サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2011.12.27
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カテゴリ: カーネーション
 しんどくても、観ずにおられない。で、観てみれば、決して後味が悪くない、というのは、たぶんお決まりの戦争シーンとかワンパターン化した慟哭の場面を、一切使わないということ。戦後の「戦争を知らない子どもたち」が、テレビや本や映画で繰り返し刷り込まれてきた「戦争」が、同じようなシチュエーションで描かれながら、なぜ月並みな退屈さ(月並みな「反戦」のイメージ)から免れているのか?
 それはたぶん、これが戦争のドラマでなく、「糸子の人生を辿るドラマ(小篠さんではありません)」であるからでしょう。あちこちに「反戦平和」主義だの、「女性解放」論者に取り上げられそうな場面が頻出しながら、必ずしもそれだけでは汲み尽くせない後味が残るのは、すべてのシーンが厳密に「糸子目線」、それも「今、その場の糸子」の目線と、彼女の想像力が及ぶ範囲だけで貫かれているからです(善作も勘助も、その死亡シーンは描かれず、我々が目にできるのは、岸和田に戻ってきた位牌と遺影だけ)。
 映画やドラマによくある回想シーンとか、フラッシュバックがここにはないでしょう。それらは安直に多用すると、観るほうの視座を主人公の目線から、不意に客観的な神の座へ引き上げてしまい、かえって臨調感を失わせるのです(「使ってはいけない」ということではありません。使う必然性が充分練り上げられているなら、それはそれで「手法」になり得る。肝心なのは、ひとえに作り手側の明晰な問題意識でしょう)。
 同じような事柄で、すでに死んだ父善作や勘助が、主人公に(夢の中で)語りかけたり、遺影が動き出したりということもない(いずれも、よく使われる手法です)。善作の遺影は遺影のままであり、それがどう見えるかは、「今、その場にいる糸子」とそれに同期した目線の我々の「想像力」だけに由っている(丸投げされている)。だからこそ、毎日毎日「ああでもない、こうでもない」という口コミがネットで絶えないのでしょう。

 この口コミの多さこそ、このドラマのもつ「臨調感」の証左なのです。なぜなら、私たちの住む「現実世界」とは、まさしく「ああでもない、こうでもない」の世界であって、あらかじめ決まりきった予定調和で進んでいるわけではない、一寸先が誰も分らないからこそ、「ああでもない、こうでもない」となるのですから。これって、震災と原発事故以降の先の見えない日本の現状の気分とも同期していますね。
 「現実世界」とは、過去から未来へ流れる時間の中にある以上、本来先の見えない世界である。それをあたかも、当然「あるかのごとく」クリアカットに断定するグローバリズム的「自立単独主義」に対して、ここで、この物語は反射程であり得る。先が見えない「現実」を現実として受け入れた上で、では糸子は何を担保にして「生き抜こう」としているのか?ということなのです。それを陳腐な「共生」とか「共存」といった、薄っぺらくてお行儀の好い(したがって、何の役にも立たない)安直な結論に導かないでほしい。
 糸子から本能のようにして、繰り返し発せられる「生き抜く」嗅覚とは、どこから備給されて来るのか?愛なのか、怒りなのか、その他コトバで説明できない「あるもの」なのか?これはたぶん、このドラマのメインテーマに繋がっていくのだろう(つまり、糸子自身の「気付きの旅」という意味で)と、私など過剰な期待をしてしまうのですが、となると何度も言うように、これは「朝ドラ」の範疇を越えて、ほとんど「大河ロマン」の世界になってしまいますね。

 この糸子自身の「気付きの旅」であろうというのは、「伏線」の張りかたにも現れているような気がするのです。このドラマ、「始末のついていない」問題が驚くほど多くて、しかも「未解決」のまま死んでしまった人もいる。通常「物語」には必ず「始末」があるはずですが、勘助の「会いたいけど、俺には糸子に会う資格がない」という最後の言葉の意味は、考えれば考えるほど「意味不明」。いろいろな解釈が出来るわけですが、未解決のまま本人は戦死させてしまっている。
 同じことは、旦那の昌など最たるもので、浮気の件が「解決しないまま出征し、戦死した」となれば、この「始末」はドラマとしてどうつけるのか?

― つづく ―





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Last updated  2011.12.27 11:30:51
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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