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つくつくし妻の点滴ひとつ落つつくつくしつまのてんてきひとつおつ
2017.08.07
臥す妻の口に含ますアイスかなふすつまのくちにふくますアイスかな
2017.08.05
空蝉も聴いているかや明日の分うつせみもきいているかやあすのぶん蝉の声というものはもうかれこれ半世紀以上も毎年 同じように耳にしてきているのにその年の蝉の鳴き声はその年に初めて聞くような感覚がある去年の蝉と今年の蝉は同じではないからそれは当たり前のことだけれど土中で暮らしてきた蝉の幼虫に比べ地上に現れた成虫の生存期間はまことに短いそいうことを知らなければまた別の響きで耳に聞こえたかもしれない木の枝でもう明日はないというような勢いで一生懸命に腹を震わせている蝉がいる限られた時間で子孫を残さねばならないその本能のような必死さはどこから来るのだろう生命の神秘の不思議さに哀れみを覚えるのは自分が単に年をとったせいだけかもしれないけれど
2017.07.31
日めくりを一枚残す西日かなひめくりをいちまいのこすにしびかなこれさえあればというものを持つ人は生きる力を遺憾なく発揮するけれどそれが特別であればあるほどそれを失ったときの反動には計り知れないものがある動物の世界にも鋭い嗅覚を持つもの速く駆ける脚力を持つもの空を飛ぶ翼を持つもの水中を自由に泳ぐヒレを持つものそれぞれに特技のようなものを持つけれどそれは生きる手段であって切り札ではない自然界に生きるものたちはこれさえあれば というものは持たない太古の昔からあるものの中に身をゆだねてあるがままに生きている人間だけであるこれさえあればこれさえなければと生きるのに条件を付けたがるのは確かにそのおかげで生きていくのに便利にはなったけれどカミソリの刃の上を這うようなどこか危なっかしい豊かさである幾十年 幾百年と同じ場所に立ち続ける大木がか弱き「考える葦」を見下ろして笑っている考える力をこれさえあればと少し傲慢になってやしないか人間殿
2017.07.29
飛び跳ねし童も魚と網の中とびはねしわらべもさかなとあみのなか山峡の鱒釣り場子供が釣った魚の竿をお父さんが持ち子供は大きな網を持ってすくいあげる普段は釣り場のおじさんや兄ちゃんがすくいあげてくれるけれど子供に楽しみを残して皆で見守っているすくいあげると子供は網の中の魚のようにきゃきゃっと両足を跳ねてよろこんだ夏は平地より気温が5℃くらい低い渓谷を流れる水の音が風鈴のように耳を打つ
2017.07.27
芸術のわからぬ親と芋焼酎げいじゅつのわからぬおやといもじょうちゅう 情熱の朱(あか) 哀愁の青 今 混ぜながら夢の世界へ ああ そこから先は・・・ You make me feel good Sexual Violet No.1セクシャル・バイオレット No.1 桑名正博model my second daughter
2017.07.26
労働の対価にあらず玉の汗ろうどうのたいかにあらずたまのあせ仕事には知恵を出せ知恵の出ない者は汗を出せ汗も出ないものは 去れ誰かの受け売りだろうけれど初めて社会に出た職場の上司の口癖だった常に効率化とコストダウンと歩留まりアップ創意工夫とムダ ムリ ムラの排除・・・書いていけばこの国の高度経済成長と技術力をバックアップしてきたものにはそれなりに裏打ちされたものが多々あるそれが間違いだったという訳ではないけれどいろいろと問題はあるにしてもこの国を豊かにし ほとんどの人々が中流意識を持つまでになったのだからけれどもここにきて何かが変わってきているように思う人には得て 不得手もある何をやらせても人より手の遅いパートの女性に上司はいつもイライラしていたどうしたらもっと速くできるか考えろ彼女が速くできるように上の者はもっと指導しろ彼女の所で物はよく停滞していた彼女は怠けていたわけではないみんなに迷惑をかけてはいけないと額に大きな玉の汗を浮かべていつも一生懸命だったそんなある夏の日職場のバーベキュー大会があり社員の家族も呼ばれて盛大な懇親会があった幹事が用意した食材を 大きな鉄板の上でみんなが思い思いに焼いて食べるエビやら魚やら肉やら野菜やら・・・その中でなかなかにテキパキと焼いては自分のことはさておいてみんなの皿に盛ってまわる女性がいたあのパートの女性だった焼き方も手付きが上手で焼き過ぎることもなく食材に合わせて焼き加減の一番おいしい所を心得ていた魚も肉も野菜も やわらかく口当たりも良くそのうちにみんなが彼女に焼いてもらうのを頼むようになった彼女は小学生の子供を二人連れて来ていた僕は彼女の子供たちに訊いた「お母さん 料理上手やね」「うん」「お母さんの料理 なにが好き?」「うん おかあさんの作るの み~んな好き!」「そうか そうか」子供たちのお母さんは仕事の時とは別人のように生き生きと笑みを浮かべては次々と頼まれるものを焼いていたその額には仕事の時と同じような汗が浮かんでいたうれしそうな玉の汗だった労働の対価にあらず玉の汗
2017.07.25
ここでしか生きられぬこと油照ここでしかいきられぬことあぶらでりこの国に原爆が投下された日 まだ僕はこの世に存在しない父と母さえまだ出会っていない初めての一個の細胞さえまだ生まれていないやがてその一個の細胞から僕は分裂を始め手や足や五臓六腑が出来上がり目や鼻や口 耳なるものが整ってそして何やら染色体なるものの影響でこの世に男として出現したらしいそれまでにおよそ十月ほどを要している一方核爆弾なるもの十万分の一秒の間に核分裂が連鎖的に反応し一瞬のうちに悪魔の子を産み落とす世界で唯一の被爆国にっぽん世界のM7以上の地震の一割がこの国で発生している地震国にっぽんそういう国がアメリカ フランスに次いで多くの原発保有国であるという事実置かれた場所で咲くには並々ならぬ勇気と覚悟がいる夏の夜のプロ野球ナイター中継一塁に滑り込んだ選手が間一髪の微妙なアウトの判定に激昂して塁審に詰め寄るどんな瞬間湯沸かし器な人でも核分裂にはとうてい及ばないまだまだ平和ボケなのかもしれない身を切る痛みを覚える前に骨を砕かれてはそれこそ身も蓋もない
2017.07.24
誰かの名遠吠えしたき夏嶺かなだれかのなとおぼえしたきなつねかな ひとりの姉が 嫁ぐ夜に 小川の岸で さみしさに 泣いた涙の なつかしさ 誰か故郷を想わざる 霧島昇
2017.07.23
過ぎ去りし一日咲くや凌霄花すぎさりしいちじつさくやのうぜんか夏たけなわでも来月早々には立秋夏休み青い空と水と解放感の季節近くの市民プールからは子供たちの歓声が夏色に響いてくる我家の娘たちも小さい頃にはよくここに連れて来た下の娘は泳ぐのは得意ではないけれど潜るのは好きだった大人の背丈ほどのプールで僕の前で潜ってはまた浮かび上がってくる自分では背が届かないから当然 僕が両脇を抱えてやる「もう一回!」高々と抱き上げる娘は息を思い切り吸い込み手を離すと水面下に潜り水底を蹴ってまた浮上してくる「プハーッ!」両脇を受け止めた僕の目の前で僕を吸い込むのではないかと思うくらい大きく口を開けて息を吸うそれを何度も何度もねだる当たり前のことだけどこの子は千に一つも僕を疑わない信じ切っている水面に顔を出した時に僕がいなかったらなんてこれぽっちも疑わない完全無欠 満幅の信頼感愛情の重心になるものが水の中に心地よく漂って人の子の親にはなってみないと分からない幸せと喜びがあることをうれしく思う そんな一日もあった今年もあちこちに凌霄の花が咲いている毎年 この花を見るとうれしかったことを書きたくなるうれしかったことを こじ付けでも思い出してみたくなる一日花の 凌霄花のように
2017.07.22
苦瓜に苦き時代を笑ふなりにがうりににがきじだいをわらうなり苦瓜も朝顔も秋の季語 だと植田から青田に変わったばかりの田んぼの横にやぐらを組んで苦瓜が生っているどこが秋の季語だと毎年のようにわめいているけれど暦の上ではもうあと二週間ほどで 立秋苦瓜に苦き時代を笑ふなりこれも毎年のようにわめいている
2017.07.21
道端に覗かせてゐる盛夏かなみちばたにのぞかせているせいかかな生前の父は家の中でどこにいるかすぐにわかる人だった別に風邪をひいているわけでもないのに時折 コホンと咳払いをした今に思うとそれは本人の居場所をわざとみんなに知らしめているような所もあってトイレなどこちらがノックをする前に父の咳がしたものだその咳が家の中のどこでも聞かれなくなったのが一番淋しいと 残された母はよく言っていた毎年 お盆になり棚経の坊さまも帰って皆が足のしびれなどさすっていると玄関の方からコホンと父の咳払いが聞こえてくるような気がする
2017.07.19
畦道にバイク繋いで田草取あぜみちにバイクつないでたぐさとり少し背の伸びた苗が水鏡だった田んぼをすっかり清々しい青田に覆い隠したときおり吹き来る風の風貌を映しながら小さな穂波がやわらかく揺れてゆく村道の向こうに広がる平野にははるかかなたの山すそまでその緑が一面となってつづいている長らくこの国を支えてきた壮大な歴史のロマンさえ感じさせるその田んぼの畦道に先ほどから一台のバイクが止まっている村道から見ているとその持ち主の姿が見受けられない畦道に入ってみると村道との側溝で一人の女性が一生懸命に草取りをなされていたバイクのハンドルには麦藁帽子 前かごには保冷の弁当か後ろの荷カゴにはヘルメットなんだかこの女性との長い付き合いのマシンに見えた子供の頃山の畑で仕事する母親をその畑の脇で待つ牛車やみかんの木に繋がれた牛を思い出すそう思うとこのバイクも牛のように畦の草を食みつつ女性の仕事の終わるのを息をしながら待っているようにも見えるもうマシンではなかった
2017.07.19
護るものひとつやふたつ薔薇の棘まもるものひとつやふたつばらのとげこの鋭い棘に相手が触れると痛がるということを薔薇はどうして知っているのだろう不思議だ
2017.07.18
海の日やアンパンマンの水バケツうみのひやアンパンマンのみずばけつ生まれた時から海は家のすぐそばにあり山もすぐ裏にあった小さい頃から何度もその海で泳いだのにあらためて海から自分たちの住む村を見ることはなかっただいぶ以前自分の子供と妻を連れて里帰りした夏浜の漁師の小舟に乗せてもらう機会があったずっと沖の方から自分の生まれ家を初めて見た海からすぐに山へとつながる山肌に家々が点々とへばりつくように並んでいたとても人が住み着くような所には見えなかった遠い昔落武者がここに住み着いたという伝説が残されている奇妙な墓石群も残っているそれを掘り起こせば 槍や刀や兜が出てくると亡き父は伝え聞いていたどうして僕はここに生まれたのだろう誰に決められたのだろう小舟の上で自分の子供を抱えながら僕はしばらく波に揺られて眺めていた噴水の上がる公園の広場で水に濡れながら子供たちが遊んでいる海の日アンパンマンのおもちゃで遊ぶ君も海の彼方か 空の彼方からいつかそうやって自分をみつめる日がくるのだろう な
2017.07.17
道草のポッケふくらむ半ズボンみちくさのポッケふくらむはんズボン毎年夏はのらりくらりとやって来てやって来たかと思うと朝夕の軒先あたりから追い立てられるようにあわてて去って行く過ぎてしまえば夏も短い短い割には 半ズボンのポケットにはたくさんの思い出が詰まっているもちろんその時点ではまだ思い出というものには熟していないのだけれど少なくとも子供の頃はそうだったこぼれた思い出が洗濯機の中でカラカラと音を出すあわてて去るものだから夏は忘れものが多い
2017.07.17
夏雲や大きな傘の中の傘なつぐもやおおきなかさのなかのかさなんと言ったらいいのかたとえば子供のころの秘密基地のような初めて買ってもらった自分だけの勉強机のようなそんな気がする 傘の中にいると傘を傾けると泣きたいだけ泣けるような誰に遠慮することなく自分をほめられるような小さな傘の中に雨の日も晴れの日もあるそう思うとつくづく地球は大きな傘に守られているんだなあと思う雲は大きな傘の中を流れる小さな傘だ傘の下には嵐の日もカンカン照りの日も寒い日ももちろん雨の日もあるけれど
2017.07.15
神戸ワインいつしかの夏を告知するこうべワインいつしかのなつをこくちする♪ 神戸 船の灯うつす 濁り水の中に 靴を投げ落とす そしてひとつが終わり そしてひとつが生まれ 夢の続き見せてくれる 相手捜すのよ ♪ 内山田洋とクールファイブ そして神戸
2017.07.12
夕端居遠い昔の恋の夢ゆうはしいとおいむかしのこいのゆめ♪ ハチのムサシは死んだのさ 畑の日だまり 土の上 遠い山奥 麦の穂が キラキラゆれてる午後でした ♪懐かしい歌だちょうど高校を卒業するころ流行ったこの頃 いっしょに流行った歌に森昌子のせんせいや 吉田拓郎の旅の宿俺たちの旅 どうにもとまらない 等々ある意味 バラエティーに富んだ歌が流行ったこの「ハチのムサシは死んだのさ」も歌詞の文句には悲哀があるのに 少し明るく元気にさっぱりとしたドラマ仕立てに歌い上げられているちょうどこのころ苦い失恋もしただから 本当はこの歌の二番が好きなのだ♪ ハチのムサシは死んだのさ 夢を見ながら死んだのさ 遠い昔の恋のゆめ 一人ぼっちで死んだのさ ♪この時代の歌が一番こころに苦く深く沁み込んでくる若いも苦いも同じ字に見えてくる あの頃夕涼みの縁台でそんな昔を団扇であおぐ端居かな
2017.07.08
追ひかけて追ひかけられて夏の風おいかけておいかけられてなつのかぜ暑い夏の日の若い少女たちのはしゃぐ姿は見ていても心涼しくなるけれど若い野郎どもはどうも暑苦しくていけない我が家にも娘が二人いる三つ違いの姉妹に妻が入るとそのかしましきこと かしましきこと男の出番などなくなる お手上げだもっとも人生皆が機嫌良い そんな日ばかりではないけれど仕事から疲れて帰っても靴を脱ぐ玄関に子供らの笑う声が届いてくると耳たぶ辺りからほんわかと癒やされてくるものがあるまた明日もがんばろうという気になる男はアホなほど単純な生きものなのだ
2017.07.06
山里は夏の次見て寡黙なりやまざとはなつのつぎみてかもくなり先日の東京都議選都民ファーストの会の大勝に終わったこの地域政党名に思い出すことがあるかつて「国民の生活が第一」という党が結成された冗談だろ と思ったのは僕だけか?そのネーミングにはいくつかの候補があがり最終的にはその党の代表者が選んだと聞くこの代表者はおそらく俳句や短歌など嗜まないのでは と思うその是非は別として大事なことほど奥ゆかしく伝えるこの国の国民性を無視してただ言葉にすればいいと思っている魂胆が見え透いているこういう輩こそ選挙となればすぐに知名度の高い芸人やアスリートを候補に立てるそんなことを党名などに使ってほしくない実行力が本当に伴なうのならまだしもただの旗振りだけに使われるのならこんなに国民をバカにする話もない我は都民ではないけれど果たして都民ファーストの会や如何に?まずは腕前拝見
2017.07.04
傘の字や四人家族の我家なりかさのじやよにんかぞくのわがやなり 日曜日昨日から降る続く雨普段だったら誰かが用事や約束事で抜けるのに昨日 今日は全くずっと四人とも同じ屋根の下めずらしい自分も雨で釣りに出かける気起こらず外の雨の音ばかり聞いているその雨を見ると 一本の傘を思い出す中学二年のある日登校した後で雨が激しく降り出した昼を過ぎても雨はやみそうになく今日は濡れて帰らねばと思っていたそんな午後の授業中教室の外に誰かがやって来た先生が応対に出て すぐに僕の名を呼んだおふくろだった おふくろが傘を持って来てくれたのだ僕はうれしいというよりなんだか恥ずかしさでいっぱいだった誰もそんな傘なんか持って来るものはいなかった後で訊くと 仕事が早くすんだので持って来たと言い今でも「お前はあの時 顔がトマトのようにまっ赤っかやったなあ」とカッカと笑いながら言う最近はもの忘れがひどいのに そんなことはよく覚えている母はそれまで学校に傘なんか持って来るようなことは一度もなかったこの時 僕はこの中学に転校してきて 数日しかたっていなかった今思うと 母はそれなりに自分の息子のことが気になっていたのだろうあの時 持って来てくれた傘はその後どうなったのか知らないけれど突然の雨が降るとあの時の一本の傘を思い出す
2017.07.03
くちなしのさびてさびしきにほひかな 若い娘(こ)はよく笑う箸がころんでも笑う道を間違えたと言っちゃ笑い道端の雀を見ちゃ笑い自転車がぶつかりそうになっちゃ笑い写真を撮っている横をふたりの女子高生風の自転車が通り過ぎて行くたった二人なのにそのにぎやかさと言ったらなんだかこちらの頬も緩んでしまう 梅雨晴間若いって いいなあ!俺にだって 青春はあったのだと叫びたくなるだったら証明してよ と笑いながら言われそうである笑うことが青春ならおじさんは酒を飲むとよく笑う笑い上戸が青春の証明になるはずもなく・・・
2017.06.30
雨粒のひとつひとつに梅雨の空あまつぶのひとつひとつにつゆのそら小学校の頃から何度か転校をくり返した初めての転校は九州の田舎から大阪へ家族で出て来た時だった国訛りが子供心に恥ずかしかった何度か転校するうちに訛りはなくなってきたけれどそのうち一人でいるのが好きになった雨の日は雨に濡れるグラウンドの風景よりも窓の雨粒に目の焦点が合うようになった一人を楽しむようになった今でも雨の窓景色を見るとオートフォーカスのように雨粒に視線を合わす自分がいる
2017.06.30
青柿や枝も葉も子は宝なりあおがきやえだもはもこはたからなり青ガキの洒落ではないけれどなかには生意気なガキもおるけれど子供の笑う声ほど救われるものはない昨今の痛ましい事件のことなどを思うと子供は虐げられ年寄りはその死さえどこかに忘れ去られ若者は時に気が狂い行き詰まった中高年は自らの命を絶つお先真っ暗のような社会に屈託のない子らのにぎやかな声は闇の遠くにかすかな灯明を見出してくれる 明治初期の頃次々と訪れる外国人がこの国ほど子供を宝物にしている国はないとその国民性に驚いたという 子を宝とするのはなにも人間だけではないけれど・・・ 実を生すものの枝や葉のまことに誇らしげであることよ
2017.06.27
くちびるに秘密の薫り立葵くちびるにひみつのかおりたちあおい 女は気まぐれ 沈む黄昏 唇よ、熱く君を語れ 誰よりも輝け 美しく 唇よ 愛に墜ちてみろよ 唇よ、熱く君を語れ 渡辺真知子どういうわけか女性の たとえば鏡の前であるいはコンパクトを開いて紅を引く姿に官能的なほどに惹かれるもちろん老若を問わず (念の為)
2017.06.26
物騒な名前だことよ鉄砲百合ぶっそうななまえだことよてっぽうゆりあれだけ銃乱射事件の起きている国アメリカで上院本会議は銃規制法案を否決し続けているさしずめ日本なら武士の時代に帯刀を規制するようなものか自分の身は自分で守るという開拓精神で始まったその国の成り立ちの歴史を思えば内政干渉はしたくないけれどそこに銃が野放図に置かれているだけでどんな不安定な人間が再び無差別に撃ってくるかわからないまた悲劇はくり返されるお国柄という言葉は平和的なことにのみ使いたいものだ もっともこの鉄砲百合になんの罪もないことはこの写真を見ればわかる鉄砲百合と名付けたこの国のお国柄だ
2017.06.23
背伸びして捩花のもうひと捩りせのびしてねじばなのもうひとねじり母親はいつまでも娘を探し 街中の札つきとネンゴロになる 父親はこれまでと闇に目をやり のら猫の瞳から愛を感じるそのとき夜空がゆがむ 悲しい娘もゆがむ 心と体と愛がねじれる 娘がねじれる時 井上陽水
2017.06.22
これからは長くなるかや夏至の夜これからはながくなるかやげしのよる小高い丘の今は人通りも途絶えた森の奥夏は涼みがてら自転車こいで折りたたみの椅子を後ろにぶら下げて出かける初めて来たときには鬱蒼としたうす暗い森の向こうから何かが出てきそうで気味が悪かったけれど何度か来るうちに 時折散歩の年寄りや犬を連れた地元の人たちに出会う戦時中の兵器庫のあったところで今は緑の森がそんな昔を覆い隠しているどこか適当な木の下で椅子に腰かけていると葉陰を通ってくる涼風がぬぐった汗の後の肌に心地よい扇風機の羽根の風はいくら自然の風だといっても真似できないそこで持って来た新聞を広げたり文庫本を読んだりする時折足をよじ登る蟻や突き刺さる蚊の槍を払いのけながらそして一段落すると横の木の周りや辺りを散策するいるいる!そこらにあるような木の幹にもただ生い茂っているような草藪にも必ず 生くるものたちがいる
2017.06.21
ずぶ濡れの夏シャツ透ける君の胸ずぶぬれのなつシャツすけるきみのむね空から雨が降ってくる思えば不思議な気がする世の中は不公平なことが多いけれど空は たいがい公平にある逃げも隠れもできない空から水が降って来る不思議 というよりも 素敵 な気がする
2017.06.20
太宰忌やメロスは今もお達者かだざいきやメロスはいまもおたっしゃかまたこの写真を使っちまったもう何年か前蚊の羽音に無意識に反射的に打ってしまった打たれた蚊はまるで小石のようにすーっと一直線に床に落ちていった蚊の命が小石の重さとは言わないけれどなんだか哀れになって写真に収めた以来 見る度に何かを語りかけてくるんだよなあ
2017.06.19
父の日やワイン一本空になりちちのひやワインいっぽんからになり 今日は午後から自転車で少し遠出夕刻あたりに帰って来るちょうど家の前に近づいたころ後ろからピザの宅配のバイクが寄って来たので脇に避けようとしたらバイクも俺の後を付いてくるなんだなんだと思ったら俺んちへの配達だった「えっ 俺とこか?」と訊いたら そうです と言う鼻筋の通ったなかなかの美男子だ玄関の鍵をあけて家の者に告げると下の娘が「ハ~イ」と言って代金を持って出てきた玄関の横に自転車を片付けながらひょいと娘の顔を見るといつになくなんだか緊張した様子そこで「この兄ちゃん なかなかのイケメンやな?」と娘に問うと 兄ちゃんの手から釣銭を受け取りながら娘はちょっぴり赤くなったような・・・また 嫌われたわでも 今夜の料理は娘ふたりの手料理テーブルには父の日に 娘二人からのシャルドネ・ワインみんなで飲んで空けてしまった飲み過ぎて 父もまた赤くなってバタンキュー酒も弱くなったなあ この頃
2017.06.18
便箋はくちなし香るものとなりびんせんはくちなしかおるものとなり条件反射梅干を見ると唾が出るヘビを見ると鳥肌が立つくちなしの匂いは真白な便箋を思い出させる高校の頃一時 文通がはやった頃があって僕も カナダの女性や日本の女子高生と文通していたある日その女子高生からの手紙の中にくちなしの花びらが同封されていて開けた途端 あのくちなしのなんとも言えない甘酸っぱい匂いが部屋中にたち込めた白い便箋に包まれたくちなしの花夏の陽射しの強くなり始めるころ家の前に 郵便の赤いバイクが止まるのを待ち遠しく思うようになった国語の教科は苦手だったけれど便箋に精一杯の文字を書きならべた♪ くちなしの白い花 お前のような花だった ♪顔も知らない相手だったけれどこの歌を聞くと あの頃を思い出す以来白い便箋からは必ずくちなしのにおいがするようになった僕の条件反射
2017.06.17
命とは不思議なものよ草の息いのちとはふしぎなものよくさのいき網戸の向こうから 涼しい風日中は暑くてもまだ 夜は過ごしやすい表の門燈のこぼれ灯が庭の草花を淡く照らす蝉の声も虫の音もまだ何も聞こえぬ静けさ何かが生まれる陣痛の前触れのように夏草が藪の奥でむっとくるような草いきれを ひと息 吐いてみせた
2017.06.15
藪の中ふたつの命夏の蝶やぶのなかふたつのいのちなつのちょう一対の蝶がどこからか飛んできて目の前の夏の草に留まる草の葉が二つの命の重さの分だけたわんで風もなく しばらく静かなり公園の少し草の茂る木陰に自転車を止めて折りたたみのイスを広げて朝刊を読む天気が良ければこのところの週末の朝の至福のひと時そうやってしばらく同じところに座っているとな~んにもないような草っ原に様々の生きものが顔を出してくる新聞を置いて挨拶代わりにカメラを向けるさっきから同じ所にいるのであまり警戒されることもない飛び立った蝶も 花の所でじっと待っているとまた戻って来る人間社会の泥臭さを忘れて 我も緑一色になる
2017.06.14
やぶ医者の庭に十薬繁茂してやぶいしゃのにわにじゅうやくはんもしていま眠れたら と思う時の眠りほど深あく沈む心地良さはない車の運転をしていてどうあがいてももがいても音楽の音量をあげても 窓開けてももうどうしようもなく両の瞼が落ちてくる時があるそんな時に車を止めてそのまま座席を後ろに倒して眠るスコーンと後頭部あたりから意識が抜け落ち記憶まで消えてしまいそうな眠りに入るそして目覚めると もうどれくらい眠ってしまったのかとハッとして時計を見るほんのまだ五分か十分くらいしか経っていない時があるそれでもよく眠った感覚があるいま眠れたら と思う時に眠れるほどぜいたくな幸せはない
2017.06.13
栗の花どこがどうして毬となるくりのはなどこがどうしていがとなる子供の頃の家の裏山にも栗の木があったけれどあまり喜び勇んだ記憶がない他の蜜柑や柿 梨や桃 枇杷やバナナの木のようによじ登ってすぐに食えるわけではないましてやあんなイガイガだらけの栗の実せいぜい口割れて落ちているのを家に持って帰るくらいだただあんな精気臭い栗の花からあんな形の栗の実が生まれるのが子供心にも不思議な気がした
2017.06.11
戻りくる頭待つ身や夏帽子もどりくるあたままつみやなつぼうしそれは、宿が用意した弁当の包み紙から始まった。作家、森村誠一さんは代表作「人間の証明」の後書きで、大学三年の終わりごろに霧積温泉から浅間高原へ歩いたことを記している。就職難で、先行きが見通せない中での単独行だった。昼になって握り飯の弁当を広げると、包み紙に刷られた西条八十の詩「帽子」が目に留まった。<母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね? えゝ、夏碓氷から霧積へ行くみちで、 渓谷へ落としたあの麦藁帽子ですよ。>「将来に対する悲観の中で邂逅した麦藁帽子の詩は、乾いた土に水が浸み込むように私の心の奥深く浸透して、二十数年間そこに沈着し、再び沸き出る日をじっと待っていた。私は吹きつけるような母へのなつかしさの中に立ちすくみながら、麦藁帽子の詩をテーマに小説を書こうと思った」と森村さんは書いている。こうして「人間の証明」が生まれた。 「2013年4月21日 読売新聞 日曜版 名言巡礼」より抜粋この作品が映画化されたころ視聴メディアを使ってくり返しくり返し流されたあの詩の一節と谷底に落ちる帽子の映像はこの自分にも強烈な印象を残した残した というよりも記憶の細胞に閉じ込めていたものを鮮やかに甦らせた小学校に上がったころ男子はみな制帽があっていつもその帽子を被って登校していたある日友だちとふたりでの帰り道ふざけて帽子投げを始めた何かの拍子に僕は友だちの帽子を誤って海岸沿いの崖下の方に投げてしまった前は海で後ろは山の切り立った所に道はあり取りに行けるような場所ではなかったちょうどあの映画の麦藁帽子のように友だちの帽子ははるか下の岩場の樹木の中に落ちて行ったそれからどうしたのか記憶がない帽子を弁償するにも家は貧乏だったから母には言えなかった友だちのお母さんが家に来たとは後で聞いたけれど母が弁償したのかどうなったのか定かではないだからこの映画の宣伝が始まったころあの落ちてゆく帽子を見ながら僕は母さん あの帽子どうしたでせうね?と尋ねたことがある母は 何も覚えていなかったどうなったのだろう?あの帽子
2017.06.10
花に化け触角の蕊梅雨の蝶はなにばけしょっかくのしべつゆのちょう 姫女苑の白い花が風にゆれている紋白蝶が細い茎にしがみついているいつからそうしているのか近寄っても逃げもしない長い触角を花の蕊に似せて花のつもりでいるのかもしれないこちらも騙されたふりをしてその擬態の白き花をカメラに収めるいつまでそうしているのか折りたたまれた花びらから花粉のように鱗粉が風に舞う
2017.06.09
落着かぬ日の傾きて鍵拾ふ心だったり体だったり存在だったり合鍵には何かを許すものがある全くの見知らぬ者に持たせることはない子供が小さい頃公園の砂場で遊んだ日ついでに近くのスーパーで買い物をして帰った帰ってから妻が持って出た家の鍵のないことに気づいたもう日が暮れかかっていたとりあえず 今日遊んだ公園に行ってみた妻とあちこち下ばかり向いて捜したが見つからないふっと見上げた砂場の滑り台の柱に見たようなストラップがぶら下がっていたその先には我家の鍵が付いていた誰かが拾ってくれて 捜しに来た時を考えそこに下げてくれたのだろううす暗くなった公園の砂場でふたりして大いに喜んだ拾ってくれた人に感謝した先日 道端で鍵を拾った輪っかの錆具合から昨日今日落とされたものではない持ち主はもうとっくに新しい鍵を作っていることだろう落とした方も 見つからなければしばらく落ち着かないもんだ許した覚えのない者に合鍵をやるようなもんだ拾った方も他人の家を覗くようで落ち着かない持っていることに気が引けるもう捜しに来ることはないだろうでも 近くのフェンスの柱にくくりつけてきた遅ればせながらの恩返しである
2017.06.09
遊女の情より固き夾竹桃あそびめのじょうよりかたききょうちくとう竹の葉に 桃の花いかにも毒々しい色気が漂う得てして男は毒のある女に狂いやすい白百合に恋した心などこの花の蕾の開く香気にあっという間に虜にされる毒は薬にもなるが 絶品の味ものにもなる命をかけて食うものもいる毒のある花は雨の日は花びらを憐憫の色に濡らす泣きくずれた女の背中を見せる晴れた日にはふたつとない晴れやかな笑顔を見せる夕暮れにはまた逢いたいと しおらしく媚びて見せるその細長い葉を両腕にして 首に回してくるぬらっとしたピンクの唇は触れるか触れぬかの感触で首筋あたりをねぶってくるもう立っていられなくなるその時頭に水が飛んできた妻がホースで庭に水を撒いていた「あっ ごめん そんな所にいたん?」わざとらしく言う夾竹桃の木陰のイスでうたた寝をしていた毒は毒で制す毒は妻が制すよく似ている夾竹桃の毒消しは嫉妬心なのかもしれない
2017.06.09
睡蓮のまだあどけなき白さかなすいれんのまだあどけなきしろさかな 好きだよと言えずに 初恋は ふりこ細工の心 浅い夢だから 胸を離れない 初恋 村下孝蔵 好きだよと 言えた奴おるのかなあ~? 初恋は
2017.06.08
足の裏代掻きさるるやはらかさあしのうらしろかきさるるやはらかさ初夏の田植えの頃の風景と秋の収穫の稲刈りの風景その間を流れる時間にいくつの不安と期待と祈りがあるのだろうこういう風景を見ると大地を踏みしめてきた足の裏がどうもむずむずしてならないじっとしておれない豊作の祈りと収穫への感謝祭りの原点がある
2017.06.06
年寄りを額ずかせてや花菖蒲としよりをぬかずかせてやはなしょうぶ近郊の菖蒲園をのぞきに行く毎年 今頃になると開催される訪れるほとんどの人が撮影機を持っている携帯のカメラで撮る人 コンデジの人 本格的な人老松 初紅 松の雪 津の花 紀の国 初紫 小紫 花車・・・まだまだある花菖蒲の名前疲れてベンチで休んでいると 目の前に次々とカメラマンがやってきていろんなポーズで撮影していく自分もたくさんの菖蒲の花を撮ったけれどなんだかそれを撮る人の方が面白くなってきた年齢にかかわらず女性のカメラ構える姿もまたモデルなり艶っぽい大きなカメラバッグを背負った年配のカメラマンが 地面に跪いて花菖蒲に対峙するいろんな人のそんな光景の方がよっぽど面白かった花菖蒲を撮りに行ったのに・・・
2017.06.06
芒種とて何を蒔かんやこの齢ぼうしゅとてなにをまかんやこのよわいこころに種を蒔いたとて
2017.06.05
少年は何処へ行つたかソーダ水しょうねんはどこへいったかソーダすい僕らが昔田舎の学校に入った頃は靴が買えなくて裸足で学校に来ている子もいた靴があっても裸足で行くこともあったそんなに珍しいことではなかった運動会も裸足で走ったそんなことだから何年生の時だったか足の裏に魚の目ができて歩くのも痛かった親が医者に連れて行って切除してくれたのだがそれから幾日か 学校に行くのにバスで行かせてくれたけれども学校の帰りは当時5円だったか10円だったかの母親にもらったバス賃で駄菓子屋でお菓子を買い 不自由な足を引きずって帰ったちっとも痛いとは思わなかった今でも痕の残る足の裏にあの日の坊主頭の少年を見る何かのきっかけであの日の少年が帰って来るどこかへ行ったのはイルカにのった少年だけではないのであるそれにしても少年の靴にしてはちとでかすぎるような気もするけれど・・・
2017.06.03
息を吐く夏の楽譜のクレシェンドいきをはくなつのがくふのクレシェンド 年をとると冬の寒さより夏の暑さが骨身に応える夏が本気モードになってくるとこちらの心はため息をつきそんなことお構いなしに夏の方は鼻息荒くなる子供の頃の夏を懐かしみながら入道雲の湧き立つ空を見上げるもっともこの頃は 冬になればなったで暑さより寒さが身に応えるととぼけたようなことを悪あがきしているような気もするけれど・・・ 優柔不断がなんとか息をして生きている
2017.06.03
そばかすの彼女も今は孫ふたりそばかすのかのじょもいまはまごふたりりんご畑の樹の下に おのづからなる細道は 誰が踏みそめしかたみぞと 問ひたまふこそこひしけれ 島崎藤村 初恋 詩集「若菜集」より
2017.06.02
暦より食卓に六月ありきこよみよりしょくたくにろくがつありき六月父と母と 畑仕事に行った子供の頃山道の脇に湧き出る湧水をみんなで飲んだコップなどない父が大きな葉っぱを二つ折りにして水をくんで渡してくれる宝石のようにきらきらと輝く水が緑のコップの中でゆれていた笑う薬が入っているかのようにその水を飲むとみんな笑顔になった僕らも真似をして水をくんでは弟や妹と水かけをして遊んだ何年か前の夏法事で久しぶりに故郷の田舎に帰った山の畑を見に行ったもうとっくに畑ではなくなって一面に植えられた杉の木が空高く聳え立っていたそこにあった 家族で昼飯を食った小屋も牛を繋いでいた蜜柑の木ももう跡形もなくただ夏草が深々と生い茂っているだけだったその帰り道ふと思い出してあの湧き水のあった所に寄ってみた大きな目印の岩があってその下には今もあの湧き水が昔と同じようにこんこんと湧き出していた近くの土に軽トラのタイヤの痕があるので現在も山仕事の人に使われているのだろう亡き父の真似をして近くの木の葉っぱをコップにして湧き水を飲んでみる僕の喉はおよそ半世紀の前の味を覚えていたあの時と同じ笑い薬ともうひとつ 妙にしょっぱい思い出薬が入っていた
2017.06.01
卓上に遠き島よりのバナナゐるたくじょうにとおきしまよりのバナナいる・・・幼かったあの頃バナナは高級品でおたふく風邪で幼稚園を休んだときに先生が見舞いに一本持ってきてくれました家族で六切れにして食べました田舎でほとんどの家が貧しかったあの頃・・・以前の写真俳句ブログのくうさんからいただいた感動のコメントの一部バナナを見るといつも彼女のコメントを思い出すもう八年ほども前のことなのに・・・
2017.05.31
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