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2005年11月09日
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カテゴリ: 読書
今読んでいる本も途中だし、今日の日記はどうしようかのぉと思っていたら、気になる記事を発見。
一月ほど前の日記で読書感想を記した飛鳥部勝則氏が、盗作騒動を起こしていたらしい。あ、こりゃビックリ。
夏に刊行された『誰のための綾織』に、故・三原順氏の名作『はみだしっ子』から、かなりあからさまな盗用があった由。
ネットで話題になっていたようなのですが、気が付かなんだわ。
当然のことながら、『誰のための綾織』は、絶版回収です。
図書館で次の借りる本としてチェックを入れてけれど、遅かりし由良之介になってしまったぜ。(図書館に収められた本は別扱いなのかな?)

飛鳥部氏も興味を寄せる作家の一人ですが、私にとって、更に大きな存在なのが三原順さん。
既に物故され、今はもう知る人ぞ知ると言う漫画家になってしまわれましたが。
70年代半ばから書かれた代表作『はみだしっ子』は、およそ少女漫画の常識を打ち破った作品で、そのテーマの重さと深刻な展開に衝撃を受けた人は多かったはず。
斯く言う私も、その一人で。
佐藤史生が漫画ファーストインパクトで、セカンドインパクトが『はみだしっ子』。自分の意思で初めて買い求めたのが、このシリーズでした。(年がばれるなぁ)
今にして思えば、本当に凄い漫画です。
アメリカを舞台に、放浪するストリートチルドレン4人組のお話。
4人とも親との関係に悩み、幼くして家庭を捨てて“はみだし”た子供ら。
彼らのシビアで斜に構えた視線で語られる、人間への考察が少女漫画の枠を超えたものがありました。
あの当時に、ネグレクトやアダルトチルドレンをテーマに据えて描いたなんて、先見の明があり過ぎとしか言えません。
少しアクが強い明確な線の作画、ウィットのきいた科白、宗教観も含めて非常に深い展開。
異色の名作でした。

それだけに、思い入れの深い人も多い作品です。
私自身、心を深くえぐる作品があると言うことを、子供ながら、この漫画で初めて知りました。
親や周囲との人間関係の軋轢への悩み。
そんな悩みを知り染めた少女たちには、まさにバイブル状態の漫画でした。
心に刻み付けるように読んでいた人が多いはず。
そんなコアな漫画です。
まして、作者の三原氏が若くして物故している故、伝説的作品になっているのに、何故、飛鳥部氏は盗用なぞ致したのでしょうか。

飛鳥部氏の年齢なら、男性でも三原フリークは結構いたと思うので、影響を受けても不思議ではない。
だが、指摘されている盗用部分は、オマージュと言えぬほどお粗末な抜書きで、弁解の余地なし。
記憶がザルの私でも、『綾織』を読んでいたら気がついたと思われるレベル。
こういう作家だとは思っていなかっただけに、残念と申しましょうか、腹立たしいと申しましょうか…

ただ、思えば、確かに飛鳥部氏の作風にも変化があったんですよね。
粘りのある、良い意味での泥臭いミステリを書いていた人が、派手なオカルト色をとりいれるようになって。
先月読書した『鏡陥穽』でも感じたのですが、何か急いているようでした。
ネット上に上げられている感想をざっとチェックした限りでは、問題部分以外についても、『綾織』の評価はミステリとしても低いものが多いみたい。
ミステリって、数をこなすほど厳しくなっていくんですよね。
パズラーに力を入れるか、それ以外に偏るか。
新たなトリック、奇をてらった展開、要求されるものがどんどん高次になっていくし。
はっきり言って、飛鳥部程度の作家だと、問答無用で好きなものを書いていられるポジションには至っていないでしょう。
自分の書きたいもの、書けるもの、そのギャップに苦しんでいたのですかねぇ?
それが、作風の荒れや性急さに繋がったのかな。うーむ。
網羅している訳ではないので、断言はしかねますが、振り返ってみるとそんな感触を受けました。

しかし、盗作は作家の誇りを捨てる行為。
程よい暴投は予想外の愉しみとして甘受出来ますが、悪意の八百長は断じて許せません。
思い入れを昇華出来ぬなら、創作する者の資格なしだと思います。
飛鳥部氏、初心を思い出して下さい。
地味ながら、貴方には貴方の味があったはず。
はみだしっ子の世界に共鳴したとしても、貴方は貴方の言葉で語るべきだったのです。
あの科白たちを引いて使う位なら、貴方も三原氏を敬愛していたのでしょう。
ならば、天にいる彼女に恥じぬ作品を送り出して欲しかった。
ただただ、残念なり。

この先、飛鳥部勝則がどういう作品で答えを出すか、注目したいと思います。
ただなぁ。臭い物には蓋をしろな世界ですから。
彼程度のキャリアの作家なら、今後の展開は断たれたかもしれませんね。
それもまた、残念なり。








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最終更新日  2005年11月10日 02時14分37秒
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