サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2022.09.12
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カテゴリ: エレクトーンの日
LiSA’s Language
 それにしても、日本語を知らない外国人に、LiSAさんの音声はどのように聴こえているのか?彼女の歌声を、なかにはacrobat voiceと表現する人もいて、それを英語とは違う日本語の特性のようにも言うヴォイストレーナーもいるのですが、もちろん日本人の私だって、彼女のような日本語は聴いたことがないのです。
 これはまぎれもなく、アニソン界で創り上げられた独自の音声なのだと思うのですが、訳文が付いているとはいえ、結局彼らの言っていることはイマイチ腑に落ちない。要はベルティングだのチェストヴォイスだの、専門用語が頻発するからそうなるので、日本人のこの手のリアクションはないかと探していたら、いくつかありました。しかしたいていが便乗型の受け狙い動画で、どうも私にはしっくりしない、外国以上に業界用語を振り回す人も多いのです。
 その中で少し面白いと思った動画があったので、一つ紹介します。北米にエンタメ留学していたMayuさんという現役歌手(存じ上げません、すいません)の「Mayu’s洋楽Study」というサイトなのですが、そこで「 紅蓮華 」のリアクションと解説をしてらっしゃる。このかた、コテコテの大阪出身のバイリンガルみたいで、欧米流のズケズケした指摘が、関西なまりのツッコミで入るので、けっこう面白い。

 で、この人もやはり「THE FIRST TAKE」のテンポは遅いとおっしゃる(1.5倍とは思わないけど)。さらに興味深かったのは、従来のヴォーカルというのは、一般に発声法を一曲中でちょくちょく変えるということはしない、という点でした。なぜそうなのか、という説明はなかったのですが(そんなことあたりまえやん、という口吻り)、例えばオペラやミュージカルだと、各々が別々の発声法をやったら、音色が合わなくなるということはあるでしょう。あるいは発声法をひんぱんに変えると、音程が不安定になるとか、だいいちそもそも面倒くさくて誰もやらないとか。
 逆に言えばLiSAさんの発声は、あらゆる発声法のオンパレードみたいのが、一曲中どころかワンフレーズ内に出て来て、しかもそれがことごとく正確にヒットしている(音程を外さない)ということなのです。

 以下はまったくの私見ですが、これはやはりLiSAさんがアニソンのあらゆるキャラクターにアジャストするために、多種多様な発声法を身につけた結果なのではないか、と私は想像してしてしまいます。声優さんはキャラクターごとに、声音をまことに器用に使い分けるじゃないですか。で、それが逆に今のLiSAさんの歌唱を特徴づけている大きな要素だと思うのです(全部とは言いませんよ)。
 それともう一つ、発語の明晰さもアニソンならではないか?劇中歌でもそうですが、アニメの挿入歌というのは、ミュージカルは別としても実写版以上に、話の中味にかかわって来ることが多いように思う(これも想像)。である以上、発語が明晰であることは、アニソンの必須条件になるのです。

 私が音楽の歌詞に惹かれたのは、1970年代の和製フォークからでした。それまで洋楽一辺倒、日本語の歌詞に目を向けるなどということはまずなかったのですが、陽水や拓郎が嫌でも耳に入ってきて、で、その言葉がやたらに耳に刺さる。それまで和声ポップスなんて聴きもしなかった私ですが、彼らは「歌詞の理由」を知らせるために、私の耳を無理やりこじ開けたのです。当時の歌謡曲の歌詞といえば、これまた素人の印象ですが、いまだ和歌や浪曲のような紋切り口調を引きずっていて、私には全然届かない、そういう代物だと思っていたものです。
 洋楽のそれもインストルメンタル中心、ヴォーカルは結局その言葉の意味ではなくて(英語は分からない)、発せられる声音の「響きの魅力」として聴いていたので、歌曲を聴く態度としては、かなり片手落ちだったということになりますね。とはいえ、和製フォークが歌詞の理由を知らせてくれたといっても、それに深くはまるということはありませんでした。

 今回のLiSAさんの発語、とくに「紅蓮華」で顕著だと思うのですが、言葉の意味する中味と発せられる音声の響きがテンポよく連動して、まことに小気味よく私の耳に届く。長ーいベルティングも一本調子じゃなく、体でテンポを取りながら、おしまいの語尾をキチッと発声するので、グルーヴ感に浸りながら言葉の意味もスッと頭に入る、という仕儀になります。こういう唄いかたというのは、なかなかないですよ。
 あるいはひょっとして、PV版の「 紅蓮華 」でヴィジュアルとしては納得できても(さすがパンクロック出身ですね)、LiSAさんとしては音楽として飽きたりなかったものを、「THE FIRST TAKE」で試みたのではないか、と私は思っています。間違いないのは、PV版とかOST版では、私の耳には絶対届かなかったということです。

 というわけで、彼女にとってパンクロックから転換して(たぶん芽が、なかなか出なかったのでしょう)、アニソンの世界に入ったというのは、結果的に大正解だったということになりました。彼女の創り上げたアニソンの発語法が、今やそれをはるかに飛び超えて、世界を席巻しているからです。
 それにしても、「紅蓮華」の作曲は草野華余子さん、作詞はLiSAさん本人、「炎」の作詞作曲は梶浦由記さん、ついでに言えば「鬼滅」の原作者吾峠呼世晴(ごとうげ こよはる)氏 も、じつは女性らしいということで、日本の女子力はものすごいね。





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Last updated  2022.09.12 20:13:14
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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