「インド・チベット曼荼羅の研究」
田中公明 1996/08 法蔵館 単行本 303p
Vol.2 No.364 ★★★★☆
田中公明の 「活仏たちのチベット」 2000/4は実に傑作な本であったが、そこからさらにさかのぼること、1987/08に出た 「曼荼羅イコノロジー」 も実に瑞々しい感性を彷彿とさせる名著であると思う。2007/04にでた 「曼荼羅グラフィクス」 も、ITツールを駆使するなど、新時代のチベット密教研究家・田中公明ならではの仕事という感じがする。
この「チベット・インド曼荼羅の研究」は、そのような意味では、若き研究者の論文をまとめた、初めての学術論文集という位置づけなのだろうか。他の書でみせている若い感性を研ぎ澄ませるということよりも、論理的であり網羅的であり、包括的である。対象となったペンコルチューデ仏塔における資料としては、相当に高い評価を受けているはずだ。
田中公明君は、少年時代から仏像、仏画が好きで、親に懇望して関西の寺院に連れて行ってもらううち、仏像の配列には、経典に則った一定の規則があり、その最も発達、整備された曼荼羅に、深い関心を抱くようになった。祖父が仏画師であられたため、漢訳経典を和文に読み下し、註釈をつけた「国訳大蔵経」があり、それを読むのを見た父親は、小学生というのに、全13巻からなる諸橋轍次の「大漢和辞典」を買い与えたという。 石田尚豊「序文」p1
栴檀は双葉より芳しとはいうものの、その環境や幼年期からの深い関心があってこその田中公明ワールドということができるだろう。
無上瑜伽の中で母タントラを扱った論文は一篇のみ、不ニタントラを扱う論文はいっさい収録しなかったのは、著者が本書と並行して、母タントラの原初形態である「サマーヨーガ」と無上瑜伽不二タントラを代表する「時輪タントラ」に関する著作を準備していたためである。 p18
オーケー、そちらの関心は、そちらの本に依ることにする。ちょうど、これから読むところだった。外に、「ペンコルチューデ仏塔の胎蔵曼荼羅」や「秘密集会曼荼羅の歴史的展開」や津田真一の学説についての言及など、興味深い箇所が多々ある。
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