山本浩司の雑談室3

山本浩司の雑談室3

2020.10.15
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
前回の続きです。

根抵当権において、債務者の変更の履歴を登記記録に載せることを要する理由は、「公示の必要があるから」以外にはありえないでしょう。

それは、根抵当権の債務者は、根抵当権という物権の要素であり、内容だからです。

以下、順に説明します。

所有権の場合、その内容を公示する必要がありません。所有権の内容はすべて法令事項だからです。

公示すべきことがあったとしても、共有物分割禁止の定め、権利失効の定め程度ですが、いずれも所有権に限ったハナシではありませんし、この二つは。登記されることもまれです。

つまり「これこれこういう所有権です」と公示する必要がありません。

抵当権では、たんに、担保権です、目的不動産の交換価値を把握しますということでは、公示内容として足りません。
これこれの債権を担保する権利です、その限りで目的不動産の担保価値を把握しますというカタチで公示します。
よって、被担保債権の内容の登記を要しますが、この場合に債務者の表示が日陰者の扱いをうけることは、既に述べたとおりです。

では、根抵当権はどうか。
もちろん、たんに、根抵当権ですと、不特定の債権を担保しますというだけでは全く公示内容として不足です。
具体的には、こういう債権が被担保債権となりますということを公示しなければなりません。
そこで、次の3つの要素の公示を要します。

1、極度額 いくらまで担保するのか 優先弁済の額
2、債権の範囲 どういうレッテルの債権が担保されるのか 担保される債権とされない債権の区分け
3、債務者 誰に対する債権が担保されるのか その者以外が債務者となったとき、その債権は無担保債権となることの基準。

以上を公示してはじめて、根抵当権の内容が明らかとなります。

だから、そういう重要事項だから、債務者の住所が変更したときも、住所の変更のみを登記せず、住所氏名をセットで変更後の債務者の表示をまるごと登記するのですね。

さらに、根抵当権の債務者の変更は、もともと、ひじょうにデリケートな問題なのです。
以下、住所変更のハナシから飛びまして、根抵当権の債務者の人物そのものの変更について考えてみましょう。

次の規定を見てみましょう。司法書士の受験生なら穴のあくほど見たことがあるはずです(債務者の変更に係る部分のみの要約です)。

民法398条の4
1項 元本の確定前においては、根抵当権の債務者の変更をすることができる。
2項 前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の利害関係人の承諾を得ることを要しない。
3項 第1項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみます。

この条文は何を意味しているのでしょうか。

まず、根抵当権の債務者の変更には、後順位の抵当権者その他の 利害関係人が存在するのです。

すなわち、根抵当権の債務者が変わり、その被担保債権の内容が劇的に変化することは、利害関係人に重大な影響があるわけです。

しかし、この変更は、もともと根抵当権者が把握している担保価値の上限(極度額のこと)には影響がないので、債務者の変更について、利害関係人の承諾は要しません(2項)。

ですが、あくまで、利害関係人は存在しうるので、その変更は、これを公示しないかぎり(つまり、登記をして利害関係人への周知をしない限り)、変更の効力そのものが否定されます(3項)。

密室で、債務者を変更しても、何の効力も生じません。
債務者は公示されることを要します。

この取り扱いの厳格さは、根抵当権ならではのものです。

つまり、根抵当権の債務者は、利害関係人のために周知を要する事項です。

そして、このことが、根抵当権の債務者の住所の移転の登記の方法にも影響を与えると、名古屋法務局は考えたのでしょう。

もちろん、根抵当権の債務者の住所の変更の登記を怠っても、根抵当権の効力に影響があるとまではいえません。
しかし、根抵当権の債務者の登記のデリケートな背景に着目すれば、その変更の過程を、個物に公示することが望ましいと考えることが自然です。

なにより、法令上、根抵当権の債務者の住所変更の登記を一括申請できるという規定はありませんから、なにか特別な根拠がなければ、一括申請できない方向から議論を進めるべき問題ともいえます。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2020.10.15 16:03:40


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: