あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

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2007年03月16日
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切花や鉢物といった商品は、仕入れた値段によって販売価格を決めている
花が咲ききってしまったものや、状態が悪くなってくると価格を下げ、それでも 売れ残ってしまったものに関しては可燃ごみとして処分 する
生産者の方たちが丹精込めて育てたことを考えると、少しでも売り捌きたいところなのだが、残念ながら廃棄行きとなる花は後を絶たない

仕入れ値が安いからと、大量に仕入れた チューリップが50本ちかく満開 に咲いていた
茎も伸びきってしまって、葉も痛んで見てくれが悪いので、とても売り物にすることができないので廃棄することに
チューリップを花鋏で切って処分していると、1人の新人スタッフが 『捨てるなら、いただけませんか』 と声を掛けてきた
飾っても1日ぐらいしかもたないことを言うと、それでも構わないと言った
1日でもいいから部屋に飾りたいという

その言葉を聞いて、頭をガツンと殴られたような衝撃を覚えた
そういえば、自分が花屋に勤め始めた頃、状態が良くない花を処分しているのを見て、よく貰って帰ったことを思い出していた
それまでは自分で花を買うことが無かったので、たとえ状態や日持ちが悪くても喜んで貰い、部屋に飾った花を見ては嬉しかったものである
が、今では、毎日花を見ているせいか、その気持ちも薄れ、花を廃棄することに関して感覚も麻痺していた
売れなかった花を処分する際、切り刻むのはやはり心が痛むが、毎日毎日売れ残った商品の廃棄があるので、そう感傷に浸っていられないのが現実
申し訳ないと思いつつ鋏をいれている

新人スタッフに、欲しいだけ持って帰ればいいと言うと、嬉しそうな顔をした
その顔を見て、昔の自分もこうだったのかなぁ…と姿を重ね合わせた
いつからだろう…
以前は花屋で働くことが物凄く楽しかったし、毎日見るものすべてが新鮮で刺激的だった
が、年月は流れ、今は花屋で働くことへの希望や情熱も薄れ、ただ日々の仕事を淡々とこなしているだけのような気がする
“なんの為に働いているのだろう”

チューリップ“フィデリオ”ふとそんな疑問が頭を過ぎった
いや、花が好きだから花屋で働いていることに変りはない
ただ、昔のように純粋に花を楽しみながら働ければ、どれだけ幸せなことか
そう思った


【情熱】
ある物事に向かって気持ちが燃え立つこと
(辞書調べ)







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最終更新日  2007年03月20日 07時18分43秒
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