サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.03.07
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カテゴリ: カーネーション
伝播する力
 さて、これがもし尾野真千子という女優の持つ「凄味」だとすれば、果たして将来どのような演技者になって行くのでしょうか?
 おそらく、今回の朝ドラを観ていて、彼女にインスピレーションを強く刺激された映画監督やプロデューサーや脚本家は、山ほど出て来るに違いない。それほどに守備範囲が広くて、なおかつ、何よりも作り手側の「想像力」を止めどなく揺り動かし、さらにそれを周囲に伝播させる演技者であることを、彼女は証明しているのです。

 彼女と競演して「オオバケ」した俳優さんが、現にこのドラマで何人もいるじゃないですか。例えば、筆頭株のほっしゃん。を見てください。明らかに尾野さんの演技に挑発されて、彼の北村は造形されたのです。私は彼のベスト・シーンは糸子との即興の掛け合い部分ではなくて、周防とのラブ・シーンを目撃した直後の大写しの表情だったと思っています。その前に小原家で「寅さん」を演じて、すっかり「泣き」を見せた彼が、「怒り」と同時に「寂しさ」も含んだ表情を露わにしている。
 私はこの時、ほっしゃん。は「寅さん」を越えて、別人格(北村)にジャンプしたのだと思う。「寅さん」なら、皆さんご存知のとおり、こうしたシチュエーションになれば、我からサッと身を引いて、例の大きなかばんを持って、どっかへ立ち去って行くのですが、北村はそうしない。彼には「生活者」としての「現実」があるからです(寅さんは、我々しがない生活者の「夢」を、まさしくそのかばんに一杯詰めて、体現しているわけです)。
 それが先日の糸子との最終シーンでの、堂々たる演技となって現れたと思う。尾野さんはもちろんですが、ほっしゃん。の演技にも、落ち着いた「風格」さえ感じられるのです。

 似たような「変身」を遂げたのが、やはり新山千春さんだと思う(多少、身びいきがあります!)。一生懸命「泉州弁」をこなしながらも、いかんせん岸和田の放つ「空気感」ばかりは、如何ともし難い感じが正直あったのです。それが、糸子の「どの口が言うてんのや。えェ!このアホが!」と、頬を叩かれ、つねられて「目が覚めた」と言っては彼女に失礼ですが、何やら演技者として「開眼」しちゃったところが、あるのじゃないかしらん。「そうか、優子のままにやれば、ええんや!」みたいな。
 それがその後、東京の直子の店に現れた時の、「優子」の表情となって現れたように思う。これは私のたんなる酔狂な「深読み」ですが、彼女の一見慈母めいた「優しい」表情の裏には、前にも触れましたが、直子の「狂気」の在りようを隅々まで見詰めてやろうという、サリエリ的「欲望」が垣間見える。どこにそれを見止めるかと言えば、彼女の抱いている赤ん坊の「眼」なのです。
 よく考えてみると、直子の店に赤ん坊を抱いたままやって来るというのは、何だかヘンだと思いません?あえてそうしたシチュエーションを設定したのだとすれば、この赤ん坊の眼は「直子を、隅々まで見通してやろう」という、優子の隠れた「裸眼の心」を象徴しているようにも見えるのです(まあ、これはほとんど「妄想」ですが)。

 私が申し上げたいのは、こうした想像力を観る側に与える演技を、ほっしゃん。や新山さんが獲得出来たのは、尾野さんとの濃密なやり取りがあったからなのだろう、ということなのでした。「伝播力」というのが、どのようにして顕現して来るのか?
 楽屋裏の話は、私たちには知る由もないし、また興味の外でもあるわけですが、少なくともここで言えることは、彼ら彼女らは、まさしくそこに対面している尾野さんに、「紛れもなく、真正の小原糸子」を目撃したのだろう、ということなのです。巧まれた「糸子」でなく、「真正の糸子」という人格が目の前に顕現している、ということを。
 となれば、自分たちも「演じる」のではなく、「北村」「優子」としてフツーに振るまえば好い、ということになる。このあたり、思い起こせば、糸子を取り巻くかつての子役たちの自然さが、どのあたりから引き出されて来たのか、を解くカギにも繋がっているのかもしれませんね。

― つづく ―


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Last updated  2012.03.07 11:43:47
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ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
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