サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.04.03
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カテゴリ: カーネーション
創造者同士のセッション
 話を戻します。なぜ新シリーズでは、脚本や演出が言わば「生煮え状態」のまま、充分吟味されずに提出されているのか?これもまた逆の方向から探って行けば、何か見えて来るかもしれない。要は脚本家と俳優が、もっとも「幸福な関係」を築いていたかもしれないころの、例の尾野さんと渡辺さんの対談の中味を、もう少し穿ってみたいのです。
 先にも触れましたが、このコンビは例の「火の魚」以来二回目で、その時から互いにかなり刺激を受けていたらしい。で、実際に脚本を書き進めて行くうえで、「こんなことも、やらせてみたい」「あんなことも、出来るかな」といった、かなりチャレンジングな科白を加えて行ったところが、それに対して尾野さんは「啖呵の迫力は三倍増し」ぐらいのレスポンスで返してみせたというのです。
 普段から見知った仲とか、充分話し合っているという間柄でなくても、ジャズのセッションのように、科白を介した音楽を交しているだけで、「強烈に想像力を刺激されて挑発しあう」、で、その結果ますます新たな想像力の地平が開かれて…、というまことに「幸福な創造者同士の関係」が、この時期の二人にはあったようです。
 しかし、もちろん最初からそうした稀有な関係が、出来上がっていたわけではないのでしょう。ボールは投げてみないと、実際のところ当事者にも分らないものです。

 じつはここで長いおしゃべりをしながら、私は「カーネーション」が始まったころのエピソードに、自分がほとんど触れていないことに気付くのです。確かに普段の「朝ドラ」よりも快調で、小林薫さんのいわゆる役者芸にも感心しきりだったのですが、そうした面白味なら、かつての「ゲゲゲの女房」でも観られたことでした。「黙っていられなく」なって、このブログでアホみたいにしゃべり始めたのは、ご覧のとおり十二月に入ってからなのです。
 それまでは、よくある女の一代記を、かなり大阪風の濃い~ノリで描いた、フツーの「朝ドラ」だったように思う。

 思い出してみると、私が膝を直して観始めたのが、例の踊り子のサエに対して、糸子が「本気で着る気がないんやったら、あんたになんかドレスこさえへん。帰り!」と言い放ったころからで、それまではこんな「深入り」はしていなかったし、その印象は今も変わっていません。
 要はそのあたりから、何やら作り手側が発するメッセージに、ただならぬものを感じ出したということでしょう。平たく言えば、「朝ドラ」の範疇を越えて作り手側から発せられる、ある種「覚悟」のニオイを嗅ぎ取ったということです。

 で、それはおそらく役者と脚本家及び製作スタッフ全員の考え方が、同じ方向に向って「だんじり」のように回り出した時期と、たぶん同期していると思うのです。脚本家と役者のスリリングなセッションが、新たな他のセッションを生む。それから以降、このドラマが駆け上がって行った到達点の高さというのは、皆さんもご存知のとおりで、散々ここでしゃべって来たことでもありました。
 このあたり、いわゆる物書きとか画家のような、基本的に「単独者の創造」という立ち位置とは全然違いますね。これについては前にも触れましたが、映画とかテレビドラマというのは、よほどパーソナルな作品でないかぎり、大人数の「共同作業」の創造物なわけで、得てして優れた「明示性」を作品に持たせることを困難にする場合がある。ヘタに、そこにメッセージ性を盛り込もうとすると、「平板」になったり「厭味」に見えたりすることが多いのです。「創造」の現場というのは、基本的に孤独な作業だろうというのが、一般的な通念だったように思う。

 しかし、それが役者他スタッフと作家の、本を介した「スリリングなセッション」であることによって、単独では到底成し得ない高みまで、作品を押し上げて行ってしまうという現象も、やはりこの世には確かにあるらしい。例の「なでしこジャパン」の達成した偉業などは、これに属する事況のものでしょう。
 で、同じようなことが、たぶんこの「カーネーション」のチームスタッフにも現れたに違いない。細部まで誰か単独者が、何もかも決めているわけではない。お互いが兆発しあい刺激しあう中で、自ずから立ち上がって来る「拡張された身体性」が全体を被うときにのみ、一回的に顕現する世界がこの時だけ開かれたのだと思う。

 しかし、それがサッカーという「常に動き続けるスポーツ」がまさしくそうであるように、めったと現れることのない「危うい」バランスの上に成り立っている現象であることも、これまた明らかなことなのでしょう。

― つづく ―





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Last updated  2012.04.03 10:51:15
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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