サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.12.07
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 今回は、「歴史」というよりも「事件」といったほうが、分かりやすいかもしれません。つまり、一連の「尖閣問題」から、なぜ「フジタ社員拘束事件」だけが閑却されて、政権批判その他が為されているのか?批判の論拠となっている「中国人船長の解放」も「ビデオ漏洩事件」も、「フジタ社員開放」の事実とセットになって、はじめて真相に近づくことが出来るはずなのです。
 これは確定してしまった事実にかんして、日本人というのは「なぜそれが起こったか」という詮索を、「起こり得た事実」と合わせて分析してみるということを、あまりしない性向があるからでしょう。これはかつて「科学的歴史主義」とも言われたマルクス主義的歴史観もまた、あるいはこうした歴史や事件を語るときの思考態度に影響しているのかもしれません。しかしそれは物事の原因結果の厳密な分析とか、真相を解明するという思考態度においては、あまり生産的な結果をもたらさないのではないか?とも思うのです。

 最近ようやくさかんになってきた「失敗学」というのは、事故原因やパニックの発生原因の分析にあたって、いわば「あり得た事実」の考え得るかぎり、そのすべてを想定網羅することによって、真の発生原因の解明に迫ろうとする、そういう学問的態度だと思うのです。その結果として、例えば航空機事故では、それまで得てして「機長の判断ミス」とか「操縦ミス」といった、直接的な「ヒューマン・ファクター」に帰せられることの多かった事故原因が、例えば運行管理体制とか、計器類のデザインとか、機械と人間の間に生じる認識の相違といったレベルまで次元を上げることによって、より幅広く「失敗の回避」に結びつけ得るノウハウを手に入れたのでした。
 応用例としては原発の操作ミスの防止とか、病院の院内感染対策とか、あるいは家庭内事故の未然防止といったものにまで、広がりを持つものだと思うのですが、今回の事例を見る限り、まだまだそうした思考態度というのが世に受け入れられたとは言い難いのです。

 むしろ逆行的な思考に退化して行っているのではないか?という危惧さえ抱かせます。大半の人々は「失敗学」など、理工系の問題だろうという程度にしか考えていないので、そうではなくて、これは思考のレベルあるいは思考態度の問題だ、という捉えかたが必要なのだと思う。
 二項対立的な思考態度では、「あの時、機長があの操作を忘れたから、こうなった」と、すべては機長の人的要素に原因が帰せられる。しかしそこで追求が止まって、「一丁上がり」となれば、同じような事故はまた発生する。そこで「なぜそのとき機長は、どうやってその操作を忘れたのか?」という問いの立てかたをしない限り、同じ失敗は何度でも繰り返されるのです。旧日本軍はよく指摘されるように、相手米軍側が不思議に思うくらい、同じ失敗を繰り返して壊滅した集団でした。
 二項対立的な思考態度では、それ以外の戦術とか対応が思い浮かばないのです。物事が分かりやすく整序された図式で語られるとき、たいてい人はこの失敗の罠にはまっていると考えたほうが良い。この思考を積み上げていけば、いずれこの対立している二項のうちのどちらかを、完全に消去せざるを得なくなるからです(現に、それを望んでいる人もおられるようです)。

 「隣のピアノの音がうるさい」と言って、異を立てる。あるいは「先生がなってないから、子供がおかしくなった」などと、物事を何でも対立図式でしか考えることの出来ない人たちは、いずれ相手方を完全にポア(消去)するか、我が身をパニックルームのような部屋に追い込んで、引きこもるしかない。今どきの世の困ったことは、そうした引きこもり集団が、ネット空間において仮想の連帯感を保持し得る、とかん違いしているという事実です(例の海保職員にも、私はその傾向を認めます)。

 今回の事例に添って言うなら、あのまま「中国人船長の裁判」を国内法に則って、粛々と施行した場合、当然拘束された「フジタ社員」の裁判も、おそらく公開で行われただろうし、その過程で「中国における旧日本軍の毒ガス実験と生産」の実態に触れる場面も当然出てきただろう。そしてこの事件に関しては、「南京事件」のようには日本側が異議を挟みにくい要素が多分にある(要は、これは紛れもない事実であって、論争の余地がない)。
 要は、今さら繰り返されたくもない過去の事例を、またほじくり返されるということ、さらにもう一つ付け加えるならば、こうしたいわば汚れた仕事を、なぜ準ゼネコンのフジタがやっているのか、という話。いずれも日本政府とか一部の業界にとっては、あまり触れられたくない要素がここにはあるのかもしれない。この点について触れるマスコミや政治家は、なぜか不思議なほどいませんね。

― つづく ―





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Last updated  2010.12.07 14:46:17
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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