サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.02.26
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カテゴリ: カーネーション
Gentlemen First!
 これまた怒られるのを覚悟で言うのですが、このドラマを観ていて、何やらずうっと一貫して流れているらしいトーンが、前にも少し触れたましたが、仮想的な「男=オスの排除」という「底意」なのです。仮に、この世から「男=オスが、姿を消した」として、ではその後に「男性」性(あるいは「父性」性)とは、どのように顕現して来るのだろうか?
 すでに数多くの指摘があるように、糸子の振るまい方は、まさしく「男性」性(あるいは「父性」性)の表象であり、だからこそ怒っても泣いて笑っても、いわゆる「底意地の悪さ」みたいな、ジメッとした感じが少しもしませんね。我々は彼女の「男的(父性的)振るまい」に、いちいち拍手喝采しているわけです。
 そこには何やら「宝塚歌劇」じゃないですが、一種の「変身願望」があるのじゃないかしらん?

 こういうふうに現実世界をそっくり引っ繰り返して、笑い飛ばしてみせるという物語形式は、「竹取物語」や「源氏物語」以来、日本文学の歴史にずうっとあるらしいのです。
 「竹取物語」は、かぐや姫をめぐる「恋の鞘当て」に、男が(帝も含めて)ことごとく滑稽な形で失敗する話だし、「源氏物語」のいわゆる「玉鬘」系の物語が、「雨夜の品定め」で示された男同士の、まことに「怪しからん女談義」を、「空蝉」「夕顔」以下の物語で、はるかに洗練された女の言葉で、そっくり引っ繰り返してみせる、という構造をなしていますね。
 現実には、あり得ない話(道長を連想させる光源氏が、その数多い女性遍歴の中で、この「玉鬘」系の物語でだけ、滑稽な失敗に何度も遭わされる)を、物語という形式によって「転化」させるというのは、一種の祝祭(治外法権)劇場のようなもので、その場でだけは現実を棚に挙げて、「日常」を引っ繰り返すことが許される。

 話が長くなるので、これぐらいにしますが、私見ではその淵源するところは、どうも古代歌謡の「相聞歌」あたりにまで遡れそうです。はなはだ牧歌的な「万葉集」などに見られる男女の「恋歌」、実際にそれらが詠われた場所というのが、最近の説では歌に詠み込まれたような野山の中でではなく、酒宴の席で交されていたらしいというのです。
 となれば、これもまた一種の「祝祭の場」、つまり現実を「転化」させる場において、許されていた形式ということであり、その意味で「カーネーション」は、現実世界を物語の中でだけ「倒置して、笑い飛ばす」という、日本古典文学の直系なのかもしれませんね。

 もちろん有名なモデルが現実にいて、しかも現代にまで入り込んで来るドラマですから、リアリティーは厳密に確保されねばならないのですが、いちばん底の底に流れるトーンには、上にみたような「遊び心」があるようにも思える。

 早い話、そうとでも考えない限り、これほどまでに男=オスがほとんど語られることなく、舞台から次々と退出させられるドラマというのも、ないんじゃないか(優子の夫も、何やら時間の問題みたいだし)?
 確かに近所にオッチャンはずうっといるし、他ならぬ北村は、「男じゃん!」と言われてしまいそうですが、じつは北村も組合長の三浦も、かなり独自の「物語」を多量に抱えているはずなのに、周防がそうであったように、そちらは不思議なほど何も語られない。
 モデルが居るということで、リアリズムの菰を上手く被せてあるけれども、これらは明らかに「確信的に、巧まれている」のです。
 一言で云えば、「男は、先に退出せよ」と(何だか「女子会」みたいですが)。

 では、先に「男=オスが、姿を消した」として、その後に「男性」性(あるいは「父性」性)とは、どのように顕現して来るのか?よく考えてみれば、女性方にとって男=オスというのは、ひょっとして、いちばん身近な「他者」であるのかもしれないのです。
 男=オスを、いったん周辺からすべからく排除してしまえば、このいちばん身近な「他者」の、「他者性」たる所以が見えてくるかもしれない。糸子が「男的(父性的)」に振るまえば振るまうほど、男=オス的中身の在り処が分かって来るみたいな。

 私が男=オスだから、それを別にひがんで、言っている訳じゃないのですが!

― つづく ―


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Last updated  2012.02.26 10:57:00
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
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