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阪神岡田彰布監督(66)は、坂本から手渡されたウイニングボールをしげしげと見つめた。「数字が出ると、毎日がすごく長く感じるんでね、あんまり気にしないようにしてたんですけど。今日はボールもらいましたね、みんな覚えてて」。虎の指揮官として藤本定義監督を抜いて、単独トップの515勝をマーク。記念の白球は、すっとお尻のポケットにしまった。
15年ぶりにタテジマを着た昨季は、リーグ優勝、日本一へと一気に駆け上がった。だが今季は、順風満帆とはいかない。制球の乱れが続く開幕投手の青柳には3度の2軍調整を命じた。守備にほころびを見せた佐藤輝も、5月中旬に2軍に落とした。4番大山ですら不振が続いた6月上旬、連続試合出場を227で止めて2軍での出直しを命じた。日本一を成し遂げた主力を尊重しながら、シビアな目で見続ける。懸命なやりくりで5割ラインをキープしている背景に、聖域なき決断力がある。
この日は不振が続く森下に2軍行きを命じた。出場73試合で打率2割3分2厘、6本塁打。30打点はチーム最多だが、6月以降は不振で7月は無安打だった。交流戦明けの練習では、自ら約1時間の打撃指導を行い、フォームの修正を求めてきたが、苦悩が続いていた。「ちゃんとやればな。それだけよ」。長いシーズンを戦う上で、必ず戦力として必要な存在。短い言葉に伝えたい意図を込めた。
藤本監督が率いていたタテジマを、岡田少年も甲子園のスタンドから見つめていた。「そんなあんな小さい時に監督なんか見てるかいな(笑い)」。幼い記憶をそう振り返ったが、猛虎の魂は受け継がれている。
借金生活危機で迎えた試合は5連勝中。しぶとさを発揮し、4位ながら首位広島に2ゲーム差で踏みとどまっている。「シーズン終わったら大きかったなって言えるやろ。いまは分からん、今はまた(貯金を)減らさんように増やすことしか考えてないから」。見つめるのはただ目の前の1試合だけ。「いつも5割なって、本当苦しい、そういう勝ち方というか、そこでまた今回も食い止めたんで。もうちょっとゆっくりね、明日は野球したいと思います」。少し本音をもらしつつ、まずは516勝目をつかみにいく。
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