サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.08.19
XML
 はなはだ暑い最中で、しかもこのブログの主旨とは反するのですが、しばらく相当重い話をしようと思っています。
 それというのも、例年八月になると八月六日の広島原爆投下から八月十五日の敗戦受諾の前後まで、いわゆる戦争報道が新聞でもテレビでも繰り返し流されるのですが、いったいこれは何を目的として報道されているのだろう?ということなのです。
 基本的なスタンスは戦争の記憶とその悲惨さを強調し、かつその前提で平和を希求するというトーンで固められているのですが、敗戦後六十五年も経つとその種の報道のタネもさすがに尽きかけたか、かつての白黒フィルムを擬似カラーにしてみたり、「市民たちの戦争」と称して、かつての従軍経験者やここ最近では戦争の周辺にいた人まで、とにかく戦争の時代を生きた直接経験者の声を当事者が亡くならないうちに記録しておこう、という方向に傾いているようです(主としてNHKの報道内容を見て、言っています)。
 それはそれで、無益とはもちろん思いませんが、グローバルに戦争というものを人間の歴史という文脈の中で考えた場合、こうしたアーカイヴの集積というのが、どれほど戦争そのものの抑止につながっていくのかどうか?

 こうしたドキュメントが戦争抑止の力を保持しているのかどうか、ということは(少なくとも日本では)敗戦後六十五年間毎年繰り返されながら、そのかん世界中で戦争がなかった時代はなく、むしろ米ソ冷戦が終わって以降のこの二十年間のほうが核拡散の危険が増しているという事実を見ていると、それの生み出す悲惨さや不条理を指摘するだけでは、戦争行為というものは永久になくならない、ということを意味しているのではないか?とさえ思えてくるのです。
 では私たちが普段イメージしている戦争という概念には、何がしかの瑕疵(かし、きず・欠点・見落とし)があるのではないか?というのが、今回の話です。

 これにかんして、何時だったか忘れましたが、かつてよく言われたことで、日本における戦争報道というか戦争ドキュメントさらにはその種の映画などというのは、得てして事柄を被害者の視点で語ろうとするバイアスが強くかかっていることが多い。で、最近はその反動というか、それでは不十分と見たか、今度は逆に加害者としての立場から戦争を語ろうとする報道もチラホラ見かけます。
 前者に対する異議申し立ては、主としてかつての左翼系の識者ないしマスコミからなされて、かつての日本陸軍の大陸や半島などにおける暴虐行動を執拗に流し、それが結果的に相手国の対日政策に反映して、今に到っているのは記憶に新しいところです。当然のことですが、それに対するごくプリミティヴな反発として、保守系ないしネット右翼のような勢力が、旧軍と大東亜戦争の行為を正当化しようとしてくるのは当然の成りゆきでした。
 さすがにここ最近はこうした両方の論議に不毛な感じを抱いたか、あからさまな主張は下火になっている気もしますが、基本的な話は何一つ収まっていないというか、たぶんまだ何も始まってさえいない、という気がするのです。

 このレベルで戦争を論じたり報道しているかぎり、いくらかつて悲惨な戦争体験があったとはいえ、早い話、近場の領有権(竹島だの尖閣列島だの)の話などがこじれた場合、「国土を守るため」という大義名分の前では、大半の国民意識というのはそれが凄惨な事態を招くということが分かっていても、武力の行使にかんして反対することは容易ではないだろうし、逆にそれに反対するには、たとえ「国賊」呼ばわりされても、それに耐える相当な胆力が予想されるのです。
 ここでの論議では、たぶんかつての戦争体験の悲惨さを伝えるアーカイヴというのはほとんど無力で、自国の利益とか権利の侵犯といった事態の前では、こうしたレベルの戦争報道というのは簡単に吹き飛ばされてしまう。つまり今まで反戦平和を呼号していた人たちが、いきなり国防軍に入って銃をとるという想定は、その人の内心の論理ではたぶん何ら矛盾が生じないだろう、ということなのです。かつて、愛国防衛を呼号していた人たちが、敗戦後平和主義に転じたことに、何ら矛盾を感じなかったように。

― つづく ―





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2010.08.19 11:49:37
コメント(0) | コメントを書く
[政治、経済、社会、歴史] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Calendar

Archives

2026.05
2026.04
2026.03
2026.02
2026.01

Profile

TNサリエリ

TNサリエリ

Comments

TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

Favorite Blog

まだ登録されていません

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: