徴があるようです。
 それは脳髄のどこかにしまってあった無意識の記憶というよりは、身体自身にアカのようにこびりついていた記憶を、じかに呼び起こすようなところがあって、その時私は何をしていたとか、何を感じていたとか、何を見ていたとか、(コトバや映像でハッキリとは)定かに呼び起こすことはできないにしても、かつて確かに自身が体験した事柄の、ある種夢にも似た不思議な実在感といったものなのです。

 しかし肝心なのは、それらはすべて今現在の自分に起こっている事柄であって、過去の自分が正確にすべて再現されるなどということは、もちろんあるわけがない。過去の自分の事柄として、こうした感覚を整理し配列したがるのは、どうやら脳の仕業であるようで、正確にはこれらはすべて今現在の私に起こっている事象でしょう。三十年前の細胞がこの身体のどこにもその痕跡さえ残していない(少なくとも分子レベルでは)のと同様に、過去の事象というのは常に一回限りで、二度と同じことが再現されることはないのです。

 さて、この種の余興もいいかげんにしておかないと、ダメ出しの可能性大なので、今回でおしまいとしたいのですが、最後に目下進行中の「源氏物語」のマイテーマをあげてみたいと思います(まあ遊びですよ)。作品を読みながらも、脳底に流れているこの物語にふさわしい音楽は何だろう?と思ったとき、この前半部までの帖で浮んでくるのは、ブルックナーの「 交響曲第七番 」の冒頭のテーマですね。
 あちこちShrfしていたら、たぶんカラヤン/ベルリンフィルだと思うのですが、それがあったので、思わず聴き入ってしまいました。ここの第一主題のゆったりとしてゴージャスで、なおかつ哀感をおびた感じというのは、私などまことに単純にピッタリだな、と悦にいっていたものです。

 さてこそ、「若菜」以降は?、「宇治十帖」は?という話になってきますが、まあそれは先の話。

余興 ― おわり ―





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Last updated  2010.08.12 13:58:36
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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