LiSA’s Language それにしても、日本語を知らない外国人に、LiSAさんの音声はどのように聴こえているのか?彼女の歌声を、なかにはacrobat voiceと表現する人もいて、それを英語とは違う日本語の特性のようにも言うヴォイストレーナーもいるのですが、もちろん日本人の私だって、彼女のような日本語は聴いたことがないのです。 これはまぎれもなく、アニソン界で創り上げられた独自の音声なのだと思うのですが、訳文が付いているとはいえ、結局彼らの言っていることはイマイチ腑に落ちない。要はベルティングだのチェストヴォイスだの、専門用語が頻発するからそうなるので、日本人のこの手のリアクションはないかと探していたら、いくつかありました。しかしたいていが便乗型の受け狙い動画で、どうも私にはしっくりしない、外国以上に業界用語を振り回す人も多いのです。 その中で少し面白いと思った動画があったので、一つ紹介します。北米にエンタメ留学していたMayuさんという現役歌手(存じ上げません、すいません)の「Mayu’s洋楽Study」というサイトなのですが、そこで「紅蓮華」のリアクションと解説をしてらっしゃる。このかた、コテコテの大阪出身のバイリンガルみたいで、欧米流のズケズケした指摘が、関西なまりのツッコミで入るので、けっこう面白い。
で、この人もやはり「THE FIRST TAKE」のテンポは遅いとおっしゃる(1.5倍とは思わないけど)。さらに興味深かったのは、従来のヴォーカルというのは、一般に発声法を一曲中でちょくちょく変えるということはしない、という点でした。なぜそうなのか、という説明はなかったのですが(そんなことあたりまえやん、という口吻り)、例えばオペラやミュージカルだと、各々が別々の発声法をやったら、音色が合わなくなるということはあるでしょう。あるいは発声法をひんぱんに変えると、音程が不安定になるとか、だいいちそもそも面倒くさくて誰もやらないとか。 逆に言えばLiSAさんの発声は、あらゆる発声法のオンパレードみたいのが、一曲中どころかワンフレーズ内に出て来て、しかもそれがことごとく正確にヒットしている(音程を外さない)ということなのです。
今回のLiSAさんの発語、とくに「紅蓮華」で顕著だと思うのですが、言葉の意味する中味と発せられる音声の響きがテンポよく連動して、まことに小気味よく私の耳に届く。長ーいベルティングも一本調子じゃなく、体でテンポを取りながら、おしまいの語尾をキチッと発声するので、グルーヴ感に浸りながら言葉の意味もスッと頭に入る、という仕儀になります。こういう唄いかたというのは、なかなかないですよ。 あるいはひょっとして、PV版の「紅蓮華」でヴィジュアルとしては納得できても(さすがパンクロック出身ですね)、LiSAさんとしては音楽として飽きたりなかったものを、「THE FIRST TAKE」で試みたのではないか、と私は思っています。間違いないのは、PV版とかOST版では、私の耳には絶対届かなかったということです。