やまぶろぐ・登る呑む撮る滑る山ブロガー

2017/10/05
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カテゴリ: 沢登り
■概要
釜谷核心部の「爆笑の滝」の高巻きにおいて、岩棚
に置いたザックが転がり落ちそうになったのを
見て、手を伸ばしたらバランスを崩して転落した。

推定転落距離は、自分自身は10m、ザックは40m。

人的被害:なし
物的被害:ザック内部浸水、カメラ(MX-1)浸水
故障、全天球カメラ(THETA SC)浸水故障、無線
機アンテナ喪失

■原因
・ザックの仮置き場所が不安定だった
・ザックが重たくて背負いにくかった
・高巻きのルートファインディングに失敗して
 焦っていた
・2013年時もロープなしで高巻きしたので今回も
 同様にできると思った
・釜谷には過去2回入っているという驕りがあった
・岩棚のトラバースに危険性を認識しておきながら
 ロープを出さなかった

■一番言いたいこと
山勘は大事。

遡行中に嫌な雰囲気を感じていたのだが、ある目的
があって何としても遡行したいという気持ちが
強かった。

それが行動中の判断を狂わせてこういう結果に
なってしまったと思っている。

登山の経験を積むと、この先行っていいのか行って
はダメなのか、理屈で説明できないのだが分かる
ようになってくる。

その何となく感じる嫌だなーという気持ちを大切に
すべきだと思う。

■詳細記録(時系列)
5:00 G会館集合。水なしでの一泊装備と登攀具
で14.4kgは少し重いと感じる。J君と二人、
ラパンSSで片貝川上流を目指す。


南又発電所前の林道の鎖は、用意していた鍵で開錠
して進む。上流の取水口前の広場までクルマは
入った。


6:24 930m 出発。背丈を越える廃林道のヤブ
漕ぎから始まる。夜露で直ぐに全身がびしょびしょ
になり、気分が乗らない。

廃林道のS字カーブをショートカットしようとした
際に足元が滑り、斜面に付いた指を深く切って
しまった。手の平側ではないから遡行には大して
影響はないのだが、モチベーションは下がる。

7:07 1035m 南又谷の流れに立つ。無情にも
雨が降り、モチベーションをさらに低下させる。
ここまでのヤブ漕ぎで全身濡れているので、降雨
での撤退は考えない。二つ堰堤を越えて遡行を開始
する。

7:39 1082m 南又谷と釜谷の出合い。天候は
回復に向かうという予報であったが、この後も雨は
降ったり止んだりが続いた。

8:32 1238m 右カーブ、GPSで現在位置を記録
する。ここまで一気に来た、ザックを下ろし休憩。

どこであったか忘れたが、遡行中に沢靴の右足の紐
が切れているのに気付く。そんなものが切れること
自体がおかしいと思いながら、フィッシャーマンズ
ノットでつないで遡行を続けた。

9:15 1360m 滝場。ロープを出すか微妙な壁
(左岸)であるが、安全を期すことにした。

やまやろうがトップで登る。雨で濡れた岩壁が
いやらしいが、足場はしっかりしている。頼りに
ならない潅木に、保険的にビレイを取って、滝上の
潅木に支点を取る。

10:02 1373m 登攀終了。

10:18 1422m 「爆笑の滝」に来た。この先が
釜谷の核心部である。GPSで現在位置を記録する。

10:29 迫力ある滝の写真を撮ってから、高巻き
に入る。​ 2013年遡行時 ​の左岸ルンゼを詰め上げ、
潅木の茂る岩棚に入る。

岩棚伝いに水平移動すると、最後の滝が正面に見え
る。2013年遡行時よりも高度が低いのだ。さらに
上げる必要がある。

一段上の岩棚のトラバース。潅木と岩壁の隙間が
狭くて抜けられないので、一度ザックを外して身体
一つで抜け、ザックを引きずり下ろした。壁側に
ザックを立て掛けて、再び背負おうとした時に
ザックが転がり落ちそうになった。

止めようと手を伸ばしたら、自分もバランスを
崩して、声を上げる間もなく転がり出す。何とか
して制動しようとか障害物に当たらないように
しようとか、そんなことは一切考えることができ
ないままに、重力に任せて落ちた。

転がり出したら、自力で何かをしようということは
不可能だ。滝壺まで落ちたらまずいな、という意識
はあった。

突然うつぶせ姿勢で止まる。奥行き2mほどの平ら
な岩棚があったのだ。身体はどこも痛くない。手足
も無事だ。「生きてるぞー!怪我はないー!」と
叫んで、上にいるJ君に無事を伝える。救助のため
に下りて来て欲しいことを告げる。

待っている間に下方を覗いてみたところ、一緒に
転落したザックは滝壷まで落ち、水流の岩の角に
引っかかって浮かんでいた。

11:00 時計を見た。同じところを落ちたのに、
自分は岩棚に留まりザックは滝壺まで落ちた。
これは奇跡に近いのではないか。今は、ザック回収
と下山のことだけを考える。

先ずは救助のために、J君に下ってきてもらう。
30mロープをダブルにして懸垂下降。末端の余り
具合からして、自分は10mは転落していると推定
された。

落ちてきたところを見上げると、幅広のV字型の
ルンゼになっている。転落時に潅木や岩角などに
衝突しなかったのは、このルンゼの中を転がって
きたからなのだろう。

下降してきたJ君と合流したら、すぐさまザックの
回収作業にかかる。できるだけ下方の潅木に支点を
取り、30mロープシングルで流れまで懸垂下降する
(J君は岩棚で待機)。

バックアップのプルージックがなかなかセットでき
ない。精神的に混乱しているのだ。下降前にJ君と
は笛での連絡方法を決めておく。長笛はYES、短笛
はNOの意味。

懸垂下降を始めたら切り立ったすべすべの壁となり
真っ直ぐに下れない。ロープの擦れるのが嫌なの
だが、右方に巻きつつポットホールの中に下りる。
ロープ長さはぎりぎりであった。

11:36 流れに浮かぶザックを無事に回収できた
ものの、非常に重い。ザックの中身が水を吸った
ようだ。徒渉のない沢登りなので、防水袋の閉じ口
を折り返していなかったのだ。

30分以上浸水したので、チェストハーネスに付け
ていたカメラはダメだろう。同じところに付けて
いたスマホは問題なく起動した(防水機能あり)。

転落した現場を記録のためにスマホで撮影する。
下り立った場所にあったポットホールを撮影できた
のは貴重であった。たくさん写真を撮影する時間的
かつ精神的余裕はない。

ザックを担いでシングルロープで登り返すことに
なるが、非常に苦労する。ポットホールの岩盤は、
表面がツルツルな上に切り立っており、直登はでき
なかった。プルージックで登ることもできず、J君
に引き上げてもらうことにした(セカンドのビレイ
方式)。

ポットホールの左方の段差を這い上がり、斜上する
と2mほどのハング気味の垂壁に入る。ここがどう
しても抜けられない。

垂壁上のホールドは短いササしかなく、それを
掴んでも足がかりがないので乗り越せない。
プルージックを足がかりにしても、ロープが自重で
伸びて垂壁の上に身体を持っていけないのだ。

仕方がないので右方の、懸垂下降してきた斜面に
向かう。ここも岩の表面が滑らかな上にホールドに
乏しい。

もし滑落したら大きく左に振られることになり、
とてもリスキーだとは認識していたが、他にルート
はなかった。

J君にロープを緩めてもらい何とか潅木帯に至る。
セルフビレイを確保し、ロープを外した。

この後は数mの距離でJ君と合流できるのである
が、ササの茎が斜め下に並び、フェルトソールが
もの凄く滑るのだ。

ここで滑落でもしようものなら、今度こそ無事では
済まされない。全身の筋肉に力を込めて、潅木を
掴みつつ這うように高みを目指した。

12:17 J君と合流、握手。ゴボウの連続で全身が
力尽きた。しばらく動くことができなかった。

12:35 1485m 落ち着いたところで、高巻き
ルートを引き返す。J君とは安全最優先で行動する
ことを確認し合った。

12:48 1506m 岩棚が途切れたので懸垂下降
する。ロープを放り投げたら絡まる(2回)、予期
せぬ方向に振られて空中懸垂となる、ロープが
キンクする、などイライラが募るが、ひとつひとつ
の作業を確実にこなしていく。

13:26 1480m 30mロープダブルで緩い草付き
ルンゼに入る。ここは高巻きで入ったルンゼの上方
斜面と判明。そのまま下れば「爆笑の滝」に出る
ことが分かった。

14:02 1423m 「爆笑の滝」。緊張する核心部
はここで終わる。今日中に生きて帰ろう。

14:16 1373m 滝場の懸垂下降。潅木に残置
スリングを見つける。新規にスリングを使った。

14:40 1361m 懸垂下降終了。

16:24 1078m 猫又谷出合い。

17:04 遡行を終え、林道歩き開始。

17:48 921m 駐車地点に到着。

18:40 G会館到着。

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Last updated  2017/10/05 11:47:24 PM


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