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2019.11.07
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カテゴリ: 探訪
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九頭神廃寺史跡公園(黄色の丸の所)から北に進み、突き当たりのT字路を左折します。この道路を道沿いに進めば、京阪電車の牧野駅(黄緑色の丸の所)に至ります。

左折して進むと少し先に、道路の北側に朱色の鳥居が立ち、一段高くなった境内地があります。
そこに格子戸のお堂が建っています。堂内を覗くと簡単な祭壇に供花が措かれている程度です。何これ!という感じです。

お堂を回り込むと、背後(北側)には池があります。実は この池がご神体 にあたるそうです。この境内地が「 瘡神社 (くさがみのやしろ) 」です。
駒札が立てられていました。読みづらくなっていますので、判読して転記します。

* 御祭神 瘡神 (くさかみ) ・火酢芹命 (ほすせりのみこと)
* 「菅原道真公の乗馬がこの場所に葬られ藁草が供えられた事から、瘡(草)神と呼ばれる様になった。草は瘡に通じ、ご神徳は皮ふ病治癒。自然の森と池をご神体とする神社信仰。原始の形を今に伝える。  片埜神社社務所」

たぶん、かつては鎮守の森として樹木が生い茂り池の水も豊かだったのでしょうね。そんなイメージを持ちました。

なぜ、道真がここに出てくるのか? 調べてみて、一つの説明をみつけました。引用します。
「菅原道真が大宰府へ向う途中、当地で道真の馬が病気で倒れた。回復の見込みがないため道真一行は馬を地元の人に託して出発した。馬は介抱の甲斐なく亡くなり、路傍に埋葬された。その場所は、地元の人が馬に供えた草でいっぱいになったことから、いつしか「草神様」と呼ばれるようになった。この「草」が「瘡(クサ)」と同音であることから、後に瘡(皮膚病)に霊験のある神とされるようになり、社名も「瘡神社」となった。現在の祭神は火酢芹命であるが、これは後に定められたものである。」 (資料1)


枚方市消防署阪出張所に近いところに、もう一つのこじんまりした神社があります。
朝原神社
「朝原神社 御祭神 猿田彦大神
 天孫降臨の際、邇邇芸命 (ににぎのみこと) を出迎え、先導を申し出たと伝わる猿田彦大神を祀る。交通安全、道ひらき、導きの神様 片埜神社社務所」 (駒札文を転記)

さらに先に進むと、最後の探訪地が見えてきました。
片埜神社
『延喜式』神名帳に記載の片野神社に比定されているそうです。社号碑の上部にも記されていますが、中世には「牧一宮」と称し、午頭天王と北野天神を祀っていたことが確認できるそうです。 (資料2)

この神社の創建は? 調べてみると次のことが伝えられているようです。
「第11代垂仁天皇の頃、出雲の豪族の野見宿禰 (のみのすくね) が、当麻蹴速 (たいまのけはや) との相撲に勝った恩賞としてこの地を拝領し、建速須佐之男命を祀ったのがはじまりといわれています。平安時代中頃、野見宿禰の後裔である菅原道真公をともに祀っていましたが、戦国の争乱で兵火に見舞われ荒廃します。」と。 (資料3)

現在は、建速須佐之男大神 (すさのおのおおかみ) と菅原道真の他9柱を合祀されています。 (資料4)


 四脚門で府有形文化財。
後でご紹介する本殿に引き継いで建立されたと考えられる門です。

側面に大きな板蟇股が使われ、棟を支える簑束が見えます。そこに時代的特徴が見られます。 (資料1)
簑束とは「斗束の束の肩に簑を着せたような装飾を附したもの。鎌倉末期の出現」 (『日本古建築細部語彙 社寺篇』綜芸舎) というものです。

門を入ると、右側に 手水舎 があり、手水鉢の正面に「一之宮」と刻されています。

左側に ​社務所​ があり、北に真っ直ぐ延びた参道の先に入母屋造の屋根の 拝殿 が見えます。




拝殿の向拝のところが拝所になっています。そこに立つと正面に鮮やかに赤く塗られた本殿が一部拝見できます。拝殿内には今風に椅子が並べてあります。

向拝の頭貫上の蟇股と木鼻。形はシンプルですが、装飾線刻がリズミカルです。

拝殿を右に回り込んで行き、本殿を側面から拝見しました。


瑞垣に囲まれた内側の 本殿 を部分的に眺めることができます。極彩色の本殿です。

豊臣秀吉はこの片埜神社を大阪城の艮 (うしとら) 鬼門鎮守とした と伝えられています。社殿は秀頼期に整備されたと言います。この本殿(重文)は三間社流造で、慶長7年(1602)豊臣秀頼の建立ということが棟札からわかるそうです。 (資料2)

瑞垣のところに、この 案内板 が設置されています。

本殿外観の細部を眺めましょう。斜めから見上げて見れる範囲は限定されますが・・・。

本殿本体の木鼻と屋根の庇(向拝)柱の頭貫の木鼻 は形状は、シンプルですが同形で同文様に彩色され統一感があります。 斗栱 は文様が極彩色で描かれています。

内側に「芙容に鶺鴒」、「椿に鴨」を透かし彫りで極彩色にした 蟇股 はその形状を青色に塗られ、明瞭に外形を表出しています。透かし彫りには「竹に虎」などもあります。桃山様をよく示す装飾です。
秀吉好みの華やかさを演出したのでしょうか。
脇障子 には、随身の武家が描かれています。
大きな神社の楼門に置かれる随身像と同じ意味合いでしょうか。神を護るガードマンですね。
 屋根を見上げると、 千木 外削ぎの男千木 の形です。
男神を祀る神社とわかります。


      本殿側面の 蟇股 には桐紋が透かし彫りにされています。


本殿の東北側に赤く塗られた瑞垣と覆屋のある小祠が祀ってあります。
傍に立つ駒札によれば、 「依姫社」 です。
祭神は、玉依姫命・大国主命・市寸嶋姫命 と記されています。元は境内に三社が祀られていたそうですが、明治初期に依姫社に合祀したと言います。
 玉依姫命:神武天皇の母、京都・下鴨神社の神
 大国主命:大己貴命 (おおなむちのみこと) 、出雲の大黒様、国土守護神
 市寸嶋姫命 (いちきしまひめのみこと) :安芸宮島の大神、弁天様、芸能上達の神


東門 です。本来は棟門だそうです。南門と同時期の建立と考えられています。 (資料2)

傍に 駒札 があり、「棟門」について詳しく説明されています。ご一読ください。
東門も府有形文化財です。

それでは、再び境内に戻り、境内を眺めてみます。

四隅に細い柱を立て注連縄で結界を作った区画が目にとまりましたが、何の儀式に使われる場所なのかは不詳です。

絵馬 に般若面​ が描かれているものが目に止まりました。一方、
 大きな 赤鬼の面 が祀られています。
片埜神社が大阪城の艮鬼門鎮守の役割を担ったということを上記しています。
この鬼の面と鬼門鎮守の役割との間に何か関係があるのでしょうか。

少しネット検索してみますと、
”「 より強い鬼をもって外の鬼を制する 」という考え方で、片埜神社には「巨大な鬼の面」が配置されています。”と説明しているサイトに出会いました。毒をもって毒を制するという発想でしょうか。 
片埜神社の節分祭では「福は内、鬼は内」と豆をまき、「善い鬼」がとどまるように祈願する のだとか。”とも記されています。  (資料5)
つまり、ここはパワースポットだという認識です。


拝殿の手前に、鎌倉時代の建立と推定される 石灯籠 (府有形文化財)があります。
傍に駒札が立っていますが、一部剥落しています。判読できた要点をご紹介しましょう。
*宝珠の下の請花を失う他は各部が原初のまま現存している。
*火袋に金剛界四方仏の梵字(種字)を刻む。
*神社に寺院の石灯籠があるのは、もとこの地に神宮寺があったためと考えられる。

 近くにあるもう一つの灯籠


南門を入った右側の先の築地塀傍に、 納札所 が設けてあり、その右斜め前方にブロンズ製の 「神牛」 像が奉納されています。上記の通り、 北野天神つまり菅原道真 が祀られていることにつながります。


境内に 稲荷社 があります。「稲荷大神」と記した篇額を掲げた赤色の鳥居の短いトンネル参道があり、その先の神社は興味深いことに、お堂形式の建物です。
保食神 (うけもちのかみ) とともに 6柱が合祀 されています。 (資料4)

これで大凡片埜神社の境内を拝見したことになります。
後は一路、牧野駅へ行程最終のウォーキングです。

穂谷川に架かる明治橋を渡ると、ほんの少しで牧野駅に着きました。

これで今回の探訪のご紹介を終わります。
ご覧いただき、ありがとうございます。

参照資料
1) ​ 瘡神社 枚方市 ​ :「Localwiki」
2) 龍谷大学REC「関西史跡見学教室33 ~大阪・牧野~」
  (2019.9.14 レジュメ作成 松波宏隆講師)
3) ​ 片埜神社 ​  :「OSAKAINFO 大阪観光局公式サイト」
4) ​ 片埜神社 枚方市 ​ :「Localwiki」
5) ​ 片埜神社ルポ【パワースポット-大阪/枚方】鬼門封じで大阪城守る,お守り,御朱印,駐車場も ​ :「pow!」

補遺
千木と鰹木について ​  :「出雲大社紫野教会」
神社の千木と鰹木の意味 ​ :「開運日和」
鬼門 ​ :「コトバンク」
​  :「コトバンク」
般若の面 ​  :ウィキペディア
「般若」って、鬼の面? ​ :「副住職の一口法話」(曹洞宗奕葉山昌伝庵)
鬼門と裏鬼門とは何なのか、またその対策を考えます ​ :「出雲大社紫野教会」

   ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)

探訪 大阪・枚方市 牧野を歩く -1 御殿山・渚院跡・西雲寺 へ
探訪 大阪・枚方市 牧野を歩く -2 欣求寺・栗倉神社 へ
探訪 大阪・枚方市 牧野を歩く -3 牧野車塚古墳・小倉東遺跡・九頭神廃寺 へ
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Last updated  2019.11.07 22:50:54
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