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懐かしの猛虎戦士が現役当時を振り返る企画「あの時は…」。第5回は1980年代後半から90年代前半に主戦投手として活躍した野田浩司氏(51)。87年度ドラフト1位右腕は、自らの地位を築き上げながら92年に“90年代最大のトレード”と称された大型トレードでオリックスへ移籍。人気球団のドラ1特有の苦悩や、移籍への葛藤、阪神での5年間を振り返った。
92年は優勝争いをして2位。来年は優勝できると思っていたその年のオフ、トレードでオリックスに移籍しました。年末に妻と1週間旅行に行って、自宅に帰ると球団の上の人から留守電が何件も入っていて…。「話があるからホテルに来てくれ」と言われて何となく察しましたね。
ショックしかありませんでしたよ。何で出されるんだと。でも断るとペナルティーがあるし、返事をしました。踏ん切りがついたようでついていませんでしたが、年末だったのが良かったかもしれません。年が変わって気分が変わりました。
当時は西宮に家を買っていましたが「ここからは絶対通いたくない」と売りに出し、神戸の球場近くに家を借りました。「阪神の野田」と思われたくなかった。引っ越したのが良かったですね。いざオリックスに行くと、記者とカメラマンの数が比べものになりませんでした。新聞も5面ぐらいの小さな記事。タイガースは特別な球団で“普通”に戻れたなと思いましたね。
熱烈な巨人ファンでしたが、入団時は12球団OKでした。でも阪神と聞いた時はピンと来なかった。そこからは驚きの連続です…。マスコミの攻勢、ファンの方もすごくて。ドラフト翌日、朝起きたら寮に面している場所にパチンコ店の開店祝いのような花が届いていました(笑)。一瞬にして人生が変わったなと…。
入寮以降は毎日、新聞記者さんが来て(自分より2年前にドラフト1位で入団した)遠山と比べられました。「(遠山に)負けたくない?」と聞かれ「はい」と答えただけで、翌日の紙面は「負けられるか!」という見出し。“マスコミアレルギー”じゃないですが、1年目は気疲れの連続でしたね。
甲子園初登板は4月13日の巨人戦、五回1死満塁の場面でした。手足が震えて球場から地響きがする。投球練習でストライクが1球も入らず、最初の打者、中畑(清)さんに押し出し四球。人生最大の緊張です。あれほどの緊張はどんな大舞台でもなかったですよ。
常に注目されて、タイガースに対してうらやましい気持ちは心のどこかにありました。移籍1年目の93年は、僕の野球人生で飛び抜けて一番の好成績(17勝5敗)。色んなものがありました。タイガースは絶対的な人気があるし、今の選手には、あれだけの雰囲気で野球ができることを幸せに感じて、当たり前と思ってほしくないですね。
デイリー
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