aituに乾杯

aituに乾杯

2017.07.03
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カテゴリ: 写文俳句


傘の字や四人家族の我家なり


かさのじやよにんかぞくのわがやなり







日曜日
昨日から降る続く雨
普段だったら誰かが用事や約束事で抜けるのに
昨日 今日は全くずっと四人とも同じ屋根の下
めずらしい
自分も雨で釣りに出かける気起こらず
外の雨の音ばかり聞いている

その雨を見ると 一本の傘を思い出す
中学二年のある日
登校した後で雨が激しく降り出した
昼を過ぎても雨はやみそうになく
今日は濡れて帰らねばと思っていた

そんな午後の授業中
教室の外に誰かがやって来た
先生が応対に出て すぐに僕の名を呼んだ
おふくろだった おふくろが傘を持って来てくれたのだ

僕はうれしいというより
なんだか恥ずかしさでいっぱいだった
誰もそんな傘なんか持って来るものはいなかった

後で訊くと 仕事が早くすんだので持って来たと言い
今でも
「お前はあの時 顔がトマトのようにまっ赤っかやったなあ」
とカッカと笑いながら言う
最近はもの忘れがひどいのに そんなことはよく覚えている

母はそれまで
学校に傘なんか持って来るようなことは一度もなかった
この時 僕はこの中学に転校してきて 数日しかたっていなかった
今思うと 母はそれなりに自分の息子のことが気になっていたのだろう

あの時 持って来てくれた傘は
その後どうなったのか知らないけれど
突然の雨が降ると
あの時の一本の傘を思い出す





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最終更新日  2017.07.03 23:03:30
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