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2023.09.05
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カテゴリ: 映画➕アルファ






監督  森達也
企画、脚本に  荒井晴彦ほか
音楽  鈴木慶一


森達也といえばどちらかといえばドキュメンタリー作家の印象だけど、こんなオーソドックスな抒情的シーンも描けるんだな。

そこは荒井晴彦氏の手腕なのだろうか。
でも女性の描き方が相変らず、というか。
しかし、それを突き抜けたような 田中麗奈 は良かった。 水道橋博士 の怪演は驚きだった。


⬛️ 館内

劇場に着いた時点で満席。前日に予約したとき既に3分の2は埋まっていたので、平日午前ならともかく当日席は難しいだろう。そのくらいの入り。

団塊世代の方が過半数?若い女性も。若い人はどちらかというと一人で来てる人が多い印象。若くない私も一人で来た。


⬛️ 予め知っていたこと

関東大震災時の流言飛語については、高校日本史資料で目にしたが、授業でまともに取り上げられなかったように思う。今の高校生はどうだろうか?

方言を理解してもらえず、香川県から来た薬売り一家が村の自警団によって殺戮された史実は既に20年前に上梓されていた事を私は知らなかった。


⬛️ 差別を知る


被差別部落に関しては、高校の三年間で1時限割いた授業があった。それまでそんな事は何も知らず、周囲からは半ば浮いていたかもしれない。

後年、網野善彦 の歴史本に触れて初めて政治的な側面と祭司に纏わる歴史から、ある時点で民間の中にそのような差別意識がフィックスしたことを知った。

差別されるものはより下に置かれたものを差別することで自身を浮揚させようとする。それが大多数の私たちだ。

学生時代に流行したアジアンテイストなワンピースで街を友人と歩いていたら、年配の二人連れ女性から、チョン公と罵られた経験がある。

私はその時何の事かさっぱり分からなかったが、友人が教えてくれた。罵った女性二人は明らかに夜の飲み屋かキャバレー嬢の風体なのだ。切ない。

勤務先からの帰途、迷子の男の子がいた。聞くと遊んでいた同級生とはぐれてしまい、帰り道が分からないという。転校生かと聞くと、 福島からという。
大震災後ままないことだった。

大人に言われ遊ぶふりをしてわざと放り出す、そんな経緯が見えた。私は悔しいやら腹立たしいやら、男の子を学校の見えるところまで案内し、副校長に訴えた。

心ない言葉をぶつける子たちがいる事を知った。
避難してきた子どもの胸の内を想像することすらない。共感の気持ちはどこへいったのか。

知らないところで気づかないところで、大小様々の悪意が徒党を組んで差別を生む。


⬛️ 映画に見られる 差別構造


しかし、一方で時代の空気に流されない、屹立した個を際立たせる人間がいる。 永山瑛太 演じる薬売りの頭目もそんな一人。

ツイ最近まで忌み嫌われ、強制的に隔離されていた らい病=ハンセン病者に商機とみるや臆せず近づく。

憐れみと商売気のないまぜが可笑しいけれど、村人は伝染を恐れ近寄らないのだ。

いつもケチな彼は、鮮人とののしられている飴売り娘の飴を女子どもに大盤振る舞いしたりもする。

ところで飴売り役の女優さんが可憐で、素晴らしかった。そのシーンだけで涙ぐんだ。

自警団が武器を携え激昂して取り巻き、口々にお前らは鮮人だろうと罵る。薬売りは自分たちは日本人だ、と言うが、頭目は「朝鮮人なら殺していいのか」と自警団に問い返すのだ。


薬売りらは部落出身者だった。


田舎か都会か、高学歴か否か、金持ちか貧乏人か
病者か健康か、日本人か他国人か、支配者か被支配者か、定職者か行商人か、常民か否か、或いは思想による峻別も描かれる。

大震災のどさくさに獄死した共産主義、社会主義、労働運動に携わる若い人たちが沢山いた。
亀戸事件  としてしられているが、映画はそれにも触れている。

この時に 民本主義活動 をしていた 吉野作造 も追われていた。 『君たちはどう明らか』 著者で、戦後 岩波少年文庫 を編集にあたった思想家だ。

宮崎駿 は岩波少年文庫で育った人だ。


⬛️ 真相を知りたい。声にしたい。

日本人の本性というものを知りたい。
その歴史、背景を知りたい。
特殊な環境下で自分がどんな立場を取るか、あらゆる可能性を考え尽くしておきたい。

そのためにはできるだけ、事実を知ることだ。
それを担保するのが報道だ。

ところが報道は知る権利を報道しないことで歪めている。昔からそうで、今もそうだ。だから情報を鵜呑みにしてはいけない。

朝日新聞の天声人語と、政治社会面に報道していることのギャップに驚く。購読者を馬鹿にしている。口先だけ、ペン先だけなら何でも言える書ける。

心がない。

映画では小さな地方紙ではあるが、報道の世界で真っ直ぐに使命を生きる若い女性が

「書かなかったことでどれだけの犠牲者が出たか。新聞記者には書く責任がある。朝鮮人だろうが日本人だろうが、何人だろうといい人も悪い人もいる。そうではないですか。」

と上司に訴える。

青臭い使命感だろうか。この青臭さがないから今、日本は混迷しているのではないだろうか。


ラストシーンが強烈で、靄のかかるような利根川をどこへたどり着くかも知れない舟に一組の男女が乗っている。

どこへ行くの?

男は明確な答えを持っていない。





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最終更新日  2023.09.05 12:36:11
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