サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.09.29
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 本論にそろそろと近づいて行きたいのですが、なかなか戻れそうにありません。そもそもこんな話を始めた理由というのが、今夏の異常な暑熱で私の頭が少しトチ狂ったか、例年夏場に繰り返される戦争報道を見ていて、ある妙な想念が頭をよぎったからです。その話は一番最後にするとして、戦争体験のない私が、自身の内部に戦争に近似した心の痕跡を探しながら話するというのはなかなか難儀で、他所事のように軽々に話するというのは、やはり実体験をした人たちに対して失礼という感覚もあって、話を続けようという気分がしょっちゅう滞ります。

 これは例えば「阪神大震災」を経験した人たちから、「震度7という揺れというのは、こればかりは実際に遭遇してみなければ、絶対分からない」と言われれば(実際、今でも言われます)、他の人は口を閉ざすほかないのといっしょで、もちろん「共感」などという浅はかな言葉は使いたくありません。これはたぶん拉致問題とか沖縄普天間問題などにも共通するところがあって、軽々しく「分かる」だの「共感する」だの第三者が言うのは、当事者から見れば「いい加減にして!」と怒鳴られるのがオチでしょう。
 かといって、それらにコミットするのを止めるのは、いちばん悪い選択であろうし、この当事者との間の距離感のバランスというのは、なかなか難しいのです。「そんなことガタガタ考えずに、さっさと行動しろ!」とは、こうした議論の中で必ず出てくる、主として運動家たちからの罵声ですが、これは「当事者たちとの完全な共感など最初から不可能なんだから、当事者の言い分に黙って従え!」と威迫されているのと同じことで、そういうコミットの仕方であれば、たぶんお互いにもっと不幸な関係になるでしょう。私は出来れば相応の立場に立ちたいのです。相応の立場とは、互いが当事者であらんとする関係を言います。

 で、それは戦争体験者との関係においても同じなので、戦争未体験者の立場で戦争体験者と同じ地平で、成し得るならば話をしたい。実体験を共有するのはもちろんムリとしても、「それでも戦争を選んだ」日本人の心の蠢動にまでさかのぼれば、あるいは通底するマインドが現れてくるのではないか?というのが、密かな願いでもあります。
 というわけで、今のところ戦争体験者の本を、さまざま読み耽るという仕儀になっているのですが、それにしても山本七平さんの一連の戦争記録には驚いてしまいました。私はこれまでにも戦争ものの本は、かなり読んだり見たりしているほうだと思っていたのですが、「日本人とユダヤ人」以来、文明論の語り手として位置づけていたこの人というのが、恐るべき戦争実体験者だったのだということに、今ごろになって気付かされたわけです。
 それはお前の怠慢だと言われればそれまでですが、この人の「私の中の日本軍」だの「一下級将校の見た帝国陸軍」だの、あらましの中味を知らなかったわけではないのです。しかしこれまで読んだはずなのに記憶にないということは、要は私が何がなし個人的な必要で、これらをまともに読み通していなかったということでしょう。これと「ある異常体験者の偏見」などをあわせると、この人の一連の直接的な戦争体験が語られていることに気付かされる。

 市井のきわめて論争的な文明批評家という感じだった山本氏ですが、以前はあるいはそちらの印象が強くて、途中で読むのを止めたのかもしれません。例の「私の中の日本軍」で繰り広げられる「百人斬り競争」記事批判は、執拗で相手(朝日新聞、本田勝一氏)を完膚なきまでに論駁しようとする姿勢は、正直読む者を疲れさせます(別に論説の中味を批判しているわけではありません。若い私には読み通すのがしんどかった、ということです)。
 しかし今回全編を読み返してみて、当時一流とされたジャーナリズムとジャーナリストに対するこの執拗な批判は、ひょっとすると自身の惨烈な戦争体験を、最後まで語り尽くすための推進剤に過ぎなかったのではないか、という気がして来ます。このように強固な怒りのエネルギーが持続しなければ、とてもじゃないが書き続けることは出来なかったろう、そう思わせる内容になっているのです。

― つづく ―





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Last updated  2010.09.29 14:27:38
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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