サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.01.27
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カテゴリ: カーネーション
「ギリシャ悲劇」のような、畢生の名場面!
 ひょっとして本編の最高傑作のシーンになるのかもしれません。
 「絶対的背理」の中におかれて、なおかつ自身も他者も「生かす」道を、一歩も引かずに「引き受ける」。これまで何かと批判のあった周防の来歴(原爆症の妻を抱える夫という設定)についても、それはむしろこの「絶対的背理」に、糸子を追い込むためのまるで伏線であったかのようです。

 松坂の叔父が言うのも、勝の弟が言うのも、近所のオッちゃんが言うのも、従業員の昌ちゃんが言うのも、すべて正論。しかし、そのすべての言い分に、決定的に欠けているのもがある。それはまさしく糸子が勝や父善作のことを持ち出された時の答え。
― 「悪いとは思うけど、この人たち、もう死んでますやん」 ―
 そうなのです。死んだ人たちは、生きている者たちの「現実」を、いかなる意味でも「引き受けてくれない」のです。それはたんに他者を糾弾するのに、生きている側が「利用」しているに過ぎない。こういうのを「死者を墓場から呼び起こす」というのです。死者は常に生きているこっちの都合で、掘り返されたり葬り去られたりしている。
 では、そのほかの批難に対しては、糸子の口は閉ざされるのか?「社会道徳」を受け入れて、一生バカな女の烙印を背負っていかなければならないのか?こういう事況に追い込まれた時、すべてを納得させたり、丸く収めるというようなことは、元より不可能。横から「お前が悪い」と非難罵倒するのは簡単ですが、その「結果の責任を誰も取るわけではない」。
 肝心なことは、出来した事況に対して、ここでさまざま批難を口にする人たちは、誰一人「引き受け手にはなり得ない」ということなのです。あたりまえです(糸子の出来させた事態なのですから)。

 しかし、糸子は自分の本当の気持を「裏切る」ことは出来ない。それはその前の松田との会話のシーンと、その後の周防とのラブシーンで、すべて出ていましたね。松田が「北村の金を、周防と組んでくすねた」という噂をした時、糸子はキチンとは反論しなかった。明らかなガセネタであるにもかかわらず、なぜ反駁しなかったのか?答えは簡単で、北村からはもっと重大なもの(新事業の展開という)を「壊した」という疚しさがあったからでしょう。同じように周防とのラブシーン(世にも美しく、切ない糸子の顔)では、二人がすでに「契り」を結んだ仲であることが暗示される。
 要は、どちらの事況に対しても、その時の自分の気持を、後から偽ることはしない。というより、何度も言うように、おそらく彼女にはそれが身体感覚として出来ないのでしょうね。

 自分の気持はキチッと「態度表明」し、その結果は甘んじて「丸ごと受け入れる」。いつぞや「嫌うなら、何ぼでも嫌うてくれ」と涙ながらに呟いていた糸子の態度は、今となってみると「開き直り」でも、なんでもない。どれだけ罵倒されようが、「引き受けるのは、私なんや。せやから、何ぼでも勝手に言うてくれ」ということだったのでしょう。
 それにしても、こういう言わば「人民裁判」のような激しい衝突の場面を、避けようのない「必然」として進行させる脚本と演出と演技の力、たいしたものです。大げさに思われるかもしれませんが、何だか「ギリシャ悲劇」を観るような古典的匂いを、味わった気がしました。「絶対的背理」に向かって、あたかも神々の摂理のような「必然性」で破局が到来し、そしてその後に強い「昇華作用」を起す。これこそ古典劇の真骨頂なので、私がずうっと待ち望んでいた場面でもあったのでした。アッパレ!

― つづく ―





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Last updated  2012.01.27 16:24:31
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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