サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.02.10
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カテゴリ: カーネーション
世界が「オノマチ色」に、染まっている
 ここ最近以前のような感動がない、といった書き込みが感想欄に散見しますが、それはたぶん糸子の眼から例の七色の涙が見られなくなったからでしょう。波乱万丈の前半生、しかも戦争を潜り抜けた四十数年間となれば、人間大抵のことには驚かなくなる。尾野さんはそうした年齢相応の人物像を、ごく自然にそのまま演じているわけです。

 逆に現在進行中の戦後年代記というのは、少なくとも表向きは、今の平成の世と戦後民主主義という価値観を「共有」しているわけで、これといった「驚き」を発見出来るというわけではない。直子のサイケ調のとんがったスタイリングも、その後現れたさまざまな新スタイルを知ってしまった我々には、今となってはさほど新鮮なわけではない。たんにかつてあったこと、という「セピア色」にすっかり褪色し古錆びた印象しかもたらさないのです。
 今観ている我々の抱く印象というのは、面白いですね。セピア色に褪色した懐古的戦後ファッション史よりも、価値観の断絶した戦前の服飾史(着物とかモンペとか)のほうが、断絶しているぶんかえって「新鮮」に見える。

 で、同じようなことが、たぶん目下進行中の「子育て問題」にも現れているような気がするのです。「父権」が所与のものとして認められていた戦前(というより、有史以来ほとんど)の「子育て」のほうが、洋裁学校に通う優子直子を観ている時より、よほど気合を入れていた自分が現にいたわけです。優子直子の学校の様子は、別にわざわざ見せられなくても、今どきの(洋裁)専門学校とさして変わりがない(だろう)。したがって「子育て」に関しても、さして今どきと変わりがない(だろう)、と勝手に観る側は考えてしまう。
 となると困るのは、この三姉妹の「子育て記」はたんに特異的な才能を持った子供たちに対する、これまたおそろしく特異的なお母ちゃんの話、というふうに特定化されて(他人事となって)しまって、自身の身柄を省みるという仕方では入ってこないということになって来るのです。まして立派なモデルがいるわけですから、ほとんどの視聴者が、あの直子の周りの男連中はケンゾーだろうだのNicolだろうだの、要は「人物当てっこクイズ」のほうに関心が移ってしまう。
 まあ、それはそれで一つの「お楽しみ」として、別に好いのですが、このドラマ全体を貫く「構え」としては、いかがなものか、という気がしないでもない。

 要は、「価値観」を共有しなおかつ、常に揺れ動いている現代史を新鮮に見せるというのは、逆説的ですが結構難しいのです。偉そうなことを言えば、私がしつこく「源氏物語」や「古事記」を読んでいるのは、それらが、いかなる意味でも現代と「価値観」を共有していないからです(と、自慢!?)。遠く離れた所(それは「古典」であっても「世界の裏側の国」であっても良い)とねんごろにお付き合いすることで、かえって自分自身と今どきの世を新鮮に見詰め直せる、ということもあるのではないか?
 これは何も善作のDVを認めろとかいう話じゃない。「父権」の在りようというものを、それが戦後すっかり失われてしまったぶん、かえってあれこれ考えさせてしまう、つまり「新鮮」に見えてしまうところがあるということです。

 さて、今朝のプレミアムトークを観ていたら、やはり彼女はかなり天然に周囲を「オノマチ色」に染める雰囲気を持った人ですね。それで思い出すのが、彼女と子役とのやり取りとか、ほっしゃん。他との即興シーンなのです。
 いつぞやの「恨むんやったら、何ぼでも恨んでくれ」と腹立ち紛れに呟いた後、家で子供を抱きかかえるシーン。子供がマジ切れるのを、そのまんまの流れで「うちて、イヤなお母ちゃんやね」と演じ切る。
 子供のまさしく天然のままのリアルな反応を受けて、そのまま演技にジャンプするのはかなり難しいと思うのですが、彼女はそれをさり気にやってしまう。似たようなことが、ほっしゃん。他との即興にも現れていて、何となく声のトーンが演技からフツーの日常会話に聴こえてしまうのが面白すぎるのです。
 これってやっぱり関西風なのかなあ?

 とは言え、そのテレビ番組に寄せられたFAXにメキシコだのブラジルの、おそらく日系あるいは在留邦人の方たちだと思うのですが、日本語が分からない子供らが、面白がってこれを「真剣に観ている」というのです。私は尾野真千子さんの「怒り」「叱り」「笑い」「泣く」演技というのは、言葉が分からなくても、かなりストレートにその意味するところは、子供に伝わっていると思いますよ。フツーの子なら、その「指し示している」中味は、すぐ感知する。だって、それは彼らの世界でも、日々現実に演じ続けられているはずのことなのだから。

 ひょっとして外国で観たほうが、このドラマは(とくに戦後編は)新鮮に見えるかもしれませんね。

― つづく ―





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Last updated  2012.02.10 16:14:42
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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