サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.10.22
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 少なくとも第二次大戦時までは、兵役に選抜された大多数のアメリカの若者とその家族は、それを名誉と感じ、本人は「男をあげる」チャンスと捉えていたでしょう。なぜなら国軍の兵士であることは、取りも直さず自分が真正のアメリカ人であることの証明に他ならないからです。アメリカのように多分に理念的な建国精神によって成り立っている国家では、絶えず自身がアメリカ的であることを我が身にも周囲にも示していく必要というか、なかば強迫観念のようなものが在るのではないか?
 さらには戦争というのは、アメリカという国柄をもっともじかに感じ取り、それと関わり得るめったとないチャンスであって、たとえ死の危険が伴なっていようと、それと等価交換できる以上の価値がある、と考える。否、参加しないと後々社会的に不利なポジションに追いやられるかもしれない、というところがあったのではないか?と思うのです。
 言うまでもなく、アメリカというのは移民国家であって、アメリカで生まれたからといって、自動的に真正のアメリカ人として認知されるわけではない。絶えずアメリカ人であることを証明し続けねばならないのです。これは日本生まれの日本人が、我が身が日本人であることを所与のものとして、生まれてこの方、ここから先も疑わないのと著しい対照をなしているでしょう。

 しかし移民国家と言えば、オーストラリアもブラジルもそうじゃないか、と言われそうですが、これらは本国との宗主関係が保たれていて、アメリカのように宗主のイギリスと戦争して自ら勝ち取った、という歴史を持つ国柄ではない。という意味で、今のフランスが、革命によって絶対王政のくびきを断ち切ったように、近代国家というのは多かれ少なかれ、国民が国家とじかに触れ得た(と思った)感触を経ていないと、そのいわゆる「国民意識」には不分明なところが残るのではないか?と思うのです。
 明治の日本はその意味で何度も言いますが、国民が新しい国家形成に立ち会ったという感触とはほど遠く、施政者階級同士の権力闘争の色合いという印象が、全体的な国民の意識レベルでは強かったのではないか?で、それを統べる側の国民を見つめる眼差しもまた、信任を与えるにはあまりにも未熟、不安定に過ぎる、平たくいえば「上から目線」で号令を発しざるを得なかった、ということでしょう。これは取りも直さず、江戸時代の武士階級(施政者)とその他大勢(被支配者)という構図を、看板だけすげ替えて、マインド的にはそのまま引き継いだ結果になっているわけで、言うなれば「藩の領民が、天皇の臣民」に移行しただけ、という見かたも出来るのです。

 伊藤は憲法草案を練るとき、決してロマンティックな国民国家の形成を夢見ていたわけではないので、西欧列強のアジア浸潤というきわめてリアルな政治状況と、明治政府の根幹的な脆弱性、そして国民の民度を見究めて、ごく冷徹にプロイセン型の立憲君主国家像を選んだのでしょう。
 これはしかし徳川三百年に培われ、きわめて洗練された領民意識をもった国民(臣民)を、無理なく引き継いだわけで、ときに農民一揆や打ちこわしなどの暴動があったとはいえ、例えば大陸のように農民が土地を捨てて大量に流民化し、それを統率する親分が新しい国家を形成する(易姓革命)というような、根底的な不安定要因にはならなかったのです(つまり薩長は、敵対する幕府政権と他藩の施政者階級だけを注意して置けばよく、その領民の動向は気にしないで済んだ)。これはたぶん、新しい国軍の形成にあたって、徴集した兵士を指揮する士官たちのマインドにも影響があったでしょう。
 日本の臣民は内心に消極的な気分を秘めていても、施政者に対してはきわめて従順、仮に暗愚な施政者であっても、むしろそれを盛り立てるべく振るまうように教育されている(ひょっとすると、今の企業などでも)、まことに徳川三百年の歴史は、半端でなく堅牢なシステムを形成していたのです。

― つづく ―





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Last updated  2010.10.22 15:42:39
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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