サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.02.04
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カテゴリ: カーネーション
「記憶」と「時間」
 映画とか単発のドラマというのは、基本的に観る側の「記憶」は観ている間は「忘れない」、言い換えれば「忘れるのは、お前が悪い」という前提で作られているのではないか?A・ヒチコックの映画など各シーンをすべて覚えていないと、真の面白味というのを見逃すということも無いとは言えない。そういえば、彼とかR・ワイズなどは、観る側の時間と完全にシンクロさせた映画なんかも作っていますね。映像作家にとって「時間」と「記憶」というのは、常に関心を抱かざるを得ない事柄であるようです。

 これが「連ドラ」の場合、作り手はまったく違った「構え」を持たざるを得ないでしょう。早い話、「推理探偵ドラマ」で半年前のエピソードを、最終回の解決編の証拠としていきなり出したら、みんな怒ってしまうでしょう(誰も、そんなもの覚えているわけがない)。まあ、これは極論ですが、しかしこれと似た乱暴なエピソードの取り扱いというのは、けっこう多くの人気ドラマでもあるんじゃないですか(観てないから、知らないけど)?
 「カーネーション」は、そのあたりの観る側の「記憶の蓄積と忘却」を、むしろ逆手にとって「時の経過」を生々しく再現させているようにみえる。もちろんこれまでの「朝ドラ」でも、それらを意識しなかったということは無かったはずなのですが、それでも安易なフラッシュバックやCG的な画像の多用など、かえって臨調感を損なう手法がなかったとは言えない。
 何度も言いますが、何もそうした手法を使うな、ということではない。それが与えるであろう観る側への「効果」に関しての、練り上げが充分だったか?ということなのです。C・イーストウッドの「ミスティック・リバー」に使われた、たった一回のフラッシュバック(遠ざかる車のテールランプ)が、どれほど効果を上げていたか。

 という意味で、このドラマはまさしくその「時の経過」そのものこそ、メインテーマであったかとさえ思わせますね。「女一代記だから、あたりまえじゃん」と言われそうですが、このテーマを徹底的に煮詰めて、観ている側への実際の効果にまでも思慮が行き届いた時、それはたんなるエピソードの積み重ねではなく、映像や効果音や小道具にまで自然に神経が行き届く、ということになると思うのです。
 早い話、映像が岸和田のオハラ洋装店だけを、あたかも「定点観測」しているように、一歩も外さないというのは、逆に「時の経過」を示すのにとても効果的なのでしょう。ヘタな歴史大河ドラマより、はるかに歴史の「経過とスケール」を感じさせる(しかも、ずっと低予算で)。

 私たちの日常の「記憶」は日にちを重ねるごと、「折りたたまれて、蓄積されていく」のです。それら「記憶」は一望俯瞰的に、一挙にすべてを「想起する」ということは人間には絶対出来ません。早い話、ここ一ヶ月(一週間でもよい)の自身の出来事や記憶を、全部「今、ここで」列挙するということなど出来っこない。ただただ、それらは「蓄積されて、確かに在る(らしい)」という「背後の信憑」だけで成り立っているのです。
 「折りたたまれた記憶」のどこかのページが、ある時ふとした拍子に扉を明ける。人はランダムに開かれた「記憶」であっても、それがどのあたりのページにあったのかということは、何となく「分かる」。意識はそういう具合にして「たたまれた記憶」をページ順に整序して、我々に開示してみせる。「時の経過」というのは、この「ページ順位」という仕方で意識されるのでしょう。
 「カーネーション」は、あたかもそうした人の「時間意識」に寄り沿うようにして、伏線を「折りたたまれた、どこかのページを開く」ようにして繰り出して来るのです。これは毎朝やるという「朝ドラ」の前提条件を、徹底的に練り上げた「効果」なのではないか?

 ところで前にも言いましたが、「無意識」の世界では「時間」は整序されません。ランダムな想起は、そのでたらめな順位のまま「無意識界を、乱舞している」のです。「夢」とは、まさしくそうした事況を示す現象で、いかなる因果関係もその世界では成立しません(たまに「制御できる」と豪語する人がいますが、まあそれは横に置いといて)。
 糸子が周防との出会いを、あるいは「運命的(出会うべくして出会った。以前から、この出会いは決まっていた)」と思ったのは、「恋」という情動の発動が「意識より先に、無意識界から」発生するからです。無意識界が時間を整序していない結果、意識はそれを「記憶のページ」に割り振ることが出来ず、人はそれを時間を超越して到来したもの、つまり「運命」と感じるのでしょう。

― つづく ―





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Last updated  2012.02.04 10:54:29
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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