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(安川崇記者)
◆神奈川 弁護士らが指摘/看板撤去相次ぐ
同県川崎市のJR川崎駅通路。「許可なく次の行為を禁じます。1販売・配布2勧誘・演説」と書かれた掲示のうち、「配布」と「演説」の部分がテープで隠されています。同市ホームページにあった「通路ではチラシ等の配布は認めていません」という記載も、削除されました。
編集部の取材に市の担当者は「4月に掲示を撤去しようとしたがはがれず、テープで隠した」と説明。「(禁止の)明確な根拠はなかつた」と話します。
問い合わせたのは自由法曹団神奈川支部(森卓爾支部長)。手分けして県内各地の駅前通路などを調査し、これまでに7ヵ所でこうした看板類を確認。法的根拠を管理者に尋ねました。
そのすべてで管理者が看板を撤去するか、ビラ配布や署名活動を禁じる部分を隠すなどしたといいます。
同支部の大川隆司弁護士は指摘します。
「道路上の宣伝活動の自由は、憲法21条で保障されています。 道路管理者や警察が、あたかも宣伝活動が一律に禁止されるかのような掲示で市民を萎縮させてきたのは問題。 こういう例は全国にあるはずです」
同支部によると昨年6月の共謀罪成立後、市民から「それまで自由に宣伝していた場所で、警察官に中止を求められた」との相談が多く寄せられています。そのため、今回の成果を「画期的」としています。
きっかけは一つの訴訟でした。
2016年2月、市民団体「#マネキンフラッシュモブ@かながわ」が同県海老名市の駅前で、「アベ政治を許さない」などと書いたカードを掲げる宣伝をしました。翌月、市は「管理者の承認がない」として参加者に中止命令を出しました。
団体側は、表現の自由の侵害だとして市を提訴。17年3月、 横浜地裁は「歩行に著しい支障をきたすものではなかった」として市の命令を取り消し、判決は確定しました。
この訴訟を受けて同支部は、駅前などの看板に着目しました。
今年1月に問い合わせたJR横浜駅前のケースでは、管理者の横浜市が同支部に「掲示は13年、警察の依頼で協議し設置した。当時、イベント時に露店が多く通行に阻害があった。誤解を招くので掲示は撤去する」と回答しました。
バレエピアニストで上記訴訟の原告だった朝倉優子さんは憤ります。「地元の駅前でも、ビラ配布が『法律により罰せられることがある』と明記されていた。根拠なしに禁止していたなんて」
◆管理権より「表現の自由」-自由法曹団神奈川支部長森卓爾さん
施設管理者には「管理権」があります。しかし憲法上の権利としては、民主主義の基礎そのものである「表現の自由」の方が重視される。表現の自由のため管理権は制約を受けるという関係です。
「吉祥寺駅構内ビラ配布事件」最高裁判決(1994年)の伊藤正己裁判官による補足意見が有名です。
一般公衆が自由に出入りできる場所でのビラ配布は、表現の自由の手段として軽視できない意味を持つ。駅前広場などはそのための場として役立つ。 そのような場所でのビラ配布を処罰することは違憲の疑いが強い」と指摘しました。
公道でのビラ配布などに警察官が、道路交通法を根拠に「許可が必要だ」と干渉するケースもあります。
道交法は「交通に著しい影響のある行為」を許可制にしています が、憲法の下では「著しい影響」の要件に厳格な解釈が求められる。それがしばしば忘れられています。
街宣活動の自由は裁判例でも市民の権利として認められてきました。萎縮する必要はありません。無用なトラブルは避けながら、自信を持って、毅然(きぜん)とした姿勢で臨むのがいいでしょう。
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