2005年08月16日
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蝉の声が、うるさいくらいに響く。さらに暑さが増すような気がして、イラついたりする。かと思えば、昨日の天神様のように、寺社などの中で聞く蝉時雨は、それなりに風情があり、かえって境内の静けさを思わせたりもする。

彼らの一生は、7~8年も地中で過ごしたあと、成虫となって地上で生きるのは約1週間といわれる。神さまは、無駄なモノを創らなかったということを考えると、蝉のこうした一生にも意味があるのだろう。人間の感覚からいえば、何年も地中で過ごし、やっと明るい空の下へ出てきたとおもったら、たったの一週間で死んでしまうなんて、なんのために生きてきたのかわからない。それでも、彼らはしっかりとその一週間を生き、子孫を残すのだから敬服するばかりだ。

昨日の夕方、母が階下でなにやら騒いでいた。何事かと降りていくと、羽化前の蝉を見つけたという。

羽化をする場所を探すように枝の先端を目指している
羽化前


早速カメラを持ち出して何枚か撮り、観察をしていたが、これはまだまだ出てこないだろうと、外へ夕食を食べに行ってしまった。二時間ほどして戻ると、蝉はすっかり羽化を終え、真白い体に薄い緑色のベールをまとい、じっと体を乾燥させている。羽化の瞬間を見逃したのは大いに残念だったが、あのうるさいだけだと思っていた蝉が、こんなに美しく、命をまっとうしようとしている姿に心を打たれた。

幼虫から成虫へ、美しい変身だ
羽化後1

羽化後2


その黒々とした目は、何を見つめているのだろうか。無事に羽化を終えたことの喜びか、空へ羽ばたけることへの期待か、それとも余命の残り少ないことへの寂しさか...きっと何も見てはいないのだろう。もらい受けた命を、かぎりに燃やし尽くすことのみを体中に漲らせ、ただじっとその時を待っているようだ。

牛や鹿の出産もテレビで見た。猫の出産も我が家で目の当たりに見た。それらの命の誕生も、感動とともに心にしっかりと焼き付いているが、昆虫の第二の誕生でもある羽化は、そうしたものとはまた違った思いを抱く。人の目につかず、人の手を借りず、ひっそりと行われている静かなる自然の営み。こうしたことがすぐ近くで、日本で、そして地球全体のそこここで繰り返されているのだ。すごいことだ!

たった一つの蝉の羽化だけれど、たんに蝉が成虫になっただけではなく、命が紡がれていくということ。小さな営みが、偉大なる自然を教えてくれた。この夏、最大の我が家のニュースになった。飛び立った蝉のあとには、抜け殻が、役目を終えてホッとしたようにそこにあった。

立派な成虫となった蝉と抜け殻
成虫抜け殻





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最終更新日  2005年08月16日 22時01分54秒
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