シカゴのヴォーカルグループ「独立者達」の2NDアルバム「Chuck, Helen, Eric, Maurice」収録曲。当時は日本盤LPも出てたみたいですね。同アルバムには THE FIRST TIME WE MET
という優良甘茶も収録されています。曲はかなりゆったりとした甘茶ソウル。全体として感じるヒヤリとしていて洗練された空気感はなるほどシカゴ産という感じでアレンジはトムトムが担当。バックで延々鳴り響く感傷的なオルガンの音色が特徴的で効果的。そこにピアノや温かみのあるホーン、優しく柔らかな女性コーラスなどで盛り立てています。語り混じりに情感深く歌い上げるリードもなかなかだけどメインは繰り返し歌われるタイトルコールですかねえ。
INTRUDERS / I WANNA KNOW YOUR NAME (GAMBLE 2508)'73
フィラデルフィアのグループ、イントゥルーダーズの73年のヒット曲でアルバム「Save The Children」収録。生音の響きを活かしつつも華やかな雰囲気を持ったバックサウンド、温かみのあるコーラス、そしてとぼけた雰囲気のリードヴォーカルが特徴的。「君の名前を知りたい」なんて恋愛初期の純粋な想いと牧歌的で平和な雰囲気漂う空気が如何にも70年代初期という感じでイイのです。メロディも分かり易いので70年代スウィートソウル及びフィラデルフィア・ソウル(略してフィリーソウル)の入門篇としても最適ですね。
JATO VON DEL / JUST A FEW STEPS UP THE ISLE (MR.G GREGORY 5547)'72
アルバムは残してないけど、数枚出したシングルがどれも素晴らしいアーチストというのが甘茶ソウル界には複数いますが、このJATO VON DELもその一つ。一体どう発声するのか、そもそも人の名前なのかグループ名なのか等と謎めいていますが、GREGORY RECORDSの住所をみるとヴァージニア州のアーチストみたいですね。
その認知度に反比例して曲の方は実にキャッチーで、例えば 「CASCADES / THE LAST LEAF」
のように、如何にも日本人の琴線に触れるかのような情緒的で郷愁を誘うメロディが素晴らしい。温かみのあるバリトン・パート、感情の昂ぶりが感動的なファルセット・パート、それらを優しく盛りたてるコーラスとなかなかのコンビネーションです。
JATO VONDEL / SMALL TOKEN OF MY LOVE (GREGORY 5549)'73
72年と73年にシングル3枚だけしか残さなかったけど、どれも質の高いことでマニアには人気の歌手の甘茶ソウル。米東部バージニア州の人のようです。どう発声していいのかよく分からない名前なんだけど、おそらくソロ歌手名と思われ。JATO VON DEL名義でも出てるけど、こちらはJATO VONDELとミドルネームがくっついてます。そうなると、「イアート・ファンデル」又は「イアート・フォンデル」と呼ぶのが相応しい気もします。既に JUST A FEW STEPS UP THE ISLE
を紹介済みですが、73年のこちらの曲も同レベルの良質な甘茶ソウル。やはり日本人の琴線に触れそうな甘く優しく味わい深いメロディが素晴らしい。サビの心が洗われるような感じは CHI-LITES / COLDEST DAY OF MY LIFE
に似てるかも。
この一枚ぐらいしか出てないと思われるフィラデルフィアのマイナーグループの71年の曲。やたらポピュラー色の強いメロディが特徴的です。調べてみるとプロデュースは「Dave Appell & Tokens」ということで、これは後の73年の大ヒット曲「Tony Orlando & Dawn / Tie a Yellow Ribbon Round the Ole Oak Tree」と同チーム。ポピュラー色の強い、白っぽいメロディの理由はこの辺にあったのかも。メインのサビメロをコーラスで聞かせるちょっと変わった構成だけど、劇的に盛り上がる情緒的なメロディが甘くて美味ですね。ただこのポピュラー色の強さは評価が分かれるところかも。
MAD LADS / LET ME REPAIR YOUR HEART (VOLT 4080)'72
U.S.BDGでは#75と随分前の方で紹介されているマッドラッズ。60年代中心に活躍した南部のグループで、甘茶ソウル百科事典には未掲載。スウィートファンにはあまり馴染みが無いグループという感じ。曲はマスルショールズ録音なのだけど、スウィート全盛の72年産ということで出来はなかなかのもの。派手な出だしのフレーズが印象的でストリングスを絡めて甘い雰囲気を作り出すのに成功。期待感MAXですね。バックコーラスもソフトで靄がかかったかのような淡いムードでいい感じ。ただしAメロはキャッチーだけどBメロの不出来やサビがAメロ似ということで全体的に単調な展開に感じさせてしまっているのが惜しい。リードは翌73年には甘茶なソロアルバムを出すJohn Gary Williamsでそちらもお勧め。
MANHATTANS / THE DAY THE ROBIN SANG TO ME LP(COLUMBIA 32444)'73
「KISS AND SAY GOODBYE」('76)という甘茶ソウルを代表するヒット曲を持つマンハッタンズの73年のアルバム「There's No Me Without You」収録曲。世界的ヒット曲の3年前の作品ということで、まだそれほど垢抜けていない時代の曲という趣き。トラックは71年の「MARVIN GAYE / WHAT'S GOING ON」を参考にした感じ。爽やかな曲調というところにも共通点を感じさせますが、メロディや唱法など、こちらの方は甘茶ソウル寄りな内容になっています。透明感のあるコーラスが曲に華やかさを加味し、なかなかいいムード。「KISS AND SAY GOODBYE」と比べると下心を感じさせない爽やかなスウィートという感じですね。「WHAT'S GOING ON」トラックの持つ軽やかさと爽やかな甘さの同居する時代の生んだ名曲です。
MANHATTANS / WHEN WE'RE MADE AS ONE (Carnival 529)'67
「KISS AND SAY GOODBYE」という甘茶ソウルを代表するヒット曲を持つマンハッタンズの初期のアルバム「Sing For You And Yours ('68)」収録曲。個人的には70年代中期・コロンビア時代以降の垢抜けてしまった頃の彼等の曲はあまり好きではなく、60年代のカーニバル時代のダイヤの原石といった趣のある泥臭く荒削りな頃の方がずっと好感が持てます。
60年代中期からMARVIN L. SIMSの名前で活躍していたシカゴのディープ・シンガー、マービン・シムズの甘めのサザン・ソウル。まあスウィートソウルと言ってもおかしくない内容ですね。ゆったりとしたリズムに淡く爽やかなサウンド。「夢を夢見て」というタイトル通り、メロディも多幸感に満ちた甘いもの。声質はディープだけど優しく歌い上げられ、かなり聴き易い内容です。展開が少し単調なのが玉に瑕。
MELLO TONE TEE & MALVENA / AS TIME MOVES ON (GITTEN 1011)'89
甘茶ソウル百科事典 TERRY'S SELLECT 027とP.93掲載曲。1989年のニュージャージ産ラブラップで、MELLO TONE名義だけど、MELLO TONE TEEというラッパーとMALVENAという女性歌手の組み合わせになってます。暗く哀しげな曲調の曲で、MELLO TONE TEEの甘いながらも落ち着いた渋いラップがしっとりとしたバックにうまく溶け込んでいる。MALVENA嬢の歌パートは悲しみを高らかに歌い上げており、悪い内容ではないけれど、個人的にはチト歌い過ぎに感じ更に萌えを感じさせないのが残念。完成度も高くバランスもいいけれど、どうせなら男性ファルセットで決めて欲しかったところ。G-RAP隆盛以前のいわゆるこうしたラブラップにも探せばもっと沢山いい曲があるのかな?
MODULATIONS / WORTH YOUR WEIGHT IN GOLD 「IT'S ROUGH OUT HERE」'75
ノースカロライナ出身のグループ、モデュレイションズの75年の1STアルバム「IT'S ROUGH OUT HERE」収録曲。既に当ブログでは同アルバムからは、 LOVE AT LAST
と WHAT GOOD AM I
とを取り上げ済みです。所謂フィリー詣でで製作されたアルバムでVINCE MONTANA等がプロデュースし、MFSBがバックを務めています。75年産ということで将に甘茶ソウル全盛期の内容で甘茶ソウル史上に燦然と輝く名盤ですね。本曲はメンバー自身による作曲、プロデュースということで彼ら自身素晴らしい才能の持ち主であったことが分かります。内容はリードが高らかに歌い上げるすこし派手目の甘茶ソウル。ストリングスを中心に品良くまとまったフィリーサウンドをバックに甘めのコーラスも付けて夢見心地な雰囲気。エコーをかけたかのように澄んだ透明感のあるリードヴォーカルの歌声が空高く響き渡る感じが素晴らしい。メロディも全体を通して良く出来ていて特にサビが魅力的ですね。時折入るシタールも味が有りますねえ。フィリー全盛期の生楽器サウンドの素晴らしさと甘茶ソウル全盛期のヴォーカル&コーラス・ワークの素晴らしさが融合した、この時代だからこそ生まれた名曲と言えるでしょう。
アルバム「WITH YOU」収録曲。オリジナルは同じ77年の白人シンガーソングライター Bruce Roberts
によるものでAORな内容。Aメロの高度に洗練された情緒的なメロディは、言われてみればなるほど納得の著名作家によるものだったんですねえ。しかしこうして聴く比べてみると、この込み上げ度満点の甘いメロディラインは黒人ファルセット・シンガーが歌ってこそという気がしますね。アルバム・バージョンは6分程と長いものなんですが、後半はサビの繰り返しで一番旨みのあるAメロが鳴りを潜めてしまった冗長な内容になってしまっているのが残念。とはいえ万人受けするキャッチーさと瞬間的に胸をキュンとときめかせる大甘さを兼ね揃えた素晴らしいメロディを持つ優良甘茶ソウルと言えるでしょう。
スウィートソウルを代表するグループ、モーメンツの1976年のアルバム「Moments With You」収録曲。プロデュースはニュージャージー・ソウルの女帝SYLVIAで、後にRay, Goodman & Brownに移行する直前の作品という位置づけになります。モーメンツは既に当ブログでは GOTTA FIND A WAY
, LOVE ON A TWO-WAY STREET
, I DON'T WANNA GO
, LET'S MAKE LOVE TONIGHT
の4曲を取り上げています。デビュー当初の音の悪い、いまいち垢ぬけない時代から大部たち、かなり洗練された内容になってますね。個人的にはRay, Goodman & Brownまでいくと垢ぬけ過ぎていまいち馴染めないのですが、その意味ではこの頃が一番聴きやすいと感じます。曲はゆったりとした甘く切ないスウィートソウル。Aメロ,Bメロ、サビとどこをとっても美しい円熟のメロディになってますが、個人的には特にAメロ最初の情感深い熟成したラインが胸キュンです。本当はコーラス含めてもっと派手に盛り上げて欲しいところですが、そこは上品に大人向け・一般受けしそうに仕上げた感じでしょうか。そんな内容ですので、 女性を口説く為の究極のBGMベスト10(スウィート・ソウル編)
に選出したのですが、口説くというよりも、女性との愛の営みのBGMにこそ最適そうな甘いムードに満ちた名曲と言えそうですね。山下達郎のお気に入り曲でもありSSBで何度もオンエアしただけでなく、ご自身もカバーして披露しています。
N.G.S.(National Groove Society)/ I'LL MAKE YOU MY WOMAN (DARAN 226)
シングルを1枚だけ出して消えてしまった「全国グルーヴ協会」という如何にも胡散臭い名前の謎のグループのスウィートソウル。名前はアレだけど作品は王道、正統派の甘茶です。調べてみると90年に同じDARANレコードから「Next Life Time」というアルバムを出しているRichard Popeという人のグループらしい。本曲も同アルバムで再演されているようなのでマニアは要チェック!(かなりレアっぽい) DARANはシカゴのレーベルのようでRichard Popeは90年にChi-Litesのアルバム「Just Say You Love Me」にも参加しているようです。発売年度が不明なんだけど、B面のファンクの機械臭なども考慮すると80年代中後期の作品ということになりそう。
PLEASE / I'VE DONE YOU WRONG (TELEFUNKEN 88 001)'75
以前レビューした 「RAREST OF THE RARE SOUL HARMONY Vol.3」
というレアもの甘茶コンピに収録されていた謎のグループの優良甘茶ソウル。「何なのこの甘さは!知らなかったなあ、このグループの正体は一体???」と全国津々浦々のマイナー甘茶ファンを大いに悩ませましたネ。まずはその時に書いた私の感想を以下に再掲。
「I've Done You Wrong - Please」知らなかったあ、凄くいい曲じゃん。トロリとしたギターとプログレ的雰囲気の神秘的シンセサウンドをバックに甘ーい語りが1分ほど入ります。基本は「CHI-LITES / HAVE YOU SEEN HER」的メロディ使いだけど、ちょっと切ないファルセットリードはいまいち垢抜けないが逆にそこが魅力的で、コーラスアレンジもなかなか凝っていて良い。随所に入るチープなオルガンも実にいい味だが少しうるさいか。全体に二流な雰囲気ながらチャイライツ的に垢抜けてない分個人的にはかなりツボ。このグループのことご存知な方、情報下さい。
PHILADELPHIA STORY / YOU ARE THE SONG (I'VE BEEN WRITING FOR ALL OF MY LIFE) (WAND 11280)'74
甘茶ソウル百科事典P.81掲載で山下達郎SSBオンエア曲。4人組のヴォーカルグループで、シングル3枚を残しているとのこと。曲は 「HAROLD MELVIN & THE BLUE NOTES / IF YOU DON'T KNOW ME BY NOW」
激似の甘めのバラード。壮大な雰囲気を持つゆったりとしたサウンドをバックに、バリトンリードが劇的に歌い上げます。BLUE NOTES版と比べると少し垢抜けない感じで、メロディもキャッチーさに欠けるけど、その分味わい深さがありますね。更にファルセットの絶叫が入る分、甘茶度は高いかな。因みにこのシングルの裏面の「IF YOU LIVED HERE, YOU'D BE HOMENOW」もなかなか良い出来のバラードです。
RAY, GOODMAN & BROWN / (BABY) LET'S MAKE LOVE TONIGHT 12"(EMI America V-19250)'87
偉大なる甘茶コーラスグループ、モーメンツの変名グループ「レイ、グッドマン&ブラウン」の86年のアルバム「Take It To The Limit」収録曲。スウィートソウルの有名グループとして初めて「モーメンツ」というグループ名を耳にした時、その語感にすらグッと来るものがあったけど単に人名を並べただけのグループ名は残念ではあります。MOMENTS時代の77年産「I DON'T WANNA GO」ですら大部洗練された雰囲気を醸し出していましたが、80年代中後期の作品であるこの曲は行き着くところまで行き着いちゃった感のある洗練さ具合。電話の呼び音に男女の甘い会話で始まる擬音入りイントロはムード満点。 「女性を口説く為の究極のBGMベスト10(スウィート・ソウル編)」
には惜しくも入らなかったけど次点候補に入れてもいいぐらいの洗練さと女性受けの良さ、汎用性の高さを感じます。逆に言えば初期のヒット曲と比べて垢抜け過ぎた感もありますが、メロディの出来は素晴らしく甘くソフトに歌うリードのハリーレイの声質・唱法の魅力もあいまって甘茶ソウル不毛のこの時代にあっては希少な良作と言えるでしょう。厚めのコーラスでしっかりとサポートされているからかバックの機械臭にも嫌味は感じないですね。
穏やかでなだらかなラインを持つAメロ、少し憂いを帯びた悲しげなBメロ、大仰で派手なサビの盛り上がりは緊迫感があり感動的です。ストリングスを中心としたバックも甘く品の有る内容です。EUGENE RECORDのソフトなヴォーカルと比べて、ここでのリードは幾分甘味に欠けますが瑞々しさという魅力が有りますね。尚、壮絶甘茶「Gonna Make You An Offer You Can't Refuse」で知られるJIMMY HELMSもカバーしてます(UK 7N445769)'77。ファルセットじゃないし、ちょっと糖度は落ちますが、曲そのものがいいので悪い出来では無いですね。