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2024.05.05
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テーマ: 読書(8667)
カテゴリ: ふみ読むみち





〈DATA〉
出版社 新潮社
著者 橋本治

2007年12月20日  発行

初出 「新潮」2004年、2005年、2006年
最終章書き下ろし


〈私的読書メーター〉 どんな恵みなのかと読めば存外、小林秀雄の『本居宣長』を論破するような箇所が多々見受けられ刺激的。いきなり第1章から炸裂、源氏物語の中で和歌がどのように仕組まれているか。地の文に対する「生の声」=和歌が身分の上下を無効にする考察が小林秀雄にあったかなんぞとエクスキューズする。橋本氏曰く、小林秀雄は本居宣長を近代知から理解しているが自分は近世は理解しているが近代に疎い、ってそうなの⁈その場所から宣長にかぶく小林秀雄を観察して近代知識人の理解に迫る、と。そして尚小林秀雄を自身のおじいちゃんと仮定し敬愛捧ぐ、とな〉


港の見える丘公園の 県立近代文学館 で開催されている橋本治展。

そこで彼の夥しい量の生原稿に目を奪われるだろう。若い頃に何個か潰したらしいワードプロセッサーも展示されていたけれど、いつの間にか手書きの人になっていたのだった。

手編みの人でもある。とにかく手を動かす事が好きだった、と想像する。考える手、の人。

37歳の時に、ちょっと前にベストセラーになっていた『本居宣長』を読んだ所、 悪路を行くバスに乗っている気分 になったとか。しかし 小林秀雄っていい人じゃん! と思った橋本さん。

いい人じゃん、と思わせる小林秀雄の社会人、生活人、家庭人としての骨格が清潔な音を立てている、と私も感じる。その背景の本居宣長なのだね。



橋本氏、五十を超えて再び読んだ時には、既に 清少納言 紫式部 も超訳しており、徒手空拳ではなかったのだった。

多分、古典にどっぷり浸かった体験をとおして、
小林秀雄に向けてなかなか鋭いツッコミを入れて
いる訳だ。

〈「本居宣長をよむ小林秀雄」の本を読んでいる近代的センスの知識人〉なる層を、本書のターゲットにしている橋本さんとしては、小林秀雄に、ほーほーと感心している場合ではないのだ。

仮定おじいちゃん とも仰ぐ小林秀雄の本居宣長観に新しい視座をぶつけないでは仮定おじいちゃんは喜ばんやろう!といった橋本流の仁義の切り方なんだろうなあと思う。天晴れ。

何となれば、深いトンネルを掘って無意識の内にそれら古典へと橋本氏を辿らせてくれたのが、若いときに遭遇した小林秀雄に他ならない。

だから、 小林秀雄の恵み

↓長女の白州明子さんと、小林秀雄。白皙の、と言わずして何と讃える美貌


小林秀雄が指摘していた、 「下順上」 から 「下剋上」 に至る歴史の流れの中で、時代の要求に先駆けて学問の独立に目覚めた 中江藤樹 なら、 大言海 が解く でもくらしい を理解する云々への、橋本氏の平安時代からそちらへの長い論考も興味深い。


小林秀雄が能の 当麻 を観て、シテの登壇した刹那、美の敗北者になった件、橋本さんは小林秀雄の著作をさまで読んでない、と弁解を重ねながら、実のところしっかり他の作品も読み込んでいる訳だ。

そして終章。
私にはこれが一番、本居宣長にも小林秀雄にも近づいていると感じられた。橋本氏曰く

「詠むに値するものをちゃんと詠む」が起こるためには、「物のあはれを知る必要」を理解する必要がある。「必要」が二つもあって十分にややこしいが、小林秀雄はこの二つの「必要」を抱えて読者を引っ張て行く

二つの迂遠なところは読者用、至近なところは小林秀雄自身、と橋本氏は述べる。


どこに出られるかは分からないトンネル、小林秀雄の思想とそんなものと看破した橋本さん。

初めて読んだ小林秀雄の著作『本居宣長』を読み終えて、 もう一度学問というものをちゃんとやってみようかな 、と感じた所が私は大好きで、それこそが小林秀雄の正しい読まれ方なのだ、と思わされた。


なら、やはり古典に行くよね、和歌だよね、というのは素晴らしいトンネルの出口だなぁ。でも一足飛びではなく、枕草子を足掛かりにするのがとても用意周到な橋本氏なのだった。

↓小林秀雄とお嬢さん、お二人の写真が掲載されていた本






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最終更新日  2024.05.05 13:51:44
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