サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.08.22
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 あまりにも自明な事柄なので、一見誰もそれに対しては反論も論駁も出来そうにない。しかしそれも少し見方を変えて考えてみば、決して明々白々な論理であるということは出来なくなってくるのです。
 簡単にいえば、これが個人間の争いごとの場合、上の命題「あなたの両親が(妻が、子供が)、他人に殺された。あなたはそれを黙って見ているのか?」というのが成り立つのか?と問い返せば、少なくとも今の日本ではそれは出来ない、もしそれを許せば日本は法治国家でなくなってしまう、ということになってしまいます。つまり国家機関は個人間(ないし自国に所属する法人間)の争いごとにかんしては、いつでも(場合によっては、武力でもって)介入できるのです。
 もしここで国家機関が法のもとに介入しなければ、私怨は仇討ち(復讐)によって晴らさざるを得ず、もし仇討ち(復讐)を認めるならば、その国家というのは外部から見れば、すでに無政府状態と見なさざるを得ない。という意味で、上の命題の立てかたには、巧妙な陥穽(かんせい、落とし穴)があると思っていいでしょう。

 (話はちょっと逸れるのですが、そういう意味でも、ここのところ裁判員裁判などの論議で、被害者及び被害者家族の気持を忖度する論調が、あたりまえのようになされることがあるのですが、国家機関がその管理下の国民個人間の争いごとに介入するとき、国家は個人の私怨をたんに代行する組織ではないという論点が、どうもこれらの論議からは抜けているような気がするのです。ことと次第によっては、被害者及びその家族を説得し納得してもらわねばならない場合もあり得る、というのが法治国家における機関への「付託」という意味ではないのか?事件というものが、すべて被害者の視点で裁かれる場合、国家はその統治機関としての機能を、一部放棄していると言えないこともない。
 というわけで、私は今現在のような安易な論議のままの裁判員制度の導入には反対です。
 対するに一部キリスト教者のような団体から、ときに死刑廃絶の論議が起きますが、これらは実際の犯罪事例を事細かに並べられてはいかにも分が悪い。大多数が非キリスト者である日本では、こうしたレベルでの論議は一歩も進展しないでしょう。要はなぜ国民は犯罪取締り、その他争いごとの解決を国家機関に付託しているのか?なぜ近代の国家機関は仇討ちを禁止するのか(江戸時代は公認でしたね)?というところから、話を始める必要があると思うのですが、これもまた長くなるうえに別の話ですね)

 さて、巧妙な法治国家という理性主義の外側には、ごくプリミティヴな生き物の態様と酷似した(人智の及ばぬ)世界が取り巻いているわけで、どれだけ洗練された相貌を装った国家であろうと、その外部への振るまいかたには、ごく本能的な(つまり理性とは懸け離れた)生き物の振るまいを、厳密になぞっているように見えるところがある。
 「国防」という言葉は、身内ないし我が身への侵犯に対する自己防衛というアナロジーで置き換えれば、きわめて分かりやすいというか、子供でも分かる議論の余地のない自明の理屈に見えます。「人から殴られたら、何で殴り返したらアカンの?」という質問に対して、子供に本当に納得できるように説明するのは、誰しも難しいでしょう。この答えのヒントは、先ほどの復讐を公認するかしないか、した場合にどんな社会を出来するか?の話に結びつきそうなのですが、ここではしません。
 ここ最近テレビバラエティーなどで、頓に盛んな国防論議というのは、どうもこのあたりの陥穽をすっとばして、「国を自分で守るのはあたりまえ」という、議論の余地なしの前提から話を始めているのを忘れてはいけません。

 ところで、私はこうした国防論議をするコメンテイターとか、軍事評論家とか、はては国会議員まで含めて、事柄が軍事や戦略や地政学の話になると、まるで子供のように熱中している姿というのが、とても気になっているのです。彼らをそこまで熱中させる要因とは何なのか?

― つづく ―





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Last updated  2010.08.22 14:19:49
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
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