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2015年07月02日
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カテゴリ: 漫画・アニメ





電子書籍無料版およびレンタルにて、全11巻 読了。


化粧品会社の営業サラリーマンの恋愛を描いた作品。

「性行動を左右する奇病」 に翻弄される男の姿を描く 『クピドの悪戯』 シリーズ2作目になるが、設定やキャラに相互関連性は無いので、前作を未読でも問題はない (私は、シリーズ1 『虹玉』 と、3 『このSを見よ!』 の、それぞれ3巻までは 電子書籍無料版で読んだ)。


「身体 (サイズ) が次第に若齢化するという奇病の女子大生を救うことができるのが主人公の青年のみで、しかも、その方法は1日1回、濃厚なキスをする (唾液の酵素を直接与える) こと」 …という、とにかく荒唐無稽な基本設定、奥手の主人公がやたらとモテるハーレム展開、如何にも青年誌向けの女性先導型のセックス描写 …等々が目立つ序盤は、女性読者の中には不快に感じる人もいるかもしれない。

「年上の仕事のデキる」 巨乳美女と、「見た目はコドモ、頭脳はオトナ」 のロリ少女との三角関係。 それだけでなく、仕事上の部下であるBA (販売員) 達からも、何かとモテる主人公 (「優柔不断」 なのはお約束)…。


だが、じっくり読み進めると、単なる 「ご都合主義のハーレム漫画」、 「男の妄想」 とかで片付けられない深みがある。 エロシーンに抵抗がなければ、寧ろ女性にオススメの漫画かもしれない。


ハーレム漫画 (アニメ) と言えば、「ツンデレ」、「ヤンデレ」、「妹」 などと女性をタイプ別に類型化し、男性主人公 (読者) にとって、どれが合うか (都合いい女か) …という話に終始しがちだ。

だが、この作品は、脇役も含めて女性キャラのバックボーンや立場、事情をきちんと描いており、「タイプ」としての良し悪しではなく、それぞれ一個の人間として扱っている感じがする。


多分、作者自身がかなりフェミニストなのではないかと思えるのだが、働く女性の生きにくさを的確に描き出しながら、男性読者の反感を買うほどフェミニズム丸出しというわけではない。


例えば (ストーリー本筋とは余り関係ないが)、化粧品の女性販売員 (BA) は、「恋愛や美容、グルメ等しか頭になく、仕事に向上心がない女たち」 の象徴のように描かれがちで、この類の社員は、女性作家による女性向け漫画においてさえ、 「真面目に仕事する女 (ヒロイン) の脚を引っ張る存在」 に終始することが多い。

この作品でも、主人公青年が、 「やる気に欠けるBA」 にイラつく様子が描かれるが、彼自身が上司や先輩からパワハラを受ける中で、BA の気持ちに寄り添っていなかったことに気付く描写は、なかなか上手い。


売り上げが良ければ、宣伝や担当の営業マンの手柄とされ、悪ければ、上から目線で無能呼ばわりされる 「前線の販売員」 全てに、常に万全のモチベーションを期待するのは、確かに理不尽だ。 では、エリート意識の強い人間に、彼女ら以上の現場の仕事ができるかと言うと、できないことの方が多いだろう。


しかも、この作品の場合、BAを「仕事はデキなくても、家事やセックスは合格、の “お嫁さん” タイプ」 …みたいなゴマカシではなく、仕事上で、きちんと彼女らの役割・能力を評価しようとしている点に良さがある。

フィクションと言えど、(会社勤め経験の少ない) 漫画家の中で、そうした目線で 「働く女性」 を描ける人は、なかなか少ないように思う。


この件に限らず、それぞれの女のイヤな面も良い面も、自分から理解して受け止める度量があるので、そらぁ、こんな男がいたらモテるだろうよ、と一応、納得はいくのだ (少女漫画的な肉食男子より、こういうヤツの方が、実際の社会ではモテるだろう)。


ファンタジーな 「奇病」、「ハーレム」、「エロ」 がメインテーマのようでありながら、 「サラリーマンの苦労」、「嫉妬の構造」、「姉妹の確執」、「失恋の後遺症」 等々、エピソードの多くは、非常に現実的で、男女問わず、共感できるものがある。


それだけに、終盤の非現実的なサスペンス展開は、劇的ではあるものの、「結局はファンタジーか」 と目を醒めさせられてしまったと同時に、駆け足で安っぽくまとめてしまった感もあり、ちょっと残念ではある (掲載誌休刊の影響 …と憶測する人もいるようだが)。











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最終更新日  2016年10月10日 23時04分27秒
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