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April 19, 2026
昭和をたどり直して破壊と再生へ――「AKIRA」の懐かしいパワー
テーマ:
SF・ファンタジー・空想小説・・・現実逃避読書生活(335)
カテゴリ:
カテゴリ未分類
「AKIRA」
(画像は1988年当時の前売り券とパンフレット)
。
お正月にTVでもやってましたが、やはり映画館でのド迫力は圧巻! オープニングのドーンから、ねぶたとケチャを混ぜ合わせたハイテンポなテーマ曲へ、細胞が沸き立つような
山城組
のサウンドが、パワフルでショッキングな感動をよみがえらせてくれました。
原作を読んでいないので、当時「とにかくすごいらしい」というだけで観たものの、バイオレンスと悪夢、破壊に次ぐ破壊で、細部に目を凝らす余裕もなく、結構いっぱいいっぱいになったのを覚えています。サイバーパンク体験てこういうのかなあ、と。
なぜか後々まで私の心に残ったのは、数珠を手に吠えるように祈る教祖ミヤコ様と、信者が路面に大筆で書く「AKIRA」のパフォーマンスでした。人々の鬱積した不満や不安がふくれあがり、このような形で現れるのを初めて観たのです。宗教ってよそ事ではなく、こんなふうに社会に生まれてパワーアップし、人々を駆り立てる可能性もある、ということ。拙作
『海鳴りの石』
3巻に登場する、奇声を発する占い女はミヤコ様がモデルだったりします。
数年後にオウム真理教がニュースの話題になった時も、私はミヤコ様を思い出しました。
「AKIRA」では、ネオ東京の高層ビル群と対照的な、周囲の地べたでうごめくごちゃごちゃした歓楽街、スラム、デモ隊などが、当時から何やら懐かしさを感じさせていました。再度観て思うのは、やはり「昭和」、第二次大戦後~バブル期の歴史がにじみ出ていたのですね。
冒頭のドーン(新型爆弾)は原爆、大戦と復興は40~50年代、革命運動は60~70年代の学生運動(デモ隊の旗に「反帝」と書かれているのがいかにも古い。令和の若者は意味分かるの?)、そして飽和した金満文化の陰に世紀末の何か不穏な予兆があって(80年代)・・・と。
作者の
大友克洋
もその意識で描いていたと、先ほど調べていて知りました(昔のパンフレットにはそんなこと書いてなかったし)。
思えば80年代後半、「世紀末」という言葉がどんどん増殖し、次の世紀になる前に、浄化というか禊ぎというか、何らかの関門/敷居/試練/破壊を越えねばならないのだろう、みたいな終末と再生の予感が大きくなっていました。
『風の谷のナウシカ』
などの、核戦争後の世界を描いた創作がたくさん生まれたのも、そのせいでしょう。
夜にまばゆい高層ビル群を斜めに見上げる形で、金田くんと一緒に疾走すると、ストーリーは破壊と混乱へ突き進んでいきます。ふくらましすぎた風船が割れるように、自らのパワーの膨張で「爆発」てしまうテツオ、そして東京。人々は破壊に巻きこまれ、おしつぶされ、せめぎあい、それでも未来へ向かってもがく、そんなパワーが画面狭しとあふれています。
結局そのパワーは東京を破壊し尽くしたあと、ブラックホールのように超能力関係者を別の宇宙へと吸いこんでいき、廃墟に平穏が戻ります。水没した都市は浄化されたごとく陽光に照らされ、人々は瓦礫の中からまた歩み始めるだろう、というエンディング(映画版。原作は違うそうです)は、また第二次大戦後に戻ったかのようです。
ただ、AKIRAのパワーの源は、誰の細胞にも、いや生き物すべてに宿っている(生存・進化のパワー)とされます。この考えは他のSFにもあり、例えばスター・ウォーズのフォースとか、ファースト・ガンダムの「人の革新」とか。
そう考えると、世代や歴史を繰り返しながら生命が進化しつづけたように、変化は「もう始まっている」、止まらないのでしょうね。第二次大戦後の世界が原子力という恐るべきパワーを抱えて歩み始めたように、金田くんたちはAKIRAのパワーを抱えて歩んでいく。
と、そんな未来展望の映画だったのだなあ、と改めて思い出しました。
2020年の4K版のキャッチコピーは「時代がようやく追いついた」ですが、物語の時代設定2019年を過ぎた今、現実はどうなんだろう、と思います。自分が年を取ったこともありますが、昨今の世の中には「AKIRA」ほどの(つまり昭和時代ほどの)人的パワーがあまり感じられない気がするのです。
未来へ進むパワーはもっぱら、人間の代わりに仕事をし考えるロボットやAIの開発に、そして、現実の代わりに体験し楽しみ学ぶバーチャル世界に、注がれているように思えます。
出生率も減ったりして、人間自体のパワーは、小さくなっていくような・・・そう、
『やがて人に与えられた時が満ちて…』(池澤夏樹)
のように、静かでエネルギーの縮小するエンディングへ向かっているような気がするのです。それもまた、未来の再生へつながる一つの浄化であり試練であるのかもしれない、という気もしますが。
「AKIRA」時代の細胞パワーを懐かしく回顧するHANNAでした。
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Last updated April 19, 2026 10:26:35 PM
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